1993年9月発行
妻が不義密通の末、出奔。藩命にて女敵討ちに出た岩間三良が旅の果てに出した結論とは…。
第一章 早春城画譜
第二章 仲秋夜能(やのう)
第三章 闇の足音
第四章 無明の旅
第五章 見えない橋 長編
美濃大垣藩士・岩間三良は、家中屈指の剣の遣い手として知られる一方、生真面目な性格から上役や同輩との折り合いが悪く、郡同心へと役替になった。
郡同心の役目は、領内の村々を視察することで、役目に邁進する三良だったが、役宅に残された新妻の加奈には、埋め切れない寂しさがあった。
そんな折り、ふと出会った大蔵奉行の息子・大隅佐四郎に強い思慕を抱いた加奈は、あろうことか、三良の留守を良いことに不義密通を重ね、事が露見すると佐四郎共々出奔を果たす。
藩から下されたのは、女仇討ち。宛のない旅に身をやつしながら三良は、その空しさを胸に抱え込むのだった。
そして仇に巡り会った時、三良は苦渋の決断を…。
表題、そして最終章の「見えない橋」の持つ意味合いが、大きく伸し掛かる作品であった。夫婦愛、藩内での政治、そこに文化・芸術を背景にした、壮大な時代が展開される。
三良の役替前の務めである勝手方掛(納戸役)が、物語の終盤に大きな意味合いを持つばかりか、話の枝葉で、絵師を目指す子どもが登場するが、その子を通して物語全体の時代を芸術面から読ませるなど、深い内容の作品になっている。
結果は、全く予期せぬ終わり方で、私個人としては、三良に刃を振るって貰いたかったの念が否めないが、作者は、当時の決まりの無意味さ、空しさ、そして命の尊さを説くと共に、そうならざるを得なかった事の過程を言いたかったのだと思われる。
ひとつの結果に至までに、辿った道筋を、三良の旅を通して思い知ることが出来る。
同時に、人もひとつの顔だけではなく、幾重もの表情を持ち備えながら、たまたま巡り合わせでそれが善にも悪にもなると受け止めた。
読めば読む程、作者から投げ掛けられた人=生き方といったものを深く考えさせられる作品である。
至極の作品に巡り会えた。
主要登場人物
岩間三良...美濃大垣藩戸田家・郡奉行所同心
岩間加奈(おきぬ)...三良の妻、大垣藩寺社奉行与力・生田平内の娘
沖伝蔵...大垣藩・歩行横目付、三良の朋友
浄円(飯森惣助)...京・知恩院派浄願寺住持、元大垣藩・足軽の五男、三良の朋友
岩根帯刀...大垣藩大目付番頭、三良の義兄
乙松...生田家下男
小平太...大垣藩領平野村の百姓の息子→京四条富小路の絵師・松村景文の弟子
杉田市兵衛...大垣藩・郡奉行所同心
大隅佐四郎(佐助)...大垣藩・大蔵奉行・大隅太兵衛兵の庶子(四男)
櫟屋七郎兵衛...京仏光寺烏丸西・諸道具目利屋の主
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妻が不義密通の末、出奔。藩命にて女敵討ちに出た岩間三良が旅の果てに出した結論とは…。
第一章 早春城画譜
第二章 仲秋夜能(やのう)
第三章 闇の足音
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美濃大垣藩士・岩間三良は、家中屈指の剣の遣い手として知られる一方、生真面目な性格から上役や同輩との折り合いが悪く、郡同心へと役替になった。
郡同心の役目は、領内の村々を視察することで、役目に邁進する三良だったが、役宅に残された新妻の加奈には、埋め切れない寂しさがあった。
そんな折り、ふと出会った大蔵奉行の息子・大隅佐四郎に強い思慕を抱いた加奈は、あろうことか、三良の留守を良いことに不義密通を重ね、事が露見すると佐四郎共々出奔を果たす。
藩から下されたのは、女仇討ち。宛のない旅に身をやつしながら三良は、その空しさを胸に抱え込むのだった。
そして仇に巡り会った時、三良は苦渋の決断を…。
表題、そして最終章の「見えない橋」の持つ意味合いが、大きく伸し掛かる作品であった。夫婦愛、藩内での政治、そこに文化・芸術を背景にした、壮大な時代が展開される。
三良の役替前の務めである勝手方掛(納戸役)が、物語の終盤に大きな意味合いを持つばかりか、話の枝葉で、絵師を目指す子どもが登場するが、その子を通して物語全体の時代を芸術面から読ませるなど、深い内容の作品になっている。
結果は、全く予期せぬ終わり方で、私個人としては、三良に刃を振るって貰いたかったの念が否めないが、作者は、当時の決まりの無意味さ、空しさ、そして命の尊さを説くと共に、そうならざるを得なかった事の過程を言いたかったのだと思われる。
ひとつの結果に至までに、辿った道筋を、三良の旅を通して思い知ることが出来る。
同時に、人もひとつの顔だけではなく、幾重もの表情を持ち備えながら、たまたま巡り合わせでそれが善にも悪にもなると受け止めた。
読めば読む程、作者から投げ掛けられた人=生き方といったものを深く考えさせられる作品である。
至極の作品に巡り会えた。
主要登場人物
岩間三良...美濃大垣藩戸田家・郡奉行所同心
岩間加奈(おきぬ)...三良の妻、大垣藩寺社奉行与力・生田平内の娘
沖伝蔵...大垣藩・歩行横目付、三良の朋友
浄円(飯森惣助)...京・知恩院派浄願寺住持、元大垣藩・足軽の五男、三良の朋友
岩根帯刀...大垣藩大目付番頭、三良の義兄
乙松...生田家下男
小平太...大垣藩領平野村の百姓の息子→京四条富小路の絵師・松村景文の弟子
杉田市兵衛...大垣藩・郡奉行所同心
大隅佐四郎(佐助)...大垣藩・大蔵奉行・大隅太兵衛兵の庶子(四男)
櫟屋七郎兵衛...京仏光寺烏丸西・諸道具目利屋の主
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