昭和30年代の企業のあり方から物語は始まる。
その会社は、ほとんど空を独占していた親方日の丸を背負った航空会社。名前は出してないが、もちろんどこのことなのかは、すぐにわかる。
公共性が非常に高いので、仕事に制約はおのずと出てくるが、滅私奉公的な労働は、戦後の日本で、徐々に見直されてきた。組合活動は活発化し、労働条件の改善を求める運動が起きたのは、当たり前のことだ。
そこで辣腕を振るい、社員のため、そして安全のため、会社のためと組合活動をする正論をぶつ奴は、会社側から当然のごとく嫌われる。
経営者にとって一番大事なことは何か。もうけること?大局と未来を見据えること?利用者の受益を考えること?従業員の生活の安定を図ること???
どれもが出来れば一番いいはずだが、そうはいかない。利害はぶつかる。どこかで折り合いをつけ、共存を図り、うまくやっていかなければならないのだ。出来ないことではない。出来るはずだ。ただ、難しいことには変わりない。
なんとか会社と折り合いをつけ、社員のため、はては会社のためにと運動をした恩地という男は、会社にとってうざいなんてモンじゃない。組合の委員長として活動をした結果、その報復人事として、海外に飛ばされる。
ただの海外ではない。飛行機が周航するどころか、まともな仕事すらない。まっすぐにおかしいことはおかしいと言い、正論を述べると、そうなってしまうのが、通るのが世の中だ。悲しいことに。
家族にも疎まれ、心血注いだ仕事は実らず、母の死に目にも会えない・・・。一言会社にわびを入れれば、日本に帰れる。一言わびればいいのだ。それだけだ。でも出来ない。自分がやってきたことは間違いない。会社のためを思ってやったことなのに、誰にわびるというのか。
長い年月たらい回しにされて、やっと日本に帰ってきたとたん、大事故が起きる。5百数十人を乗せて、ジャンボは墜落した。未曾有の大惨事だ。ぼろぼろになった会社がとるべき道は、どのような道のりであるべきなのか・・・・。
現実と虚構を取り混ぜて、えぐるように、世の中の落としてきたもの、膿、後回しにしてきたつけ、人がエゴが作り上げた来たものを描き続ける、山崎豊子の紡ぎ出す物語。
いくら最後に「登場する団体、人物名はフィクションです・・・」と言われたって、はいそうですか、とうなずく日本人はいないだろう。某航空会社が訴えを起こす!というのもわかる。
だったら、訴えを起こしたらいいと思う。どこがおかしくて、どこが間違いで、どこが自分らの癇にひっかっかのか?そこをきちんとした場で明らかにし、多方面から意見が述べられたら、おもしろいんだけどなあ。
はて、本が出たとき、訴訟その他、そこまでの話にはならなかったと思うが、これが映画になると、世間の耳目の集中度が、いかに影響力が大きいか!映画の力を感じさせる。
時代は、組合活動活発化の昭和30年代から、その後の高度経済成長で、日本の地位が徐々に上がっていく。その後に学生運動が華やかになって、共産主義の氷の時代に入る。その時代を痛いまでの誠心な気持ちで駆け抜けた男を軸に、日本という国のあり方を問うていた。
贅沢な配役陣に、たっぷりと時間をかけ、正統派の日本らしいまじめな映画をなんだか久しぶりに見たような気がした。途中で休憩が入るが、長さは感じない。日本人なら、頷きながら、眉をしかめながら、理解しながら見ることができる。
起きてしまった問題や事件は、いくらとんでもないことであっても、とり返すことはできない。だったら、我々にできることは、なぜ起こったのか、二度と起こさないように、事件を検証し、学ばなければならない。そうでなければ何の意味もない。公共に責任を持つ企業は、肝に銘じているのだろうか。
映画は、そんな問題を提起し、日本に対する叱咤激励のように感じた。
三浦友和の結構ないやらしさが映画のキー。いいですね。香川さん初め、役者さんの演技を見てて、こういった大作に出てるときと、アート系の映画に出てるときと、ちゃんと使い分けてるんだなあということを改めて感じた。
長さに躊躇なさってる方は、大丈夫。長さはほとんど感じさせずに見れます。
◎◎◎◎
「沈まぬ太陽」
監督 若松節朗
出演 渡辺謙 三浦友和 松雪泰子 鈴木京香 石坂浩二
その会社は、ほとんど空を独占していた親方日の丸を背負った航空会社。名前は出してないが、もちろんどこのことなのかは、すぐにわかる。
公共性が非常に高いので、仕事に制約はおのずと出てくるが、滅私奉公的な労働は、戦後の日本で、徐々に見直されてきた。組合活動は活発化し、労働条件の改善を求める運動が起きたのは、当たり前のことだ。
そこで辣腕を振るい、社員のため、そして安全のため、会社のためと組合活動をする正論をぶつ奴は、会社側から当然のごとく嫌われる。
経営者にとって一番大事なことは何か。もうけること?大局と未来を見据えること?利用者の受益を考えること?従業員の生活の安定を図ること???
どれもが出来れば一番いいはずだが、そうはいかない。利害はぶつかる。どこかで折り合いをつけ、共存を図り、うまくやっていかなければならないのだ。出来ないことではない。出来るはずだ。ただ、難しいことには変わりない。
なんとか会社と折り合いをつけ、社員のため、はては会社のためにと運動をした恩地という男は、会社にとってうざいなんてモンじゃない。組合の委員長として活動をした結果、その報復人事として、海外に飛ばされる。
ただの海外ではない。飛行機が周航するどころか、まともな仕事すらない。まっすぐにおかしいことはおかしいと言い、正論を述べると、そうなってしまうのが、通るのが世の中だ。悲しいことに。
家族にも疎まれ、心血注いだ仕事は実らず、母の死に目にも会えない・・・。一言会社にわびを入れれば、日本に帰れる。一言わびればいいのだ。それだけだ。でも出来ない。自分がやってきたことは間違いない。会社のためを思ってやったことなのに、誰にわびるというのか。
長い年月たらい回しにされて、やっと日本に帰ってきたとたん、大事故が起きる。5百数十人を乗せて、ジャンボは墜落した。未曾有の大惨事だ。ぼろぼろになった会社がとるべき道は、どのような道のりであるべきなのか・・・・。
現実と虚構を取り混ぜて、えぐるように、世の中の落としてきたもの、膿、後回しにしてきたつけ、人がエゴが作り上げた来たものを描き続ける、山崎豊子の紡ぎ出す物語。
いくら最後に「登場する団体、人物名はフィクションです・・・」と言われたって、はいそうですか、とうなずく日本人はいないだろう。某航空会社が訴えを起こす!というのもわかる。
だったら、訴えを起こしたらいいと思う。どこがおかしくて、どこが間違いで、どこが自分らの癇にひっかっかのか?そこをきちんとした場で明らかにし、多方面から意見が述べられたら、おもしろいんだけどなあ。
はて、本が出たとき、訴訟その他、そこまでの話にはならなかったと思うが、これが映画になると、世間の耳目の集中度が、いかに影響力が大きいか!映画の力を感じさせる。
時代は、組合活動活発化の昭和30年代から、その後の高度経済成長で、日本の地位が徐々に上がっていく。その後に学生運動が華やかになって、共産主義の氷の時代に入る。その時代を痛いまでの誠心な気持ちで駆け抜けた男を軸に、日本という国のあり方を問うていた。
贅沢な配役陣に、たっぷりと時間をかけ、正統派の日本らしいまじめな映画をなんだか久しぶりに見たような気がした。途中で休憩が入るが、長さは感じない。日本人なら、頷きながら、眉をしかめながら、理解しながら見ることができる。
起きてしまった問題や事件は、いくらとんでもないことであっても、とり返すことはできない。だったら、我々にできることは、なぜ起こったのか、二度と起こさないように、事件を検証し、学ばなければならない。そうでなければ何の意味もない。公共に責任を持つ企業は、肝に銘じているのだろうか。
映画は、そんな問題を提起し、日本に対する叱咤激励のように感じた。
三浦友和の結構ないやらしさが映画のキー。いいですね。香川さん初め、役者さんの演技を見てて、こういった大作に出てるときと、アート系の映画に出てるときと、ちゃんと使い分けてるんだなあということを改めて感じた。
長さに躊躇なさってる方は、大丈夫。長さはほとんど感じさせずに見れます。
◎◎◎◎
「沈まぬ太陽」
監督 若松節朗
出演 渡辺謙 三浦友和 松雪泰子 鈴木京香 石坂浩二
>日本に対する叱咤激励
ほんとうに僕もそう感じました。
政権が変わったのもタイミングが良かった。
なんか変化を感じます(産みの苦しみはあるでしょうけど)。
豪華な役者陣、しかし皆さんさすがの演技でした。
ほんと,フィクションですって言われても
誰もそうは思いませんよねぇ。
訴えるもんなら訴えて白黒はっきりつければいいよねぇ。
某航空会社は現在も別のことでニュースで騒がれてるし
なんだかとってもタイムリーな公開になった気もします。
真摯な映画でしたね~
謙さんはじめ,俳優さんたちの気迫が伝わってきました。
三浦友和の悪役もなかなか似合ってた!
訴えたらsakuraiさんの言うとおり、公の場に
出て行かないといけないから。
だから姑息にも社内報なんぞで、作品の悪口を
書いて出すという、企業としてその姿勢はどう
なんだと。
もっとも、そんな企業でも大スポンサー様で、
その顔色を伺って製作委員会から逃げたテレビ
局や広告代理店も腰抜けなんですが。
全ての人から認められる作品ではないし、そんな作品できるわけはないけれど、ある一面の真
実ではあるわけで、そこと真摯に向かい合えな
い時点でもう終わってるかなと…。
渡辺謙さんは病から立ち直って演技に凄みがで
た役者さんだと思うのですが、今回の演技も素
晴らしかったですね。角川映画と渡辺謙さんと
いうと、丁度「天と地と」の主役に抜擢された
時に白血病で降板したのを思い出しました。
素晴らしい役者になって恩返しといったところ
でしょうか。
書き方には、いろいろと異論もあるようですが、だったら書いてみろ!と言いたくなります。
日本がまともな国になるように願ってやみません。
でも、実際はむりなんでしょうね。
はっきりと、白黒つけた方がいいと思うのですが、そうならないのが日本かな。
再建もなかなか大変そうですが、どうせ再建するなら、徹底的に膿をだしてもらいたいですわ。
役者さんはどなたも役者魂が伝わる、気迫を感じました。
悪役が憎々しいほど、引き立ちますが、みなさんすごかったですね。
うーん、いかにも日本の会社だなあ・・と思ってしまう悲しさよ。
山崎豊子の話を見たり、読んだりしてると、眉間にどんどんとしわが寄ってくるのですが、いかにもの日本で、なんてさもしい国なんだろうと、背中が寒いです。
もっと、お金じゃなくて、豊かな国になれないんだろうか。
ま、こういう映画が作れて、多くの人が見に来られてる!というのを見ると、まだ大丈夫、と思います。
渡辺謙さんの白血病というと、ちょうど同じころの夏目雅子さんを思い出します。
渡辺謙さんの場合は、アメリカで見つかったのが、治った決めたじゃなかったか!なんて言われましたよね。
ま、あの頃から素晴らしい役者さんでしたが、こういう役が見事に似合います。
労働環境や改善を強く主張し辛い時代であるらしく、組合費で積み立てた
活動費が相当貯まっているようです。
ところが、J○Lの組合は自分たちに都合の良い主張をしている風に映ります。
自分は、正規雇用ではないので、組合にはずっと無縁ですが、パート労働者の環境も、組合のおかげで向上したんだなあと、ありがたく思ってますよ。
再建の道は過酷そうですが、どうなることやら。
駄目になる企業にいるタイプの人間です。客のことを見ていない。
現実の話では、デルタとアメリカンの対決に注目です。
香川照之は、同時期にカイジも公開されていますが、やはり出来る男です。変な顔だけど・・・
いい年のとり方してるなあ、と思います。
ぜひとも、企業の方々には、居住まいを直してもらいたいとこですが、きっと見てもらい方は、見ないんでしょうね。
香川さんは、ちゃんとそれ向きの演技を使い分けてる!うまいです。