13年積み残し感想2本目です。
「闇の左手」以来のル・グィン作品です。
どうでもいいの話ですが、著者別インデックスでル・グィンを「ク」の項で整理したのですが、「ル」が正しいのか悩んでいます。
どなたかご存知ならお教えいただければ幸いです。
(私の推測では「ル」は敬称的前置詞だと思うのですが...)
本作'12年ローカス誌オールタイムベスト16位1974年発刊、ヒューゴー・ネピュラ両賞受賞作品です。
11月終わりくらいに大森のブックオフで550円で購入。
![](http://farm8.staticflickr.com/7400/11740342703_2abee06af6_n.jpg)
他にも色々SF買っていたのですが、'12年ローカス誌オールタイムベストのリストを見ていたら、16位の本作と、11位の「異星の客」を読めば2位の「エンダーのゲーム」から17位の「火星年代記」まで既読になるなーと気が付き'13年中に読んでしまおうと思い手に取りました。
まぁずっと気になっていたのですが、105円棚で見つけられなかったので買わなかったのですが...。(笑)
内容(裏表紙記載)
恒星タウ・セディをめぐる二重惑星アナレスとウラス―――ウラスが長い歴史を誇り、生命にあふれた豊かな世界なら、アナレスは二世紀たらず前に植民されたばかりの荒涼とした惑星である。 オドー主義者と称する政治亡命者たちがウラスを離れ、アナレスを切り開いたのだ。 そしていま、ひとりの男がアナレスからウラスへ旅立とうとしていた。大いなる目的をうちに秘めて・・・・・・ヒューゴー/ネピュラ両賞受賞の栄誉に輝く傑作長編
とりあえずの感想、「力作かつ安定感があり安心して読める作品」
本作の直前に読んだ「分解された男」がどうもアラが目立ち気になっていたのに対し、さすがル・グィン破綻なく丁寧に書かれていて読ませます。
最初から最後まで物語の世界に没頭できました。
SFのいろいろなお約束もかっちり抑えていて「ハードSF」ファンにも楽しめ、登場人物・情景などもキッチリ書き込まれています。
本作も「闇の左手」同様「ハイニュッシュ・ユニバース」シリーズの作品でシリーズの重要な仕掛けであるアンシブル(超光速通信技術)の原理を発見した物理学者の半生記という形式の作品です。
アンシブルの出現で宇宙連合の組織化が可能になったことになっているらしいので、この世界ではものすごく重要な人物ということですね。
(「アンシブル」はカードも「エンダーのゲーム」シリーズで使ってますね、原理・発見方法は違いますが)
なお、ハイニッシュ・ユニバースシリーズ上の年代では(解説に書いてあった)本作の設定が西暦2300年、「闇の左手」西暦4870年連合歴2520年です、本作の50年後に連合が発足したという設定ですね。
そんな前提も知っていれば知っていたで楽しめると思いますが、40-50年代SFで描かれる火星のような過酷な環境の「アナレス」と環境も社会も地球によく似た「ウラス」が目に見えるような鮮やかさで描かれています。
特に「ウラス」の過酷な環境と、それに適応すべくも理想を追求した原始共産制的社会、そのなかでの「物理の天才」かつインテリゲンチャァ的活動を行う主人公シェヴェックという設定はいろいろ考えさせられます。
「闇の左手」でも感じましたが極限状況の描き方が非常にうまい作家だと思いました。
上記の状況にも母子の問題、家族の問題やらなにやらうま~く織り込んで話を展開させています。
ただ、「アナレス」の描き方には東西冷戦の影響が感じられますし、「ウラス」のフリーセックス的なところをかなり書き込んでいるところなどはヒッピー文化の影響も感じ執筆した時代の影響を受けているのは感じました。
ネット上の評価では「時代を感じさせない」という評価が多かったですが、私はしっかり時代の影響は感じました。
特に「セックス」描写(過激ではなく量的な)多さはちょっと辟易ではありました。
「アナレス」の一見理想的な社会体制でも生じてくる矛盾、ウラスでの「資本主義」「社会主義」的政府の一見「悪」に見えても機構上必要な統治機構。
なにが「善」だかわからない中で「個人」の役割などなどがテーマでしょうかねぇ。
とにかくいろいろ考えさせられる作品です。
ただまぁディックやヴォネガットなどの作品と比べると、伝統的な「物語」の系譜かつ教訓的で新しさは感じませんでした。
「分解された男」をあれだけけなしておいてないものねだりなのはわかっていますが、19世紀的「物語」の枠組みに則った作品でそういう意味では「大時代的」だなぁとも感じました。
「半生記」というのは感動的なのですがベタにはなりがちではありますし。
すばらしく面白いけれども突き抜けた「狂気」というかサムシングがないというか...。
私的には「闇の左手」の方が現実の「時代」をあまり感じさせず、いろいろ自由に書かれている気がして好きではあります。
そういう意味では「ゲド戦記」(特にⅠ~Ⅲ)も現実から切り離されて自由に書かれています、しなにやら隠された情動のようなものを感じました。
本作は意図的に「時代」やら現実的課題にあえて正面から向き合った作品なのかもしれませんけれども。
とにかくよく出来た面白い作品ではあり、よく出来る子ほどかわいらしさに欠けるという感を持ったりしました。
「物語」好きな方も!ちょい悪作品が好きな方も。
↓よろしければクリックいただけるとありがたいです!!!コメントも歓迎です。
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「闇の左手」以来のル・グィン作品です。
どうでもいいの話ですが、著者別インデックスでル・グィンを「ク」の項で整理したのですが、「ル」が正しいのか悩んでいます。
どなたかご存知ならお教えいただければ幸いです。
(私の推測では「ル」は敬称的前置詞だと思うのですが...)
本作'12年ローカス誌オールタイムベスト16位1974年発刊、ヒューゴー・ネピュラ両賞受賞作品です。
11月終わりくらいに大森のブックオフで550円で購入。
![](http://farm8.staticflickr.com/7400/11740342703_2abee06af6_n.jpg)
他にも色々SF買っていたのですが、'12年ローカス誌オールタイムベストのリストを見ていたら、16位の本作と、11位の「異星の客」を読めば2位の「エンダーのゲーム」から17位の「火星年代記」まで既読になるなーと気が付き'13年中に読んでしまおうと思い手に取りました。
まぁずっと気になっていたのですが、105円棚で見つけられなかったので買わなかったのですが...。(笑)
内容(裏表紙記載)
恒星タウ・セディをめぐる二重惑星アナレスとウラス―――ウラスが長い歴史を誇り、生命にあふれた豊かな世界なら、アナレスは二世紀たらず前に植民されたばかりの荒涼とした惑星である。 オドー主義者と称する政治亡命者たちがウラスを離れ、アナレスを切り開いたのだ。 そしていま、ひとりの男がアナレスからウラスへ旅立とうとしていた。大いなる目的をうちに秘めて・・・・・・ヒューゴー/ネピュラ両賞受賞の栄誉に輝く傑作長編
とりあえずの感想、「力作かつ安定感があり安心して読める作品」
本作の直前に読んだ「分解された男」がどうもアラが目立ち気になっていたのに対し、さすがル・グィン破綻なく丁寧に書かれていて読ませます。
最初から最後まで物語の世界に没頭できました。
SFのいろいろなお約束もかっちり抑えていて「ハードSF」ファンにも楽しめ、登場人物・情景などもキッチリ書き込まれています。
本作も「闇の左手」同様「ハイニュッシュ・ユニバース」シリーズの作品でシリーズの重要な仕掛けであるアンシブル(超光速通信技術)の原理を発見した物理学者の半生記という形式の作品です。
アンシブルの出現で宇宙連合の組織化が可能になったことになっているらしいので、この世界ではものすごく重要な人物ということですね。
(「アンシブル」はカードも「エンダーのゲーム」シリーズで使ってますね、原理・発見方法は違いますが)
なお、ハイニッシュ・ユニバースシリーズ上の年代では(解説に書いてあった)本作の設定が西暦2300年、「闇の左手」西暦4870年連合歴2520年です、本作の50年後に連合が発足したという設定ですね。
そんな前提も知っていれば知っていたで楽しめると思いますが、40-50年代SFで描かれる火星のような過酷な環境の「アナレス」と環境も社会も地球によく似た「ウラス」が目に見えるような鮮やかさで描かれています。
特に「ウラス」の過酷な環境と、それに適応すべくも理想を追求した原始共産制的社会、そのなかでの「物理の天才」かつインテリゲンチャァ的活動を行う主人公シェヴェックという設定はいろいろ考えさせられます。
「闇の左手」でも感じましたが極限状況の描き方が非常にうまい作家だと思いました。
上記の状況にも母子の問題、家族の問題やらなにやらうま~く織り込んで話を展開させています。
ただ、「アナレス」の描き方には東西冷戦の影響が感じられますし、「ウラス」のフリーセックス的なところをかなり書き込んでいるところなどはヒッピー文化の影響も感じ執筆した時代の影響を受けているのは感じました。
ネット上の評価では「時代を感じさせない」という評価が多かったですが、私はしっかり時代の影響は感じました。
特に「セックス」描写(過激ではなく量的な)多さはちょっと辟易ではありました。
「アナレス」の一見理想的な社会体制でも生じてくる矛盾、ウラスでの「資本主義」「社会主義」的政府の一見「悪」に見えても機構上必要な統治機構。
なにが「善」だかわからない中で「個人」の役割などなどがテーマでしょうかねぇ。
とにかくいろいろ考えさせられる作品です。
ただまぁディックやヴォネガットなどの作品と比べると、伝統的な「物語」の系譜かつ教訓的で新しさは感じませんでした。
「分解された男」をあれだけけなしておいてないものねだりなのはわかっていますが、19世紀的「物語」の枠組みに則った作品でそういう意味では「大時代的」だなぁとも感じました。
「半生記」というのは感動的なのですがベタにはなりがちではありますし。
すばらしく面白いけれども突き抜けた「狂気」というかサムシングがないというか...。
私的には「闇の左手」の方が現実の「時代」をあまり感じさせず、いろいろ自由に書かれている気がして好きではあります。
そういう意味では「ゲド戦記」(特にⅠ~Ⅲ)も現実から切り離されて自由に書かれています、しなにやら隠された情動のようなものを感じました。
本作は意図的に「時代」やら現実的課題にあえて正面から向き合った作品なのかもしれませんけれども。
とにかくよく出来た面白い作品ではあり、よく出来る子ほどかわいらしさに欠けるという感を持ったりしました。
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