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『父と暮らせば』&黒木監督トーク

2005年07月21日 | た行 日本映画
7月16日(土)、表記の映画上映と、その映画を撮った監督のお話が聞けた。黒木監督は穏やかで、どっしりとした、しなやかなおじいさんだった。戦後レクイエム3部作と、勝手にちまたで呼んでる「tommorow/明日」と「美しい夏 キリシマ」、そして「父と暮らせば」。戦争が舞台だが、悲惨な戦争のシーンなどはない。戦争の中でも市井の人々は生きていた。戦争が起きていると言う事が日常であり、その日常を生きていた。だから、その日常を描くのだ、とおっしゃっていた。なるほど。

今回の「父と暮らせば」は、ご存知井上ひさしの戯曲を映画化したものだが、宮沢りえと原田芳雄のまさに競演である。なぜ、宮沢りえを採用したのかと言う問いに対する答が面白かった。地味な映画で、派手さはない。そんな地味な映画に、もっと地味な俳優を使った日ニャ、とても人は入らない。そこで、せめて俳優は有名どころを、と言う事で、若手のスタッフに、最近の若手俳優の中から、人気の俳優をピックアップしてもらったそうな。そこで№1にいたのが、女優は宮沢りえで、男優は浅野忠信。

んじゃ、と早速一番上から交渉を始めたとか。でも、監督、宮沢りえと言っても、実力はあるのか、本当に出来るのか、不安な気持ちで臨んだらしい。りえちゃん、二つ返事で「OK!」。受けた理由がえらい。「今の日本に対して、今の世の中に対して、言い知れない不安を感じている。漠とした不安に対して、この役をやる事によって、何かをつかめるのではないか、確固たる物を見つける事が出来るのではないか!」と言うようなことで引き受けたらしい。やるなぁ、りえちゃん。

とにかく、真面目で真摯で周りを張り切らせる人柄だそうな。うーん、すごいゾ、りえちゃん。

戦争の時代を生き、無自覚に生きてしまった。その事に対する責任。広島を生き抜いた人にも、生き残ってしまったと言う共通の気持ち。死ぬのが当たり前の状況で生き残ってしまった自分達。その事を描きたいとおっしゃっていた。うーーん、深い。

さて、映画は2回目の鑑賞なので、こっちの気持ちに余裕があってみた。ここから盛り上がるぞ、次の父のセリフを心して聞かねばならない、次の娘の気持ちだ・・・というような感じ。捉え方は前回とほぼ同じだったが、いかんせん、残念だったのは、音響がイマイチ。広島弁で少々わかりにくいセリフが、音の割れがあって、よく聞こえなかった。2回目の私は何を言っているかはわかったが、娘がセリフがわからなくて、よくわからなかったと言う。そして、画と音が合ってないのが、違和感をそそる。それを越えてあまりある映画だが、ちょっと残念だった。

それを割り引いても、いい映画には変わりない。より多くの人に見てもらいたい。中央公民館azのホールがいっぱいだった。後で聞いたが、土曜日、封切映画もいろいろある中、市内の映画館はがらがらだったらしい。さもありなん。


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