迷宮映画館

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神弓  ・・・ちょっとだけお勉強付き

2012年11月30日 | か行 外国映画
冒頭、いきなりの追っかけっこ!何が何やら、とんとわからぬままに敵方に捕まりそうになった兄妹を助ける矢!弓の達人がいるようですが、結局は多勢に無勢。追っ手にやられてしまう。それを目の当たりにした兄は、妹を守ることと、この世の無情を知るのであります。父から受け継いだ家宝の弓を手に・・。

父は国家に楯突いた反逆罪で断罪されたようですが、その辺の事情をもちょっと詳しく描いてくれてもいいのではと思うくらいのおおざっぱな描き方。兄妹が身を寄せたのは、父の古くからの友人でしたが、逆賊の子供らを育てるってのは、かなり大変なことであったと。

さて、時は過ぎて13年後。兄・ナミはいっぱしの武人となり、妹はジャインは、美しい娘へと成長しました。二人をかくまってくれた家の息子・ソグンは、二人と本当の兄弟のように育ったのですが、ジャインを娶りたいと!逆賊の娘などと気にすることもなく、やっと幸せになれる・・・・と思った人生最良の結婚式の日!朝鮮の人々は、恐怖のどん底に落とされる。清の侵攻でした。

朝鮮の人々をなぎ倒し、次々と捕虜にし、逆らう者は容赦なく殺していく残虐な清の軍隊。ジャインもソグンも捕らわれてしまったのでした。兄のナミは、妹の幸せを見届けると、家を出て、一人で旅に出たところ。妹の行方は??!!この国はどうなる・・・!!一人立ち向かうナミの手にあるのは、父から譲り受けたあの弓!さあて、妹を助け出すことができるか。。。

ということで、あとは後半、ひたすら追ってくる清側の精鋭と、ナミの神業のような弓との対決であります。見えない敵を射抜く弓矢!!に、追ってくる辮髪の清の兵士とのやり取りは、まるで「ラスト・オブ・モヒカン」そのもの。今年見た「第九軍団のワシ」も思い出されました。ナミの曲射といわれる鋭く飛んでいく矢と、清側の迫力ある長弓の破壊力の対比がなかなかに面白いです。

きりきりと弓を引き絞り、最後にきゅっとねじって、はっと放つ瞬間が見所。ヒーローはそう簡単にはやられませんが、かなりの超人ぶりは目をつぶるとして、大軍が攻め込んでくる迫力は圧巻。ものすごい地響きがなって、何が起きたのか!何の罪のない、平和に暮らしていた人々に突然降ってわいた悲劇っていうことがよくわかります。

さて、主人公を演じたパク・へイル・顔的にはちいと地味ですが、演技力、存在感は折り紙つき。前回見たのは「黒く濁る村」のさらっとした現代青年でしたが、この武人の役もさすがにうまい!今の韓国の演技派では、指折りの若手。それが存分に出ていたように思います。

と、何と言っても清側の猛将・ジュシンタ役のリュ・スンリョン!いろいろとチョイ役で、様々な役をこなしますが、今回もぴったりと辮髪がはまってる。そして、現在放映中、「王女の男」のヒロインやってるジョインのムン・チェオン。李朝時代の雰囲気しか考えられない感じだわ。似合ってます。ちょいと気が強くって、人の言うこと逆らうお姉ちゃん!


ここからちょいとお勉強。

さて、いわゆる丙子の乱というものですが、世界史的にそんなに有名なもんでもないです。年表に一行、【1637年-清は朝鮮を服属させる】くらいなもんで。でも、その陰には、これだけの朝鮮の人々の悲劇があったんだということを認識しなおした次第です。

ちょいと清の起こりについて。

清はご存じのとおり、漢民族の王朝ではなく、異民族である女真族の王朝でした。あの独特の髪型が特徴。

ニコちゃんの辮髪



(「孫文の義士団」より)


なんであんな変な髪形をしていたかというと、騎馬民族であった女真族は、馬に乗るときに前髪が邪魔にならないようにそり上げていたと。なので、辮髪も初期のころは、頭頂部までそり上げるのではなく、額をきれいにしていた程度だったようです。それがエスカレートしていって、だんだんとあんな感じになっていったのであります。兵士の中に、前髪たらしたのがいましたが、あれはないでしょう。

宋の時代(960~1279)に一度華北を占領して、金という国を作りましたが、最終的には、あのモンゴル帝国にやられて消滅。その後、また中国に侵入してきて、明の時代に(1368~1644)二回目の金、すなわち後金を成立させます。それが清の太祖・ヌルハチです。

徐々に勢力を拡大し、明を追い詰め、二代目のホンタイジの時に清という国名に変えます。それが1636年。この丙子の乱の前年です。朝鮮の人々が「清が攻めてきた!!」というほど、認知度は高くなかったと思いますが、中国全土を占領し、明に服属していた朝鮮も清の勢力下に入れなければならない!ということだったのです。

しかし、朝鮮は長年明に服属してわけで、清が「臣下になれ!」といっても、「うん」というわけにはいかない。あくまでも明に従い、清に逆らったためにホンタイジが激怒!この丙子の乱がおきたということです。

馬を駆使し、八旗軍と言われる精鋭部隊に一気に攻め込まれ、あっという間に朝鮮は敗北。多くの人が捕虜になりました。清の支配下に入り、冊封体制に組み込まれ、清と君臣関係を結ぶことになる。それは李朝朝鮮の間、ずっと続き、何かと言えば清の顔色をうかがうと言った、李朝の王様の特徴となり、はては日清戦争の原因にも結び付きます。

いくら王様と言っても、常に清の許諾を得なければなならず、王としての権威は丸つぶれ。国の王なのに、№1ではない。その上には清というでかい国があって、臣下も国民も頭を下げながら、心の中で(へ、お前だって清に頭下げてるじゃん・・)とか思ってるわけです。

「チャングム」以来、ずっと朝鮮時代のドラマを見続けてますが、必ず描かれるのが、王に対する家臣の不信感、反逆、実力のない王様等々、不思議な国だなあと思ってきました。その政権の性格は現在まで続いており、大統領に必ず付随するスキャンダルめいたもんと言うのも、政治の名目上の№1が、真の№1と思われてない・・・・この歴史が原因となっているようです。

◎◎◎●

「神弓」

監督 キム・ハンミン
出演 パク・ヘイル ムン・チュウォン リュ・スンリョン キム・ムヨル パク・ギウン 大谷亮平


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは。 (みぃみ)
2012-12-03 15:21:30
幅広い作品が公開あるのですね~。いいなぁ。。。

私の地元香川県も映画の誘致活動は盛んですが、
上映作品はエンタメ性の強いものが大部分を占めています。007も誘致したようですが。。。(爆)。

中国や朝鮮半島が舞台のものは、騎馬隊と弓の描写が多いですね。
しかも、矢においては半端無い数が宙を舞って…。
絵としては美しいのである種のこだわりなのかもしれませんね。

同じアジア人。且つ見た目は似ているのに、
気性や考え方が日本人と大きく異なるのは、
やはり他の国との陸続きゆえなのでしょうか?。
上に立つ人を、好色&汚職で描くのもまた特徴的だなぁと思います。
映像に使ってある色合いも華やかですよね・・・。

私、夏・殷・周…宋・元・明・清・中華民国を、
「もしもし亀よ」の歌に合わせて覚えただけなので、
普通に日本の元号と同じなのだと思っていました。
色々あるのですね。
作品、面白そうなので、DVDになったら見てみます☆。
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辮髪 (マリー)
2012-12-03 22:15:57
いつもお勉強になるなぁ・・・

辮髪って中国大陸だけ?
朝鮮民族でもするのですか~?

私、辮髪カンフーもの好きで、昔よく観ていた~~~。
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>みぃみさま (sakurai)
2012-12-04 14:37:59
一応ねえ、全国的にも単館系作品を上映してる地方都市としては有名なのです。
大体の作品は網羅してる。
配給会社の関係で、できないものもありますが、見れない!!ってのは少ないかも。
それが今年はどうしても私が見たい「王朝の陰謀」と「アルゴ」あったけど、それの方が珍しいかもです。

この作品は、弓がうわーーーーーと飛んでくるっていうよりは、個人の技術的なもんで、見えない敵を打つ曲射の技術って感じ。
時折、韓国風のくどい作りもちゃんとありましたが、全体的にはなかなか面白かったです。へイル君もよかったし。

やっぱアジア人といっても全然気質は違いますね。あちらはB型が多いそうですよ。
何がどう違うんでしょうね~。

世界史的には、中国が主で、朝鮮半島はおまけみたいになってますが、そこの関係は、なかなか興味深いです。
こういう歴史もんは、商売柄、やめられません。
見っけたら、ぜひ見てみてください。
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>マリーさま (sakurai)
2012-12-04 14:51:58
恐縮です。

辮髪は、満州地方に住んでいた女真族という人たちの特有の髪型です。
清(女真族の国)が中国を支配した時に、漢民族にも強制したということで、逆らった人は首を切られちゃった。
清を倒して、辛亥革命を!の時に、まず辮髪を切り落としたってのは、清に対する抵抗ですね。
朝鮮の人たちはしなかったです。
いち早く、服属したから、強制する必要もなかったのかも。
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Unknown (ふじき78)
2012-12-15 22:23:10
あああああああああ、そうかああああああ。

やはり単にハゲという訳じゃないんだあああああ

冒頭いきなり感と弓テクがいっぱい出て来る後半が面白いっすよね。
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>ふじき78さま (sakurai)
2012-12-19 15:20:11
妙な髪形ですが、それなりに意味があるんで。
世の中に、意味のないもんはないっすよね。

韓国もののよくある作りで、乱暴なはじまりで、最初ついていくのが大変ですが、あとは怒涛のノリで!なかなか楽しめました。
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こんばんは! (ヒロ之)
2013-01-29 02:13:42
弓を放った後のカメラワークが素晴らしかったです。
高速カメラを使ったようですが、それでもあそこまではっきりと描写されたことに感動しちゃいました。
中盤辺りからの追う、追われる展開がハラハラ感があって面白かったです。
ハイライトなる睨めっこシーンも緊張感が生まれていて見応えありました。
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>ヒロ之さま (sakurai)
2013-02-04 08:14:07
臨場感あるカメラでしたね。
迫力ありました。
追う、追われるは韓国の定番ですよね。
若干しつこさはありましたが、それが十八番ということで。
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