わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

カンフー・パンダに見る米中関係

2016-03-07 | 時の話題
「カンフー・パンダ3」を観ました。ポーは実のお父さんに会い、パンダの隠れ里に向かい、マスター・シーフーの気を奪って精神世界から蘇ったマスター・カイから里を守るため、自分も精神世界に行って、「気」をマスターします。実の父や他のパンダ達と出会い、ドラゴン・ウォリアーとしてのポーが完成された今、これ以上のシリーズは望めないでしょう。あっても、スピンオフ的な短編や、次世代ものとか?ポーの成長を見守ってきた観客として、3部作の完成を見た満足感とともに、寂しい気持ちもします。今回もとても美しい映像で、3Dも凝っており、劇場で見たかいがありました。

 シリーズ第一作「カンフー・パンダ」は、中国の一部では上映禁止でした。それが、今回の「3」は米中共同制作です。そのせいか、今までよりも、ずっとオリエンタル色が強く打ち出されていました。Chi(気)が究極のカンフーとして重要な役割を果たしたり、スピリチュアル・ワールド(精神世界、要はあの世)が出てきたりというところも、アジアっぽい感じ。第一作は2008年制作・公開でしたが、四川省の芸術家趙半狄(ジャオ・バンディー)氏が、「中国の国宝とカンフーを盗み、中国で儲けようとしている」という理由で批判したせいで、四川省では上映が見合わされたそうです。中国全土では大ヒットして、「こういう映画は中国が作るべきなのに、アメリカに作られちゃうなんて!」という声が多かったとか。


アメリカ版ポスター 今回はいっぱいパンダが出てくる!

 一作目の監督はマーク・オズボーンとジョン・スティーヴンソンで、全くの(?)アメリカ人。二作目「カンフー・パンダ2(2011年)は、監督がジェニファー・ユーという韓国出身の女性です。2作目からの、特に美しい色彩は、彼女のセンスによるものが大きいそうです。そして、この「3」はジェニファー・ユー監督が続投ですが、今回は単独ではなく、アレッサンドロ・カルローニも共同監督として名前を連ねています。そして、ドリームワークス・アニメーションと中国の投資会社の合弁企業オリエンタル・ドリームワークスが製作の一部を担当しているので、中国映画として中国市場に出されているのです。

 今年1月末に米中で同時公開され、アメリカでも未だ劇場公開中で興行成績を伸ばしていますが、中国ではアニメ映画史上最高の成績を叩き出しているとのこと。この1月末という公開日も、実は中国の旧正月に合わせた戦略です。何億もの人が家族とともに過ごすために国土を移動する、このシーズンは家族向け映画にとっては、年一番の稼ぎ時で、通常は、アメリカ映画等の外国映画の公開はブロックされていました。でも、先に書いたとおり「カンフー・パンダ3」は「中国映画」なので無問題。


中国版ポスターは、なんだかお目出度い感じ

 ハリウッドにとっても中国市場は重要ですから、昨今はどう観ても中国を意識してるな、オイ!的な内容が露骨に目立ちますが、中国のホリデー映画市場に参入し、大人気を博しておるこの映画、今後のハリウッドと中国の関係を大きく変える礎石となったとも言われています。日本経済が世界を席捲したバブル期には、日本を取り上げたハリウッド映画が多く作られましたが、どうも悪徳巨大企業だったり、ヤクザが仕切ってたり、むしろ悪役が多かったような?でも「ブラック・レイン」とか、日本でもヒットしましたよね。一方で、「今後しばらくは中国人が悪役の映画は見られないだろう」という意見を多く見かけるので、中国人は自分たちが悪役にされるのは嫌うけど、日本人は別に気にしない?

 言い方を変えれば、日本がブイブイいわせていた頃(死語)、ハリウッドは日本市場を中国ほどは重視していなかったということでしょうか?ってゆーか、日本は逆に、いきなりハリウッドの映画会社買ってたけどw

 20年位前には、顔のない不気味な集団と思われていた日本(ドモアリガト、ミスター・ロボット)が、今では世界中でポケモンやゴクウ等々の「顔」で知られる国になったなんて、日本文化の進化っぷりに感慨深いです。もし、バブル期の日本を狙って、ハリウッドが「カンフー・パンダ」みたいな映画を作ったとしたら、何の映画になっていたかな?ニンジャ?あ、先に「ナルト」があるわ…

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