拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

引き裂かれる男

2007-09-17 01:14:44 | 音楽
平井堅の新曲「fake star」を最近聴きまくっている。やっぱ平井堅はバラードではなく、こういう4つ打ちでノリの良い、しかし憂いのあるような曲が最高に似合うよなぁ。「瞳をとじて」とかは「歌上手いけど眠くなる曲だ~」という感じだったし。この新曲「fake star」とか「LOVE OR LUSTとかが平井堅の真骨頂だよきっと。声質的にバラードが求められるんだろうけど、バラードばっかりじゃつまんないっす。ずっと前に出たリミックスアルバムも、原曲よりも素晴らしかったと思う。
「fake star」、曲自体凄くよくできてるが、やっぱり歌詞に耳が行ってしまう。意味深過ぎやしませんか、平井さん。ヒット曲「POP STAR」と対になっているという「fake star」。私は初めて新曲のタイトルを知った時、「俺、昔爽やかに『ポップスター』宣言したけど、本当は全然爽やかじゃないんです。ドロドロなんです。ていうかスターってのは俺だけでなく、み~んな本性を世間に隠してる『作り物』なんだぴょ~ん」的な、暴露ネタ満載の内容の曲を想像したんだけど、曲をちゃんと聴くと、ちょっと違ったみたいだ。
確かに曲の大部分では、本性を隠さなければならないポップスター事情を書いているし、「化けの皮をはがしてやる」「who is a fake star?」「That's you」と、「お前は所詮フェイクスター。バレてるよ」と煽る。さらに「過去を切り捨て顔を変えても未来が忘れない」と整形手術批判、イメージ戦略や宣伝のために「プライベイトも切り売り」する行為も暴露し、「ポップスター=必死の努力で仕立てられた作り物」の図式を立てている。ただ、終盤にはこんなフレーズが登場する。「wanna be a pop star,but he's a fake star」…この「fake star」という曲は、ポップスターの裏側を書いたのではなく、ポップスターになりたくてたまらないのに、本性を隠してばかりいるせいでフェイクスターにしかなれない男の物語?「ポップスターになりたいよぉ」と爽やかに歌っていた「POP STAR」と対になっているというよりは、根本は同じ?曲の最後のフレーズは「who is a fake star? that's me」。堂々とフェイクスター宣言。でも本当は、いつ世間にバレるかわからない嘘を吐く事に疲れた。自身を偽らずに曝け出した上でポップスターになりたい…まぁ、違ってても、ただのポップスターの裏側の物語よりも面白いからいいや、個人的に。
「fake star」が偽りの自分をさらけ出したい欲求を歌った曲だとすると、面白いと同時にこんな曲を書いた平井堅をなんとなく心配してしまうね。何か、曝け出したくても出来ない爆弾でも抱えているんじゃないかって。…想像はつくけど。もちろん歌詞なんてアーティスト・平井堅の創作に過ぎないと言ってしまえばそれまでだけどさ、ミュージックステーションのHPにある、出演者たちの手描きのコメントが読める「アフターMステ」というコーナーで、平井はこんなことを書いている。「僕の引き際はいつがいいでしょうか?」…これは危機的状況だっ!引く気か?本気か?平井堅!?「フェイクスターを続けるのは無理。でもポップスターにもなれないなら…」とか、そういうことか!?……いかん、勝手に盛り上がってしまった。 
「fake star」のカップリングには、「POP STAR×fake star(MASH UP version)」を収録。二曲を合わせてリミックスしたものである。ポップスターとフェイクスターの間で引き裂かれる平井堅の苦悩を象徴しているような曲である。