迷宮映画館

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卒業の朝

2004年07月25日 | さ行 外国映画
アメリカにある名門プライベートスクール・聖ベネディクト校。ここに長らく勤めていた古代地中海文明の教師・ハンダートは清廉、まじめ、堅物、ゆるぎない高邁な精神を持つ男だった。リタイアした彼を招待したのは、四半世紀前の問題児、でも今は全米2位の企業のトップになった、セジウィック・ベルだった。

ハンダートはベルが転校生としてやってきたときのことを思い出していた。古代ギリシア・ローマの歴史を学び、物事の真実を見出させることが使命、先人のさまざまな知恵を生徒に教えることに意義を見出していた。しかし、上院議員の息子セジウィックは超問題児だった。歴史を馬鹿にし、まじめに授業に取り組まない、級友を扇動して、事件を起こす。頭のいい彼は、たちまちカリスマ性を発揮する。

愚か者はいつまでも愚か者だと諭されたセジウィックは、一念発起して聖ベネティクト校名物の『ジュリアス・シーザー・コンテスト』に出場する。今まではがらっと変わった前向きな態度は、ハンダートの気持ちをわくわくさせた。しかし、決勝で彼の不正を見つけたハンダートの落胆は大きかった。結局、彼を導くことができなかった。そして、20数年後、彼の再挑戦の場にハンダートはやってきたのだった。

アメリカの名門の寄宿学校に、いかにも通いそうなお坊ちゃまたちがずらり。ああいう学校は、ものすごい金のかかるところだそうで、それなりの覚悟を持った子供がやってくる。前向きで、まじめで、堅くて、目標を抱いている。しかし、そんな中でも必ずいる問題児。それがセジウィックなのだが、ものすごくよくわかる。私も、教員をやって18年くらいになるが、幸か不幸か、どちらかというと、お勉強大好き、まじめに授業に取り組みます!という生徒さんよりは、いかにしてさぼろうか、いかにしてこの授業を引っ掻き回してやろうかという生徒さんをいっぱい見てきた。いや、まじめで、こっちが頭が下がる思いの生徒さんもいっぱいいましたが。

人間の性質はそう変わるもんではない。これは、多くの人間を見てきて痛感した。じゃー、教師とは一体何をすべきなのか。生徒を変えようなどとは、これっぽっちも思ってない。自分の持っているもの、自分が彼らに与えられるものを先ず与える。最初は聞く耳を持っていなくてもしようがない。でも聞かせられないのは、こっちの企業努力が足りないせいだ。精一杯の努力をして、こっちを向かせることまでは私の責任だ。その後は、やはり自分の責任となる。私は彼らを川岸まで連れて行くことはできるが、水を飲むか、どうかは彼らの意志によるのだ。

ハンダート先生はセジウィックに水を飲ませることができたか?でもそれが問題なのではない。先生のことを多くの、周りのみんなは理解していた。そして、これからもより多くの生徒を川岸に連れて行くことが大事。そのことが大事なのだ。私が肝に銘じている言葉に『過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる』というのがある。コレをもう一度、かみ締めてみた。

映画的には、当たらなかったらしいが、話はよーーくできてる。ちぃーーとオタッキーな歴史問題なぞは、にやっとしてみていたが、あんなのは趣味の問題。本質は歴史って、ほんとに面白いのよ、ということ。ケビン・クラインの、超堅物もなかなかなかだったが、セジウィック役の少年、将来楽しみ。

『卒業の朝』

原題「The Emperor's Club」 
監督 マイケル・ホフマン 
出演 ケビン・クラインエミール・ハーシュ エンベス・デイビッツ 2002年 アメリカ作品


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