拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

アイドル冬の時代に咲いていた花

2007-08-03 15:52:59 | 音楽
最近youtubeで昔のアムロちゃん…SUPER MONKEYSの一員として頑張っていた頃のアムロちゃんの映像をよく見る。大ヒット曲「TRY ME」「太陽のSEASON」はもちろん、もっと遡ってデビュー曲「ミスターUSA」や「愛してマスカット」「PARADISE TRAIN」など、コアなアムロファンじゃなきゃ知らないような曲の映像も。いやぁ、本当にベンリですな、youtubeは。小学6年の頃、SUPER MONKEYS時代のアムロちゃんを知りたくて昔のCDを借りたことがあったけど、その時は昔の彼女がどんなヴィジュアルで、どんなダンスを踊っていたのかまでは知ることは出来なかったもの。あれから約10年経った今、若き日のアムロちゃんの映像を見る…不思議な感じだよ本当に。
さて、SUPER MONKEYS時代のディスコグラフィーをまず書いておこうか。

①恋のキュート·ビート/ミスターU.S.A. (1992/09/16)
②DANCING JUNK/レインボー・ムーン (1993/05/26)
③愛してマスカット/わがままを許して (1993/11/05)
④PARADISE TRAIN/悲しきブロークン・ボーイ (1994/07/20)
⑤TRY ME ~私を信じて~/MEMORIES (1995/01/25)

調べてみると(ていうかちょろっと検索しただけですが)、一口に「SUPER MONKEYS時代」と言っても、グループの形態はコロコロ変わっている。①は5人組の「SUPER MONKEYS」、②③は一人減って「SUPER MONKEYS 4」、④⑤は「安室奈美恵 with SUPER MONKEYS」という形態。そして「TRY ME」の後の「太陽のSEASON」で彼女は完全にソロとなり、「with SUPER MONKEYS」の表記は消える。しかし全てに共通するのは、センターに立ち、メインボーカルをつとめているのは全曲アムロちゃん、ということ。他の子に比べてルックス抜群に良かったし、かなり早い段階からアムロちゃんをソロとして売る計画が立てられていたんだろうな。歌も踊りもキレがある。SUPER MONKEYSはどの時期の映像を見ても、パっと見は冴えないアイドル風のグループなのに、アムロちゃんだけ歌はマジに上手いのな、昔から(歌に関しては口パクかもしれないけど、映像ボヤけてて判別しにくい。でも踊りは全員上手い。さすが沖縄アクターズスクール)。
youtubeにあるのは主にテレビ出演時の映像。中には懐かしの「スーパージョッキー」出演時と思しき映像もあり、「あぁ、本当に売れないアイドルだったんだな、昔は…」と感慨にふける。可愛くて歌もダンスも良いのになんで売れなかったのだろう?と不思議になるが、それはやはり時代のせいか?よくわかんないけど、90年代初期は「アイドル冬の時代」と言われるし。アイドルヲタクのライムスター・宇多丸は当時について「世間の男たちのアイドルへの熱は完全に冷め切っていた。誰もアイドルなんて好きじゃなかった」と振り返っている。
興味深いのは「愛してマスカット」辺りから、アムロちゃんの歌い方がなんとなく変わっていること。デビュー当時は、「沖縄アクターズスクール印!」というか、SPEEDやダパンプみたいに高い声を張り上げ、元気一杯に歌っているが、「愛してマスカット」からは、彼女の持ち味の低音もきっちり表現されている。思えばアクターズスクール出身で魅力のある低音を出せるアーティストって、男女問わずアムロちゃんぐらいしか思いつかない。「この子は将来絶対にもっと売れるはず。そのためにはさらに表現力をつけさせなくては」と見込まれ、元気印な歌声をボイトレで矯正されたのだろうか?
「安室奈美恵 with SUPER MONKEYS」という形態になり、名実とともにアムロちゃん一人がフィーチャーされ始めた「PARADISE TRAIN」などは、曲自体もなかなか素敵。それ以前の曲は垢抜けない感じなのだが、「PARADISE TRAIN」はリズムも「微妙に」ブラックミュージック的だし、曲調も歌詞も沖縄出身のアムロちゃんにマッチしている。大ブレイクしたバカユーロ「TRY ME」「太陽のSEASON」なんかよりずっといい曲。この曲を「スーパージョッキー」で歌う映像がyoutubeにあるのだが、これ、中々興味深い。時は1994年。邦楽界にブラックミュージックが全く深透していなかった時代だ。スーパージョッキーはアイドルが歌ってる後ろで出演者や観客が見てて、盛り上げるために手拍子してるのだが、手拍子と曲のリズムが合っていない。「合っていない」というのは「ズレてる」というワケではなくて。観客は歌謡曲のノリで普通にパンパンパンパン…とのん気に手拍子しているのだが、それでは「PARADISE TRAIN」のビートというか、ブラックミュージックのビートに合わないのだ。裏を取るために一拍休まなきゃいけないっつーか…。R&Bブームが吹き荒れた今のこの国ではもう誰でもこういうリズムは取れるだろうが、当時はそういう曲は歌謡曲の世界には殆ど無かったはず。だから聴く人が聴けば「え、何このアイドル、ちょっとカッコいかも?」と驚いたに違いない。実際先述の宇多丸は「PARADISE TRAIN」でアムロちゃんにハマり、続く「TRY ME」で「え、何故こんな時代遅れのユーロビート歌うの?しかも売れちゃったし…」と少々物足りない思いを抱いたそうな(でもファンをやめることは無かったらしい)。
「TRY ME」は個人的に全く好きではないが、突拍子も無いシンセがテラテラ鳴り響く典型的なバカユーロ曲なのに、アムロちゃんのダンスには一切「パラパラ」要素が無いっていうのは、今となっては凄いことだと思う。…ユーロビートなのにパラパラ踊ってないんだよ?

というわけで、昔のアムロちゃんの映像は結構面白いですよ、ということで、今日の記事終わり。