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霜花店(サンファジョム) 運命、その愛

2010年05月24日 | さ行 外国映画
高麗王朝末期、高麗は元の属国となって、はや100年。
朝鮮半島というのは、昔から小さな半島の中で、さらに小さな国に分裂していた。互いの存在におびえ、大国の動向をうかがい、あっちに寄り、こっちに寄り、常に国の存亡を憂いにしなければならなかったのが、朝鮮半島の君主であった。

長いこと分裂していた半島を統一したのが、7世紀の新羅であったが、9世紀終わりごろにまた分裂。その後、918年に高麗が建国される。400年以上続く国家であったが、その長い年月は、苦難の連続であった。

10世紀初期、中国では、唐が滅び、武断の横行によって、五代十国という短期間で王朝が次々と変遷する謀略の時代を迎える。そのあと、宋が統一し、武断の専行を改め、文治政治を始めるが、軍事力の弱い中国は、周辺の国家からなめられる。

契丹族や、タングート族や、女真族など、いわゆるモンゴル系の民族が、次々と建国し、中国を脅かす。中国が大国の軍事国家として君臨すれば、周辺はそれに従うが、中国の国力が弱いと、周りが活発化するのが世の習いだった。

では、朝鮮半島はどんな立場をとっていたか。
朝鮮半島は、太古の昔から、中国を兄として尊敬し、かの国の制度をたっとび、真似し、礼を尽くして、中国に追随する。ずっと、そうやって生きてきた。よって、中国は朝鮮半島に攻め込んで、自国の完全な支配下にいれる必要はない。時折、どうしても征服したいと思う主君もあらわれたが、朝鮮半島が完全に中国に征服されたことはない。

しかし、周りの国にそんな遠慮はない。中国が攻め込まないのなら、自分らが朝鮮を手に入れればいい。そして、かの契丹やら、女真やらが、朝鮮半島に攻め込んで、征服しようとした。平身低頭、それらの国に頭をさげ、なんとかやり過ごした後の最後にやってきたのが、モンゴルだった。

容赦も遠慮もない。中国が朝鮮に対して、弟のように思う優しさなど必要ない。朝鮮を手に入れた後、そこからさらに東に手を伸ばしたいモンゴルにとって、朝鮮は格好の前線基地だ。そうやって、朝鮮半島の人間を駆り出して、我が国に攻めてきたのが元寇だ。

二度も攻めてきて、あれだけの大帝国がなぜ、吹けば飛ぶような日本を破れなかったか?それは神風なんかよりも、兵士の士気が問題だったといわれるのはそこだ。駆り出され、祖国を蹂躙された朝鮮の兵士が、なぜに元のために戦おうとするか。本気で戦うわけがない。

元寇の失敗で、フビライは日本はとりあえず後回しにして、大陸を固めようとした。宋を滅ぼし、中国を元として、モンゴル帝国の中心とする。そして、朝鮮は完全なる支配下に置く。その屈辱の朝鮮の王が、高麗の王になる・・・・。


前置きが長すぎたが、このころの朝鮮半島の情勢と王の立場、元と朝鮮の関係、中国と朝鮮の関係ではない別の関係。王であっても強い権限はない。元王朝の顔色を常に窺ってないとならない弱い立場が、たとえば男色に向かったのかも・・・。名ばかりの王に対して、臣下たちは、忠誠を誓おうとしない。

朝鮮半島は、トップの指導者の力が弱いのはある意味伝統で、王を廃嫡したり、重臣たちが実権を握っていたり、賄賂が横行するというのは、昔から大国の傘の中に入り、強力な力を王が持っていなかったから・・・・ということだ。

そんなことを念頭に置きながら、この映画を見ると、また一層興味深い。
モデルになったのは、高麗末期の恭愍王(きょうびんおう、1330年 - 1374年)らしい。この王は、やはり美童を集め、自分の親衛隊のようなものを作っていたということだ。その中には、王のお相手を務めたものもいたとか。さらに、この王は、晩年失政を招き、宦官に殺された。

その宦官がどのようにして、男を捨てるに至ったのかはわからないが、さもありなん・・・の話だ。

さて王は、自分の親衛隊として、幼いころから美童を集め、愛でていた。どうしても女を愛せない王。王妃は、元のお姫様だ。このまま後継ぎを作れないとなると、王の座まで元の血筋のものに奪われてしまう。



そこで苦肉の策として考え付いたのが、親衛隊の中でも自分の一番愛する隊長・ホンニムに王妃の相手をさせること。彼の子供だったら、自分の子供として愛せる。天に背いた策は、思わぬ結果を生んでしまった。

はじめは、遂げることができなかった二人だが、回を重ね体を重ね、体だけでなく、心も通じあってしまった。王妃を愛するということは王に背くことになる。それまで、王のためだけに生きてきたホンニムの心は、王妃への思いで張り裂けそうになる。

いつなんどきでも王のもとにいたホンニムがいない。嫉妬に駆られる王は、自分に対して謀反を試みようとしていた臣下を、王妃の兄とともに、皆殺しにしてしまう。何の疑問も持たず王の命に服していたホンニムの心に迷いが生じてくる。

王妃とホンニムの関係を知った王は、ホンニムに糺す。「一時の情欲だな?」「そうです。一時の情欲です・・・」



ホンニムは自分の心を偽って、僻地に赴任しようとしたとき、思いがけない王妃の知らせを聞く・・。もう逢わないと決めた・・・・。でも、最後に王妃に一目会いたい。そして、最後の逢瀬のそのとき・・・・・・。


ツウことで、さすがにR-18!!生唾ごっくんものでございます。まったくもうですが、ここまでがんばられると、見る方も楽しむしかないでしょう。

大変な人気らしいチョ・インソン君。あんまり知らなかったので、新鮮に見れましたが、なかなかの立ち姿!さすがモデル出身とかで、佇まいがいい。腰使いも素晴らしかったですが・・・。アクションも迫力満点。叶わぬ思いに、張り裂けそうになる感じが痛いほどに出てた。よろしいのでは。

で、ばかっぷり炸裂の王もよかったですね。お久しぶりのチュ・ジンモでしたが、「MUSA」に続いて、高麗づいてますな。なんだか見てると、ジャッキー・チェンの若い時に見えてくるのですが、剣さばきはさすがにうまい。

で、お見事だったのが、王妃役。面ざしは童顔なのですが、なかなかのえろっぷり。ニップルがびんびんに立っておりましたな。そこは大事です。その辺が「渇き」の新人女優さんとのエロさに大きな違いでしたな。一体、おばさんはどこ見てるんだ!と、怒られそうですが、エロさを出すんなら、そこまでの覚悟がないと。

さて、朝鮮半島の歴史は、新しい王朝に変わったり、政権が交代すると、前政権を完膚なきまでに叩きつぶし、なかったものであるかのようにリセットしてしまう。高麗の後の、李朝朝鮮によって、高麗王朝は、徹底的に叩きつぶされる。貴重な高麗青磁なんか、めちゃめちゃにされたという。

李朝の時代のものは、なんどか見てきたが、高麗が舞台というのは、その辺からもとっても興味深かった。エロさも十分、政治的にも面白いし、目の保養もたっぷりと、結構充実した映画だったのですが、長いレビューですいません。

◎◎◎◎

「霜花店(サンファジョム)運命、その愛」

監督・脚本 ユ・ハ
出演 チョ・インソン チュ・ジンモ ソン・ジヒョ シム・ジホ イム・ジュファン ヨ・ウッカン ソン・ジュンギ チャン・ジウォン


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10 コメント

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Unknown (KLY)
2010-05-24 22:06:14
あ、解る解る!確かにチュ・ジンモって若い時のジャッキーににてますよね!私の中では『カンナさん大成功です!』のイケメンプロデューサーなんですけど。(笑)
ちゅーかこの2人、カッコイイですねぇ。それもあんまり韓国人ぽさを感じないハンサムさ。なるほどモデルなんだ、道理で背も高いし。
私は韓国の時代劇は初めてだったんですが、普通にアクション活劇として、カンフー映画的に魅入っちゃう部分もありました。
ヨン様の時代劇に夢中になるおば様方の気持ちが少しだけ解った気がします。
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良かったです~ (マリー)
2010-05-24 22:25:20
こんばんは~~♪
私も観ました~。
実は途中までレビュー書きつつ、完成してない作品です~。

sakuraiさんの詳しい説明で、なるほど~の思いです。
そういう背景があったのかぁ。
チョ・インソンはこの映画の後兵役に就きましたね~。空軍とか・・・
いい身体でした。。。きっと全裸も多いし~かなり鍛えたのかな?
女優さんも確かにエロかったです。顔立ちと全く違うナイスなシーンを見せてくれましたね。
ストーリーも好みで、私の初韓国映画として合格点でした(ってか、韓国映画デビューにしては濃すぎって言われたわ)
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>KLYさま (sakurai)
2010-05-25 08:23:28
やっと見れました。指折り数えて待ってたんですよ。で、夜に一回だけの上映なもんで、いくのが 大変。ま、夜一回だけというのもわかりますがね。
「MUSA」で、ジンモさん、高麗の将軍役やってます。結構横暴だけど、かっこいい役。
一時、低迷してたみたいですけど、復活のようですね。
ペさんは、やっぱめがねがないと、どうもしまらない・・。「太王四神記」で、眼鏡がないもんで、なんか変だったのですが、見てるうちに慣れてきました。
でも、おばさまたちが虜になったのは、「冬ソナ」だと思いますよ。
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>マリーさま (sakurai)
2010-05-25 08:27:53
ついつい余計なことを書いてしまいましたが、ただのR-18映画じゃなくて、時代背景がすごく面白い!って思ったんですよ。
「MUSA」も世間の評判はいまいちでしたが、高麗と元と明との関係が絶妙に描かれてて、こういった時代物、大好きです。
おまけにいい男は見れるしねえ。
韓国の俳優さんって、とにかく鍛えるみたいですね。出始めは細身の俳優さんだったのに、いつの間にかみんなマッチョになってる。
その辺の自分に対する徹底ぶりも見ごたえありますよね。
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こんばんは~ (なな)
2010-10-05 22:18:18
sakuraiさんの詳しい説明,とっても面白いです!
なるほど~・・・ですね。
で,モデルの王は実際に美男親衛隊を持ち
宦官に殺されたと!
その宦官のいわれといい,よくぞここまで
史実をもとに脚色したなぁと感心!
内容だけでも深い物語だと思っていましたが
それだけではなくよ~く考えて作りこまれた作品なんですね。

チョ・インソン君は「ラブストーリー」で観たことがありますが
長身はそのままでも,お顔など今よりはちょっとふっくらしてて
今の方がずっとスレンダーでセクシーですね。
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>ななさま (sakurai)
2010-10-06 15:53:20
えーー意外ですか。
こういうの結構好きですよ。
韓流もいっぱい見てるし、やはり歴史がからんでくると、必見です。

あまりの面白さに、ちょっと王様のことを調べてみましたが、どうやらそうらしいです。

李朝朝鮮ものは結構あるんですが、高麗ものって、あんまりないんですよね。その辺のいわれも面白いんですよね。
高麗の歴史は、李朝のときに徹底的に壊されてしまいましたから、高麗ものはまた垂涎です。

チョ・インソン!まったく知らなかったのですが、これで赤○急上昇となりました。立ち姿がお見事でした。
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こちらにも^^ (latifa)
2011-01-13 22:45:28
今日、この映画を見てしまいました^^
全く期待してなかったのに予想以上に面白く、2時間越え、全く飽きることなく集中して見てしまいました(^^ゞ

>朝鮮半島は、トップの指導者の力が弱いのはある意味伝統で

>モデルになったのは、高麗末期の恭愍王(きょうびんおう、1330年 - 1374年)らしい。この王は、やはり美童を集め、自分の親衛隊のようなものを作っていたということだ。その中には、王のお相手を務めたものもいたとか。さらに、この王は、晩年失政を招き、宦官に殺された。

さすが歴史の匠sakuraiさん!お詳しい☆
そうなんですかー、ちょっと色々調べてみたくなっちゃいました。

後で感想書いたらまたTBさせてください^^
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結構な (バラサ☆バラサ)
2011-01-13 23:01:43
娯楽作品になっていました。
同時上映のクォン・サンウの奴が目当てだったので、こっちはノーマークでしたが、こちらのほうが面白かったですね。

やはり、モデルいたのですね。勉強になりました。
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>latifaさま (sakurai)
2011-01-17 08:29:06
それほど期待を持たずに見ると、衝撃でしょうねえ。
私は、来るのを待ってて、結構期待してたんですが、それでも十二分に楽しみました!

今、BSで「イ・サン」を見てるのですが、70話以上になりましたが、王って策略の道具になってて、尊敬は受けつつも、重臣たちが、いつも何やら画策してる・・。
その辺の宮廷のあり方とか、興味深く見ました。また見たくなった!!
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>バラサ☆バラサさま (sakurai)
2011-01-17 08:30:58
娯楽としても十分面白かったです。
それ以外にも!!
クォン・サンウって、あんまり好きじゃないんですよ。
なもんで、彼の映画には触手が伸びないのですが、こっちは当たりでしたね。
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