拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

『大日本人』観てきた

2007-06-11 18:20:54 | 映画
行って来たぜぇ、名古屋の新名所「ミッドランドスクエア」。そして5階の「ミッドランドスクエアシネマ」で松ちゃんの映画、『大日本人』を見てきたぜ。いやぁ、良いなぁ、ミッドランドスクエアシネマ。ロビーの居心地がとても良い。キャラメル味のポップコーンの匂いが充満してて癒される。座席は全席皮張りで妙にリッチ。座り心地も抜群。これならつまんない映画だったとしてもでも退屈せずに過ごせるね。音響も良いからハリウッド大作とか観たら大興奮できるんじゃなかろうか。次回映画観る時も絶対ここに来よう…。
で、『大日本人』。『パイレーツオブカリビアン』みたいな娯楽大作観る時と比べて、やっぱり嫌でも身構えてしまう。「松ちゃんの意図、何としてでも汲み取ってやる!」みたいに。あぁ、純粋に楽しめないや。「評論家でもないのになんで解釈すること前提に映画観てんだろう…」と、自分でも嫌になる。でも仕方ない。あの松本人志が撮った映画なのだから…。というわけで以下、感想文。ネタバレは無いけど「観るまで一切の情報を入れたくない」って人は気をつけて。

『大日本人』には所謂「シュールな笑い」なんてものは存在していないと思う。故に観た後で「あんまり笑えなかったな。私、松ちゃんのシュールな笑いが理解できなかった…」と思うのは多分勘違い。この映画で笑えなかったということは、「哀愁が漂わなければ笑いは宿らない」という、これまで松ちゃんが作り出して来た殆どの作品に共通するテーマが、自分の笑いの好みにそぐわなかったということだろう。主人公が住む枯れた住居、良かれと思ってやっているのに誰にも認めてもらえない空しさと苛立ち、思い通りにいかないやるせなさ、全編に漂う貧乏くささ。ここに笑いを見出せなければ「退屈な映画だった…」ということになってしまう。逆に、哀しさから生まれてくる笑いが大好きで、『ごっつ』の傑作コント「トカゲのおっさん」や、遠慮無しガチンココント作品集『VISUALBUM』収録の「ゲッタマン」で笑えた人ならば、『大日本人』もイケるだろう。急遽出品が決まったカンヌ映画祭ではなかなか好評だったそうだが、古今東西の映画を観まくってきたカンヌの人々にとって、初めて体験した「松本ワールド」は新鮮に映ったのだろう。沢山映画観てるからこそ素っ頓狂な世界観にもすんなり対応できたのかな?
それにしても、松ちゃん演じる映画の主人公、あれ…どう考えても松本人志本人じゃないか。彼の生き様そのものがあの主人公に投影されてる。何かアクション取るたびに賛否両論を巻き起こしてきた松ちゃん。お笑いファンから確かな称賛を浴びつつも、アンチ松本の心無い中傷とばかり向き合ってきた松ちゃん。お笑い番組が他のジャンルの番組と比べて常に軽く扱われることにいつも苛立ち、お笑いの地位の向上を夢みつつもどうにもならず、落胆する松ちゃん。デビュー以来、様々な形で日本のお笑い界に革新をもたらしてきた一方で、ダウンタウンに対して向けられてきた数々の否定的な意見たちがあの映画を作らせたとしか思えない。幼い頃から実家の貧乏ぶりをネタにしてクラスメイトの笑いを取るなど、ネガティブなものから笑いを生み出すことが原点である松ちゃん。それと同じ発想で作られた『大日本人』は、もう悲しすぎるぐらい「松本人志」そのものだ。

この先はネタバレ有り。



●この映画で一番笑ったのは、次々に登場する「獣」の造形かもしれない。どれもこれも秀逸すぎる。昔松ちゃんが、お菓子のおまけのフィギュアを作ってたのを思い出した。正直、映画監督としての才能よりも、異形の生き物を生み出す才能の方が際立っていたように思う…。

●名古屋が出てきて意表をつかれた!テレビ塔やオアシス21の傍での大日本人の激闘!最後、跳ルノ獣がビッグエコーとカラオケ館の間に挟まれてたが、あそこ通るたびに今後爆笑しそうだわ。

●松ちゃんはあらゆるインタビューで、「映画には『日本人もっと頑張れ』というメッセージを込めた」と語っている。その言葉通り、ラストは日本代表のヒーロー大佐藤がどうしても倒せなかった敵を、アメリカのヒーローたちがいとも簡単に倒してしまい、これまた大佐藤が空しさを感じるといった風に終わる。なるほど、「おいおい頑張れよ大日本人!」とエールの一つも送りたくなる。しかしアメリカのヒーローたちの姿形はどうみてもウルトラマンのパロディ。そしてウルトラマンといえば、日本が世界に誇る特撮のヒーローの一つ。どうみても日本の象徴。かのスピルバーグも、「日本の特撮がなければ『ジュラシック・パーク』はありえなかった」と語っているぐらいだ。それをアメリカの象徴に使うってどうなんだ?あれだと「今や日本文化は世界に広まってて、日本の影響を受けていないものなんて皆無だぜ」というようにも見える。あ、逆に、「日本文化がパクられまくりだぞ!頑張れ日本人!」ってことか?




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