しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

猫のゆりかご カート・ヴォネガット・ジュニア著 伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫

2013-10-11 | 海外SF
「スローターハウス5」は「つまらない」という感想でしたが...。
この作家の出すトーンが私の最近の気分にははまっていて、他の作品も読みたくなり職場近くの本屋で新品を購入。

これも「SF」というには「?」な作品の気がしますが‘12年ローカス社オールタイムベスト45位にランキングされています。
1963年出版で、「タイタンの妖女」が1959年出版、その後長編としては「母なる夜」を挟んで出版された作品です。
本作の後「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」を挟んで「スローターハウス5」が1969年に出版されています。

内容(裏表紙記載)
わたしの名はジョーナ。「世界が終末をむかえた日」の執筆準備にとりかかったのは、キリスト教徒だったころのこと。いま、わたしはプエルト・リコ沖のサン・ロレンゾ島にいて、禁断のボコノン教を奉じている。ボコノン教に入信したそもそものきっかけこそ、ほかならぬ未完の大作「世界が終末をむかえた日」なのだった・・・・・。シニカルなユーモアに満ちた文章で定評のある著者が奇妙奇天烈な世界の終末を描いたSF長編。

解説で、主人公「ジョーナ」の名前が旧約聖書の預言者「ヨナ」にちなんでいると書いてあり、「ヨナ書」をまたネットでちらっと調べてみましたがなんとも割り切れない話ですねぇ、この作品との関連もありそうで、なさそうで...旧約聖書奥深いです。
解説ではヨナ書と「白鯨」の関連が書いてあり、作中出てくるクジラの形の山の上に銛の形の岩が飛び出ているのを例として上げています。

さて、読後の感想....。
「おもしろい」(笑)

細かく章立てしていますが、章ごとに次が気になるように仕掛けられています。
この辺村上春樹的です。
村上春樹氏がどこかで「意図的に次が気になるように書いている」と書いていましたが、その辺はこの作品のパクリなんじゃなかなどと思ったりしました。
ノンポリ的かつ巻き込まれながらも踏み込んでいってしまう主人公一人称で話が進むのも村上春樹風です。
内容的にはとんでもないことを書いていて面白くなりそうもないのですが、「面白くしようとすりゃ簡単なんだよ」とヴォネガットが舌を出しているような気がしました。

一応ボコノン教を通じた宗教とか、冷戦を背景とした政治、科学の在り方といったものがテーマなんでしょうが、徹底的にあられもなくあっけらかんと書いているので、読んでいる方もあっけに取られてしまい感想がうまくまとまりません...。
とりあえず非常に絵画的作品で印象に残るシーンの多い作品と感じました。
いろんな状況が目に浮かんでくきます、絵的に印象に残っている場面は、
・ハニカー博士があやとりで「猫のゆりかご」を作り息子ニュートに見せている場面
・主人公がハニカー夫人の墓石の形を見てあっけに取られている場面。
・ボコノン教徒が足裏(ソウル)をくっつけあうボコマルをしている所
・最後の砦が壊れる場面
・大使夫妻が泰然として死んでいくところ。
・アイスナインで凍りついた世界
・アイスナイン結晶を舐めるモナ。
とかとか。
マンガにしたら面白いような気がします。
表紙を和田誠氏が書いていますがこの作品、挿絵を和田誠氏の絵でつければぴったりはまる雰因気ですね。
他、印象に残っている場面としては
セクシーで主人公の理想の女性として描かれていた、モナの最後の変容ぶり。
「愛」とは...ということをなんだか考えました。

誰が大統領になっても社会構造がかわらなければどうすることもできないところ。
ボコノン教的虚無感ですね、確かに世の中そうかもしれないなぁという気もしてきます。

ラストは世界が破滅的被害を受けている割にはかなり明るいラストで読後感もなにやらさわやかで、「おもしろさ」でさくさく読めてしまいますが、それだけではない「なにか」が心の中にわさわさと残る作品です。

間を置いてまた読まないと感想がまとまらなさそうです。

SF度はかなり薄いですけれども。

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