わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

ゴッホ 最期の手紙

2017-11-18 | 映画・ドラマ・本
 ダウンタウンの劇場まで「Loving Vincent(邦題:ゴッホ 最期の手紙)」を観に行きました。ゴッホが自殺して1年後、郵便配達人ジョゼフ・ルーランの息子アルマンは、ゴッホが自殺の直前に、弟のテオに宛てた手紙をパリに届けろと命じられるパリに行ったアルマンは、画商のタンギー爺さんから、テオもまた、兄が自死した半年後に持病が悪化して亡くなっていた事を知る。手紙を誰に渡せば良いのか?アルマンは、ゴッホが死ぬ前の二ヶ月を過ごしたオーヴェル(AUVERS-SUR-OISE)へ向かう。

 ゴッホの最後の手紙には、とても調子がよく精神状態も安定して創作も進んでいるとあった。それなのに何故、自殺なんかしたのか?アルマンは、生前のゴッホを知る人達に話を聞いt回るうちに、その死の真相を突き止めていく…と、いうお話。実写映像を元に、世界中から125名のアーティストを集め、6万5千枚の油絵で描いた圧倒的なアニメーション映画です。日本の公式サイトはこちら


こんな絵が動くよ


 全編、ゴッホの絵を再現した油絵というわけではなく、半分は白黒の水彩画風場面です。アルマンを探偵役に、ゴッホの死の真実を解き明かしていく、ミステリー仕立てになっていますが、正直な所、ストーリーはオマケで、あくまでも「ゴッホの絵が動くぞ!」のが大事。モーション・キャプチャに絵を載せたアニメですが、静止画でも、どっか動いてなきゃ気がすまないとばかり、ゴッホの大胆な筆使いがうにうに動きます。油絵部分では、そこまで拘った画作りをしているのに、白黒場面で、元の実写部分と柄がうまく合成されていない部分が気になりました。

白黒部分はこんなん


 この作品は、ひたすらゴッホを愛する人々によって作られたので、ゴッホは変人だけど愛されキャラで自殺なんてしない、という結論に落ち着きます。ゴッホへの愛が満ち溢れた映画で、正直な感想は、その推理はちょっと苦しいかなぁ…なのですが、手紙が届けられた後、ルーラン親子にテオの未亡人から届いた手紙、「Loving Vincent」の文字には、じわーっと…た。


 私は、むか~し、ワシントンD.C.の国立美術館で、大規模なゴッホの作品展をみるという幸運な機会に恵まれたのですが、彼の作品に触れた本音は「確かにこれは狂気の沙汰だ」だった。その圧倒的な色彩と筆致は、正気の人間では表現し得ない、通常の人間の脳では感知し得ない、別の世界に生きる者にしか見えない世界に思えたから。上手く言えないけど、その狂おしさが胸を打つというか、すごい勢いで迫ってくるというか… 見てて息苦しくなるほどの迫力を感じました。生前は、一作しか売れなかったのも、斬新さのせいばかりではなく、作品に生霊の如くまとわり付く画家の気迫に見る者が恐れをなしたからかも、そして現代、これほどに愛されているのも、画家の情熱が突き刺すように迫ってくるからかも、なんて思いました。ええモン、見せてもらった、という気のする映画でした。


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