わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

ホラー過ぎて笑う映画 「1408号室」

2015-08-28 | 映画・ドラマ・本
 ここのところ里心が就いて、ジャンル等は一切関係なく、LAやサウスベイを舞台にした映画を選んで見ています。「エンド・オブ・デイズ」とか「トレーニングデイ」とか刑事ものが多いみたいだけど、パニックもの(必ず巨大ドーナッツが転がる)、そしてホラーもたまに。

 サウスベイがちょっと出てくるホラー、「1408号室」はスティーブン・キングの短編の映画化。ジャック・ニコルソンの怪演で有名な名作、「シャイニング」ではホテル、というか、土地全体が全力で呪ってきましたが、ここはホテルの一室だけがやる気満々。たまにしかお客が来ないんで、久しぶりの客にテンパっちゃったのか、主人公の、ジョン・キューザック演じるオカルト作家のマイク・エンズリンをあの手この手で攻撃します。まずはお約束として幻覚を見せる、部屋ん中冷凍室にする、カーペンターズの歌を何度も流す、テレビで昔の光景見せる、その上、時計で「1時間以内に殺すぞー」とカウントダウンまでやる、爆発する、絵から大波が押し寄せる、インターネット通して嫁だます。今どきのテクノロジーにも対応しています。誰も泊まってくれない間、次は何して驚かそうかって一所懸命考えているのでしょう。今どきの悪霊たるもの、コンピューターも使えなくちゃね!と、張り切ってオンライン講座とか受講してそう。

 映画は2007年作品なのですが、なんだかもっと古いように感じます。8年前って、こんなに「昔」っぽかったっけ?この映画で出てくる折りたたみ携帯電話は今時では珍しいし、ノート型パソコンにくっついたカメラ、そして今はなきサンヨー製のマイクロ・レコーダー。こういった物が普通に見られたのって、少なくとも10年以上前って気がするけど、8年前はまだ使ってたのね。それだけテクノロジーの移り変わりが早くなり、時代が変わるサイクルが短くなってきているのでしょう。

 マイクはリリカルな純文学でデビューしたものの、幼い娘の死を経験してからは、妻とも上手くいかずに別居中。「アメリカのトップ10呪われたホテル」なんて本を書いて食いつないでるけど、実は幽霊なんか信じていません。彼のところには、自称呪われたホテルや屋敷からの招待状がいっぱい。その中の一枚、ニューヨークのドルフィンホテルのハガキには一言「1408号室に入るな」と…

 普通の予約を入れたら、にべもなく断られたので出版社のコネも使って(出版社の担当者がミスター・モンクの中の人で「お!」だった)、無理矢理に予約を入れ、ホテルに乗り込んだら、支配人のサミュエル L.ジャクソンが止める。超止める。正直、この支配人が一番怖い。さすがのサミュエル L.ジャクソン、無駄に胡散臭さプンプンです。マイクが冷蔵庫あけたら支配人室に繋がってて、小さい支配人が「だから止めたのに」って言った時は、思わず「メン・イン・ブラック」の、K(トミー・リー・ジョーンズ)がロッカー開けたら、その中に星が一つあったシーンを思い出しました。日常品の小さなドアの向こうに別の宇宙が広がってる。冷蔵庫の向こうにも、別次元がつながってる。4次元ポケットみたいね。

 ちなみに、この呪われたホテルの部屋には実はモデルが有りまして、サン・ディエゴの北にある高級リゾート地、コロナドにあるホテル・デル・コロナドの3502号室がそれ。部屋の温度が勝手に変わったり、ラジオが鳴り始めたり、複数の宿泊客が自殺したり、この部屋に入った従業員が二度と出てこなかったりという事があったそう。加えて、このホテルには、階段を昇降する黒衣の貴婦人(怪談だけに~。ごめん、言いたかった)という有りがちパターンも。この貴婦人は海に続く階段で自殺したケイト・モーガンだと言われています。この部屋からインスピレーションを得て書かれたのが「1408号室」なんだって。なんで海の絵から洪水が起こるか判ったような気が。ホテル・デル・コロナドは、泊まらずとも一見の価値ありといわれる観光地なので、シーズン中ともなると混んでガヤガヤし、隣に基地があるもんだから戦闘機が上を通ったりして、かなり騒々し印だって。夜中にポルターガイストが起こっても、夜間飛行練習かと間違われそうw


 映画の方に話を戻し、これ、実は宗教映画で、テーマは、神様を信じない奴は悪魔に連れて行かれるぞ~、だと思いました。だから、無神論者ではなくとも、神様に対して違った見方をしている日本人の私は、これでもか、これでもか!と攻撃をかけてくる悪魔も、聖書を信じないからって神様に見放されちゃった、も、怖さがわからなかったのかも。日本でhビデオスルーの理由も、この辺りかな?

 英語で自然災害を「Act of God(神の仕業)」と言います。この間、色んな格言(?)的な言葉が壁に貼ってあるお店に入ったんだけど、その一つが「無神論者が神の所業で損害を受けても保険金をもらえるの?」でした。1408号室は神様を信じない悪い子の行く煉獄、そして支配人のオリンは地獄の門の門番。ダメだよ、この扉の中に踏み込んだら絶対ダメだから!って一応は止めるんだけど、それでも入っちゃたらしかたにないよねって見離しちゃう結構ドライな門番。部屋の中に聖書があったのが、最後の審判だったのかも。で、後から神様に頼ろうと思って聖書開いたら、中が白紙とか敗者復活戦の機会がないんだから、神様もドライですね。なんやかんやで助かって、奥さんとやり直してるふうな終わりのシーンですが、黒いジャケットを羽織ったとこで、これはオリジナルじゃなくて、向かいのビルにいたコピー君(悪魔?)だよね、と匂わせる、とてもキング風味漂うエンディングでした。

 キリスト教徒ではない私にはイマイチ怖さは伝わらず、部屋の必死っぷりと、対するジョン・キューザックの奮闘っぷりに苦笑しながら見た映画でしたが、里心シリーズとして、サウスベイの光景が嬉しかった。そして、ドルフィン・ホテルの外装やロビーは、マンハッタンの45丁目とマディソン街の角にあるルーズベルト・ホテル。実は、ここには何度も泊まったことがあります。ワシントンD.C.に居た頃、仕事でNYCに出張するときの常宿が、ここに指定されていたのだ。国連が近くて便利だから。内部は1408号室みたいに広々とはしてなかったけど、確かにクラシカルな(単に古い)ホテルでした。グレート・ギャッビーにも出てた歴史ある(つまり古い)ホテルです。マンハッタン・ビーチやハモサ・ビーチの光景に加え、思わぬ懐かしいおまけ付きでした。

  
Hotel LexingtonとHotel del Coronado

最新の画像もっと見る

コメントを投稿