広重の『江戸名所百景』における広重の絵は、100枚ではなく全部で118枚といわれますが、そのうち筏も含めて船が出てくる絵は、私が数えてみたところでは49枚。約43%の絵に船ないし筏が出て来る(描かれる)勘定になります。川や海が出てくる絵は71枚で全体の約60%。不忍池や洗足池などの池を入れれば、水辺の風景や水辺を背景とした絵の割合はもっと高くなります。これは何を意味しているかというと、江戸の人々や広重の名所感覚において、川や海が重要な要素であったということであり、それはとりもなおさず、当時の江戸が川や海と密接な関係を持っていたということであるでしょう。江戸は坂の多い町であると同時に、「水の都」であったのです。 . . . 本文を読む