しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

死者の代弁者上・下 オースン・スコットカード 塚本淳二訳 ハヤカワ文庫

2013-07-22 | 海外SF
「エンダーのゲーム」を入手した地元のトラディショナルな古本屋で上、下450円で売っていたので入手。
(気になる絶版本は見かけたらとりあえず買うようにしている。)


本作は「エンダーのゲーム」の続編なのですが、そちらが若干期待外れだったので「どうしようかなぁ」とも思ったのですが...続けて読んだ方が入りやすいだろうということで読み始めました。
12年ローカス社オールタイム長編ベスト33位です。

余談ですが前回「エンダーのゲーム」で書き忘れたこと。
嫌々敵を殲滅してしまう天才少年ものといえば、「機動戦士ガンダム」がありましたね、アムロもかなり屈折してました。
あの映像世界をうまく小説家できたらかなりの傑作になったような気がする、実際の小説版はちょっと...ですが。
(そういえばガンダムは「宇宙の戦士」を元ネタにして創っているらしい)
ガンダムは79年くらいですが....スコットカードまさか見てないよな-。

さて本作
内容(裏表紙記載)
上:
宇宙に進出した人類が初めて遭遇した知的生命体は、昆虫型異星人のバガーだった。だがコミュニケーション不足のため戦争となり、双方の種族に不幸な事態を招いてしまった。それから三千年、銀河各地に領土を広げた人類は、ついに第二の知的生命体に遭遇した。惑星ルジタニアの森に住む動物ピギーが高度の知性を持つとわかったのだ。今度こそバガーの時のような誤ちは犯すまい・・・・・・人類はピギーと慎重に交渉しはじめたが!?
下:
ルジタニアの現住種族ピギーを研究していた異類学者ピポが研究していた異類学者ピポがピギーに殺害されてしまった。しかも残酷きわまりないやり方で。死んだピポになり代わり、その真実の生涯について語ってもらいたい。そう依頼された<死者の代弁者>エンダーは、早速ルジタニアめざして旅立った。ピギーの未来を、さらには人類の未来を変えるために・・・・・・前作『エンダーのゲーム』に続き、二年連続でヒューゴー、ネピュラ両賞に輝いた傑作長編!

上記にもあるように、「エンダーのゲーム」に続き二年連続ヒューゴー、ネピュラ両賞を受賞するという現在にいたるまで空前絶後の快挙を成し遂げた作品ですが....。
「エンダーのゲーム」が私的には????だったのであまり期待をしないで読み始めました。
読み始めたら.....。

止まらなくなりました。
物語に引き込まれてどんどん入っていくという感覚....久々でした。
あくまで「私的」にですが、かなりの傑作だと思いました。

ネット上での評価をちょいと調べたところでは、賛否両論。
スコットカードの作品で「一番好き」という人と、「なんだかわからない」「宗教臭くて入っていけない」という人に二分されています。

まぁ好き嫌いの別れる作品なんでしょうねぇ。
特に「キリスト教的」な描写に反発を感じる人には難しいかと思います。
私は極めて日本的な「無宗教人」なので、唯物論を信じているわけでもなく、アニミズムを信奉しているわけでもなく、「絶対者」なんてのも「あるかもねぇ」というきわめていい加減な宗教観念なのと、夢見る乙女的な正義感やら「愛」なんていうものを捨てきれていないおじさんなのでツボにはまったんだと思います。
高校生ではないので完璧に信じているわけでもないので作品のどこかにうさん臭さも感じているのですがとにかく読ませます。
うまく合えばすばらしい読書の時間を過ごせる作品です。

エンダーの超人性(説得力的な)とか、やたらみんな涙を流す展開などかなりご都合主義的展開もしらけだすとしらけてしまうかもしれませんが...。
基本的にはピギーとはなにか?、ルジタニアの生態系はなんでこうなのか?ピポの死の真相は?という謎を追求するミステリ形式でエンダーが名探偵役という構造。
そこにノヴィとエンダーの恋愛もの的要素が加わるかなぁという感じ(恋愛ものとしては成功していない様な気がしますが)
謎解きはハードSF風でなかなかいけますし、ちょっと屈折している名探偵エンダーの立ち位置が絶妙で非常に面白い物語に仕上がっていると思います。

その他感じたこと。
解説にも記載ありましたがル=グィンの影響を感じました。
個人的には「ゲド戦記」の構図を思い起こしました。
・エンダー=ゲド
・ノヴィーニャ=テナー
に当てはめると....、関係性がかなり似てくる。
解説では別生態系を持つ惑星ということでの「闇の左手」との類似性も挙げていましたが私はそこまで感じませんでした。
生態系の点では、「神々自身」を少し思い出しました。

あと書かれた年代はこの作品の後ですが「ハイペリオン」で出てくるコンピューター人格「AI」的な人格者(単一人格ですが) ジェーンや
超光速通信の存在、光速での旅行による相対時間差を多用している点など若干類似性を感じました。
シモンズも似たような立ち位置にいるような感を受けますのでスコットカードと仲いいんでしょうか?

いろいろ細かい点をつつくと出てくると思いますが、あまり深く考えずに物語の世界に入り込めれば、至福の時間が過ごせる作品と思います。
傑作です。

↓よろしければクリックいただけるとありがたいです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へにほんブログ村


最新の画像もっと見る

コメントを投稿