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「県政オンブズマン静岡(静岡県庁の光と闇)~よりよき未来のために~」管理人のブログ

注)teacupブログから移転の2022年5月以前の投稿には、文字コードの違いから多くの文字化けがあります。

経済効果?、費用便益比?、税収?、政策迷走を促す学問不在の現状

2010-03-30 22:26:00 | ノンジャンル
ゆとり教育によって学力が落ちたとして来年度から教科書が厚くなるという。
とりわけ、数学の力が国際的に劣ってきたのは深刻であり、この方向転換は少なくとも理数教育においては正しい。

今日県が公表した「平成17年静岡県産業関連表」、これはイベントなどの公共政策においてよく発表される経済効果(経済波及効果)を計算する際の基礎となるデータであるが、今回公表された産業別経済波及効果(第1次間接効果)でみるとわかるが、第一次産業が1.2748倍、第二次産業が1.3355倍、第三次産業が1.3406倍となっており、いずれも1倍を上回る。
そんなこと(1倍を上回ること)は、あたりまえという方はよくわかっている方で釈迦に説法であるが、ネット上の主張など世間一般には経費1億円のイベントで経済効果が1億円以上あれば成功だと勘違いしている御仁も多い。
まして、行政は採算性を考えなくていいという主張もある中では空港で5億円の赤字でも5億円の経済効果があればいいなどというのは、私はばかですと公言しているようなものだ。

例えば県民に10億円分の電化製品をプレゼントしたら経済効果は前述の産業別経済波及効果をみても1次波及効果だけで13億円以上の経済効果が出る。
だから良い政策だ、やろう、とはならない。
もちろん、経済が上向かないときに一時的に添加剤として行うことはあっても、目的は経済波及効果そのものではなく、経済回復のきっかけづくりだ。

現在の国の財政は、家計に例えれば、
月収40万円の中で、
毎月の支出が70万円(ローン元利払14万円、家計費45万円、地方君への仕送り11万円)
毎月の借金30万円
ローン残高は約5千万円
という状況だ。(http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/EE_NZ.html

また、国民総生産に占める税収の割合は約16%(平成17年度)

すなわち、先の例の10億円を使って得られる税収は2億円程度、このうち国税は6割の1.2憶円になる。
地方だったら、県と市町合わせて0.8億円程度だ。

単純に考えて、県が来年度予算で投じる利用者補助金などの利活用支援の6億円や管理・周辺整備の17億円で増える税収は・・・
未来につながる投資でなければ、その増えたつけは全部後世代に回される。
それが、先に紹介した家計のローン残高となって表れるのだ。

公共政策で経済波及効果という指標はあまり意味がないのである。
むしろ指標として考えるべきは費用便益比である。(ただし、あくまで同種事業間の優先順位の比較指標に過ぎない。)

静岡空港建設事業に係る費用便益分析では県の公称値で86万人需要が費用が便益を上回る基準点(現実には下回るのが確実で費用に対する便益のないいわゆる不要事業であったことになる)となっていることはこれまでにもホームページ等で明らかにしてきた。
しかし、機材小型化の影響などで収入は見込みの前提を下回っており、しかも費用には純粋な維持管理費しか算入されていない、すなわち利活用支援費が計上されていないという偽装的なものである。国土交通省の基準によったから正しいと主張するが、国が正しいとは限らない。費用便益比分析とはだれがどこが作ったかではなく合理性の判断領域であり、学問でなければならないのだが、権威が合理性を凌駕しているという不幸な現状がこの国にはある。
裁判所があれほど過大な需要予測を合理的と判断したのもその延長線上にある。

今、わが国において必要なのは公共政策における費用便益比の再構築だが、国民の学力低下の中では理解は進まないしこれだけではうまくいかない。
まして、現政権の信用力低下の中では何をかいわんや。
残念ながら、現状では負のスパイラルは止まるという希望は見いだせない。