しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ユービック フィリップ・K・ディック著 浅倉久志訳 ハヤカワ文庫

2013-12-12 | 海外SF
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」以来のディック作品です。

本作‘12年ローカス社長編オールタイムベスト44位、’06年SFマガジン海外長編13位とSFとしての評価も高いですが、タイム社の英語小説ベスト100(1923-2005年)にも選出され「文学作品」としても評価されている作品です。

「文学的」ということでディックの評価はSFファンダム以外でもかなり高いようですね。

ブックオフで春先に購入(川崎だったような...)450円。

内容(裏表紙記載)
1992年、予知能力者狩りをおこなうべく、ジョー・チップら反予知能力者が月面に結集した。 だが予知能力者側の爆弾で、メンバーの半数が失われる。 これを契機に、恐るべき時間退行現象が地球にもたらされた。 あらゆるものが退化していく世界で、それを矯正する特効薬は唯一ユービックのみ。その存在をチップに教えたのは死の瞬間を引き延ばされている半死者エラだった・・・・・・鬼才ディックがサスペンスフルに描いた傑作長編。

とりあえず上記の内容紹介についてですが、ひどい...(ような気がする)。
内容をまったく正確に伝えていないうえにオチに近い情報を明かしている。
どこをどうすればこんな内容紹介になるんだろう?とても不思議です。

書き直すとすれば…難しいのでやめておきます。
内容紹介ですらなにやらピントがずれてしまうこの現実感の希薄さ、本作の特質を表しているかもしれません。(笑)

まずは読後の感想「とてもよくできている作品」

「空想未来社会の中で、ハイパー現実的な事件が起き、現実が崩れていくような不思議なことが起きつづけ主人公が悪戦苦闘する。」というパターンは「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」と同様です。
「アンドロイド...」は1968年発刊ですが本作は1969年発刊。
一年しか違いませんが、本作の方が話がまとまっていて、「謎」が気になりながらの展開で、物語の世界に引きずり込まれていきます。
オチもきれいに決まっている。

時代がどんなに退行してもお金を要求し続けるマンションのドアなど小ネタも効いていて飽きずに読み進められます。

ただあまりに「うまくまとまりすぎているかなぁ?」という気もして、「さらっ」と呼んでしまい読後感もさらっとした感じです。
私的には「アンドロイド...」のぐちゃぐちゃな展開の方が好きかなぁ。

かなり緻密な構成で、よく読めばいろいろなメッセージが読み取れるのでしょうが私程度の読書力では「面白い小説」という程度の読後感になってしまいました。

一応、深刻なテーマをひねり出せば「生きているとは?」「死んでいるとは?」「現実とは?」の境界線は云々になるんでしょうが...、その辺あまり真剣に考える気には「私は」なれませんでした。

印象に一番残った場面は終盤で主人公がやっとのことで階段を上るのをアンチ(?)エスパー美少女 パットが眺めている場面とその直後のパットの運命。
なにやら諸行無常です。

場面場面を楽しむ小説なのかもしれませんね。

上記否定的な見解のようですが、ディックの作品世界は評価が高いだけあってなんだか気になるものがありますね。
なんだかひっかかる作風です。

他の作品も読みたいなーとは思わされました。

他、感想としては
ディック、女性を魅力的に描写するのとてもがうまいですね。
「アンドロイド...」でもアンドロイド女性がかなり魅力的に描かれていましたが、本作でも魅力的に書いています。
アンチエスパー、パットの登場場面「十七より上にはとても見えない。ほっそりとした体つき、銅色の肌、大きな黒い瞳。驚いたすごい美人だ、と彼は思った」
ウェンディの登場場面「ウェンディ・ライトが、ほかの人間とおなじように、血と体内器官の中から生まれたとは、とても思えなかった。」
ありきたりなような、でないような、なんともうまい気がします。
才能ですね。

あとパットの「過去改変能力」、読んでいるときはなんだかわかりにくい能力な気がしましたが、ブログの過去記事の誤字脱字など直していたら「あ~こういうことか」と納得できました。
過去の書き換えは太古の昔から人間の得意技なのかもしれません。

ぱっと入っていきにくい話ですがいろいろ示唆に富む作品と言えるかもしれませんね。


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