しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

スローターハウス5 カート・ヴォネガット・ジュニア著 伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫

2013-09-27 | 海外SF
「タイタンの妖女」を読んでいる途中で、ヴォネガット作品のトーンがなんだか気になって、他の作品も読みたくなり職場近くの本屋で新品を購入しました。

ブランドに弱い人なのでヴォネガットが「現代アメリカ文学を代表とする一人」といわれ、本作「スローターハウス5」がタイム誌(英語小説)100選に入っていたりするらしくなんだか偉そうなのも「読んでみようかなぁ」と思った理由だったりします。

ちなみにタイム誌の英語小説100選ですが、タイム誌創刊の1923年以降の作品で選んでいて、SF(のくくりに入れることできるもの)では
・スローターハウス5(本作ですね)
1984年
ニューロマンサー
・時計仕掛けのオレンジ
・ユービック
・スノウ・クラッシュ
(・指輪物語)
がありました。

アメリカでは日本よりSFの地位が高いのか質が高いのかわかりませんが、結構選ばれてますね。
でも、アシモフやハインラインなどエンターテインメント色の強い作家は選ばれていませんが....。
日本でこのような企画があったとしてもSFが入ることはなさそうな気がします。
「第四間氷期」や「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」辺りがSFだとすれば入って来るかもしれませんが...。

ちなみに日本の小説ではどうかな?とネットで探したら海外サイトgoodreadsでBest Japanese booksなるものが出てきました、ベスト10中7作品が村上春樹と圧倒的...。
(100作品中17作品、SNSなので投票で変わるようなので確認した9/25現在の数字です)

ということで脱線しましたが「スローターハウス5」
内容(裏表紙記載)
時の流れの呪縛から解き放たれたビリー・ビルグリムは、自分の生涯の未来と過去を往来する、奇妙な時間旅行者になっていた。大富豪の娘と幸福な結婚生活を送り・・・・・・異星人に誘拐されてトラルファマドール星の動物園に収容され・・・・・・やがては第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜となり、連合軍によるドレスデン無差別爆撃を受けるビリー。時間の迷路の果てに彼が見たものは何か?著者自身の戦争体験をまじえた半自伝的長編。

ちなみにタイトルのスローターハウス5は「場五号」の意味だそうです。

感想を一言で言えば....「つまらない」(笑)
筋を説明するとすれば、上記の裏表紙記載の内容紹介文のとおりなのですが...。

「タイタンの妖女」でのラムフォード同様、この作品の主人公ビルグリムは全時的視野を得るわけですが、「痙攣的」なため自らの意志で自由に行き来ができません。
そのため超人性を発揮しないでただただ自分の生きてきた時間を漂います。
この作品、全登場人物が「超人性の発揮」をしないのでどうにも盛り上がらない...。

場面場面では「おっいいなぁ」と思うこともあるのですが、途中で主人公がタイムスリップしてガクッときます、タイムスリップ先も脈力はない感じ。

「世間の評価が高い作品なんだからそのうち面白くなるだろう」と読み続けましたが山場がないままラストを迎えます。
トラルファマドール星の話も展開に無理があるような...。

エンターテインメント小説的に読むとどうにもつまらない小説だと思いました。
「タイタンの妖女」の方がストーリーもあり、ちゃんと「SF小説」していましたね。

「反戦小説のようなもの」と著者が作中語っていますが、果たして「反戦」なのかもよくわからない。
各種解説ではこの作品の焦点になっている「ドレスデン無差別爆撃」についても荒涼とした状景などは印象に残りましたが、具体的に善悪を論じてはいません。
私はなにやら無力感と運命的なあきらめのようなものを感じました。

ただ読み終わって、なにかこうもやもやした感情が残る。
そういう作品です、作中の言葉を借りれば「そういうものだ(So it's goes.)」でしょうか?

印象に残ったのは、登場人物の一人で三文SF作家のキルゴア・トラウト(ヴォネガットの他の作品にもよく登場しているらしいです、モデルはSF作家のスタージョンともいわれているらしいです)の短編「宇宙からの福音書」。

宇宙人の新約聖書の解釈は「有力なコネを持った人をいじめてはいけない」という教訓のお話というもの。

「タイタンの妖女」のラムフォードとコンスタントを思い出しました。
コネを持っているラムフォードと持っていないコンスタント...。
そういわれればラムフォード=キリストという見方もあるなぁ。

欧米人の書く小説だけに、キリスト教の話はよく出てきますね、その辺抑えていないとよくわからないのかもしれません。

この作品にはトラウト以外にも、この作品より前に書かれたヴォネガットの小説に出てきた人物、ローズウォーター、キャンベル、タイタンの妖女に出てきたラムフォードの先祖かと思われるラムフォードが登場してきたりもします。

その辺の作品も読んでおかないと十分理解できないのかもしれませんね。

あと、初期の村上春樹作品が「この作品を下敷きにしたのでは?」といわれているようですが私はあまり類似点を感じませんでした。
前に「長いお別れ」を読んだ時の方が文体の類似点を感じました。
この作品に比べれば村上春樹の方がはるかにエンターテインメントではあります。

とにかく現在の私にはこの作品の面白さが理解できませんでした。
他のヴォネガット作品を何冊か読んでから読めばまた違う読み方ができるかもしれないのでいつの日か再読したいなぁとは思います。

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