Sightsong

自縄自縛日記

朝日ソノラマのカメラ本

2007-11-08 22:48:33 | 写真
朝日ソノラマは2007年9月末をもって廃業した。ここからは、おそらく41冊の「クラシックカメラ選書」が出版されている。いくつかは持っているが、最近のものは読まずにいた。そうすると、自由価格本として、神保町の三省堂やすずらん堂で安く叩き売られていた。定価1,900円が700円前後だ。姿を消す前に、3冊ほど入手した。

大竹省二『大竹省二のレンズ観相学 距離計用レンズ編』(2006年)は、いまも『アサヒカメラ』で続いている連載のうち、レンジファインダー用レンズの作品とコメントを集めたものだ。以前『アサヒカメラ』の薄い別冊として出ていたものよりも多くのレンズ記事が含まれている。ズミター50mmF2については、絞ると「真綿が絹糸のように繊細になる」、エルマリート90mmF2.8については「柔らかでまろやかなトーン」、自身が開発にも関与したペンタックスL43mmF1.9については「ライカ・マニアの好むシャープな解像力とカラーバランスの良好なレンズ」などと、言いえて妙であり、語り口は芸となっている。キヤノン50mmF1.8は、後期型になるとさらに高画質になっていることは知らなかった。朝日ソノラマの商標権を引き継いだ朝日新聞社が、『一眼レフ用レンズ編』も出してくれないだろうか。

白澤章茂『トプコンカメラの歴史』(2007年)は、たぶんシリーズ最終巻。トプコンで設計をされていた方の著作だけに信頼性が高い。私の持っているトプコンレンズは、カメラ事業の晩年に、RM-300というペンタックスKマウントのカメラの標準レンズとして出された55mmF1.7のみだ。これが、すぐのちに事業を譲渡されたシマ光学による設計・製造との噂話をきいたことがあるが、この本によれば、トプコンの手によるということだ。少し嬉しいが、ただ、写りは何の変哲もない。

陸田三郎『中国のクラシックカメラ事情』(2006年)は、ほとんど断片しか知らない中国のカメラ史をさらってくれている。毛沢東の書を刻印し、夫人である江青が作らせた高級機「紅旗20」のこと、ペンタックスK1000にそっくりな「PENTAREX K1000」など、底なし沼という感じだ。私はというと、北京で買った「長城PF-1」(フジカST-Fのコピー!)や、かつて安原製作所が中国で委託生産させたテッサー型の標準レンズ「YASUHARA 50mmF2.8」を使ったことがあるくらいだ。描写はまったくたいしたことがないように思ったので、もう手元にはない。いまでは中国は急速にデジカメ社会にシフトした。大量の銀塩カメラはどこに埋もれているのだろう。




池田卓(2005年) ライカM3、YASUHARA 50mmF2.8、シンビ200