拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

『ウラスマ』/SMAP

2007-09-01 16:04:49 | アルバムレビュー
せっかく書いたのでブログにも載せておこう。

『ウラスマ』/SMAP(2001.8.8)

1. 雪が降ってきた (ballad version) ★★
初期のシングル「雪が降ってきた」のバラード版。フルではなく、サビまでの1コーラスを収録。5人が順番にソロで、「彼らなりに」情感たっぷりに歌い上げている。テンポはバラードなので原曲より遅め。原曲のハジけたノリのほうが歌詞の内容に合っている気がする。

2. オレンジ ★★★★★
大ヒット曲「らいおんハート」のカップリングだったためか、ファン以外にも不思議なほど知名度がある。日本人のツボをつきまくった美しいメロディーと、スマップにしか出せないような拙くも切ないハーモニーが絡み合う、地味なる名曲。シングルベストに入る曲としては地味だが、『裏スマ』ではエース級。

3. 恋の形 (2001 version) ★
R&B風のアレンジが施されたスローバラード。落ち着いたトラックに不安定な歌唱力が乗り、聴いていてモヤモヤすること必死。スマップにはこういうタイプの曲はハードル高いような。ただ、香取がなかなか健闘している。

4. 言えばよかった ★★★★
黒っぽいギターのカッティングとリズムで構成された失恋ソング。ハネたベースが気持ち良い。タイトルからも連想できるだろうが、「チキショー。告白しときゃよかったよー」な曲。サビでは「言えばよかった」「言えなかった」が繰り返される。ラストでは英語で「I couldn't say you~」なんて爽やかに歌っている。そのまんまじゃないか。後半のブリッジの部分で、「は?これOKテイクなの?良いの?こんなのCDに残しちゃって…」と誰もが衝撃を受けるであろう中居のソロパートが収録されている。よくバラエティーなどで中居が披露するガラガラ声。あれ、半分ウケを狙ってやってると思ってたが、彼はあれに近い歌声をCDでも披露してしまっている。でもまぁそれが良いフックになっている…のか?

5. ひと駅歩こう ★★★
キムタク+香取で歌われるミディアムチューン。いつもと違う駅で地下鉄を降り、地上に出て街を歩いてみるか、というストーリーが描かれる。歌が上手すぎないぶん、こういう身近で日常的な風景の描写のような歌詞を歌わせたら天下一品のスマップ。誰もが認めるスターにも関わらず、一般人と同じ目線の世界にすーっと入り込めるのが不思議。全員30歳になってしまった今のスマップが歌いなおしたら違和感バリバリだろうが。

6. それじゃまた ★★★
ユニゾンで歌われる、非常にスマップらしい温かな応援ソング。ヒット曲「がんばりましょう」をミディアムテンポの落ち着いた曲に仕上げたような感じ。

7. 君と僕の6ヶ月 ★★
明るめのクリスマスソング風のアレンジだが、歌詞にクリスマスとの関連は一切なし。所々に照れくさくなるようなフレーズが散りばめられているが、アイドルの歌うポップスのなんたるかを知り尽くした歌詞だとも言える。

8. Major (2001 version) ★★★★
「オリジナルスマイル」カップリング曲をリメイク。前向きなメロディーをもつミディアム調の曲。デビュー以来、節目ごとに様々な事件(メンバー脱退、木村デキ結婚、稲垣メンバー事件など)に直面し、それを乗り越えながら成長してきた彼らによく似合う曲。

9. 泣きたい気持ち ★
元々は中居のソロだったらしいが、ここに入っているのは皆で歌ってるバージョン。歌い出しは中居が担当している。「君色思い」程の衝撃はないものの、音程がゆらゆらと揺れるスリリングなものに仕上がっている。「なぁきたぁ~い~きも~ちだ~よぉ~」ってお前、聴いてるこっちが泣きたくなるぞ。曲自体はありがちな失恋ポップス。

10. どうしても君がいい ★★★
青さ・若さがほとばしる正統派アイドルポップ。若さゆえの訳の分からないパワーが炸裂している。あまりにも青すぎて聞いてて恥ずかしいぞ。もう今のスマップには絶対に歌えないだろう。「カードがなくなるから」と、電話を途中で切るなんてまさに青春(一昔前の)。まるで決め台詞のように恥ずかしい歌詞が飛び交いまくる。ユニゾンで歌われてるが、脱退前は木村とツートップだった森の声が一番前に押し出されている。

11. かなしいほど青い空 ★★
これも失恋ソング。曲のタイトルが素敵だ。彼女がいなくなって、見るもの聞くもの全てがどうでもよくなってしまったような状態。そんな状態で見上げた空を的確に表現したタイトルだと思う。これも森の声が一番聞こえてきて、時代を感じる。

12. If You Give Your Heart ★
稲垣メンバーのソロ。なぜか全編英語詞。ちょいと退屈でありがちなメロディーのラブバラード。

13. BEST FRIEND (2001 version) ★★★★
森脱退や、稲垣メンバー復帰の場面を彩ってきたであろう、スマップ史上一二を争う泣きのバラード。この切なすぎる必殺メロディーを生み出したのは歌謡界の巨匠、筒美京平。くっさい歌詞のはずなんだけど、メロディーとアレンジ、そしてスマップなりの本気の歌唱がそれぞれの素晴らしさを高めあっているようで、奇跡のバランスを生み出している。中居のパートが一番叙情的に聴こえる点から考えて、歌の上手な人が歌ったら逆に萎えるような作りになってる気がする。素朴さが功を奏した。

14.Part Time Kiss★★★★
ロックからポップスまで、様々なアーティストの作品に顔を出す邦楽界の重要人物・CHOKKAKUアレンジによる軽快なダンスポップ。優雅かつ上品なシンセと緻密なリズム、程よくハネるベースが実に魅力的。

15. さよならの恋人 (2001 version) ★★
古き良き初期スマップの垢抜けないノリを感じる曲を新録。香取と草なぎの二人が歌っている。木村のやや勘違いも入った歌唱に比べたら、素朴ながらも張りのある香取の声の方が魅力的かもしれない。悦に入ってる感じもしないし。

16. Don't Cry Baby ★
光GENJI直系のアレンジ&ボーカル。前曲が結構なごめる曲だったから、いきなりこの曲が飛び込んでくると笑ってしまう。なぜこの位置にこの曲を…意図的か?とにかく初々しすぎる。

17. どんないいこと(Every You) ★★★
シングル「どんないいこと」の英語詞バージョン。ボーイズⅡメン風のソウルナンバーであるためこのバージョンが作られたのだろうか。アレンジなどはそのまんまで原曲との違いは歌詞のみ。原曲の歌詞がかなり良いのでこのバージョンの必要性はよくわからん。

総評★★★★
1991年~2001年に発表されたスマップのシングル以外の全楽曲の中からメンバーの多数決によって選曲されたという、タイトル通り裏ベストアルバム。歌っているのはスマップなので、歌唱力には期待出来ないが、曲自体は特に駄作は無い。というか粒揃い。歌唱力の低さが逆に曲の魅力を引き出しているというスマップならではの奇跡も何曲かで起きている。曲順は時系列がバラバラ。リリース順に並んでいたら、光ゲンジ風のダサめなアイドルポップから、ベテランミュージシャンを呼んで作られたトラックに乗せて歌われる良質なJ-POPへの変遷が手に取るようにわかって面白いのだが。彼らなりの歌唱力の成長も感じ取れるだろうし。垢抜けないアレンジと歌声が突然飛び込んで来て笑ってしまう、ということが多々ある。「なんか聞き覚えの無い声がするな」と感じたら、それはもちろん脱退前の森の声。地味ながらも良い曲が揃っているので、そういうのが聴きたい時におすすめ。あと、元気が無い時もおすすめ。「言えばよかった」と「泣きたい気持ち」の中居のソロパートを聴くんだ。