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第276回 短歌のDNAと偶然短歌

2018-07-13 | エッセイ

 いきつけのお店では、毎月「連句の会」が催されています。そして、隔月で「句会」も開かれて、いつも賑やかに盛り上がります。

 何より瞬発力が求められる連句の世界は、さすがにハードルが高く、文字数が少ない俳句の方への参加で勘弁してもらっています。そんな私が、紹介したい本があります。

 お店のfacebookでも、ちょっと紹介されてました。私は、たまたま読んでいた本で知ったのですが、ネットでもいろいろ話題になっているようです。とにかくユニークな本です。
 それは、こちらの「偶然短歌」(いなにわ/せきしろ 飛鳥新社)です。



 ネット上の百科事典である「ウィキペディア」(日本語版)から、短歌の形式にフィットする部分を抽出するコンピュータソフトを開発したのが、「いなにわ」氏です。日本古来の文芸形式へのリスペクトが発想のベースなんでしょうけど、やってみたら、わずか数時間で、5000首(?)もの「短歌」が、リストアップされてきたというのです。

 ウィキペディアの各項目の執筆者は想像もしてなかったはずですが、五・七・五・七・七って、日本人の感性に合うんでしょうか。
 そういえば、昔、巨泉がやっていた万年筆のコマーシャルで、
 「みじかびの きゃぷりぴとれば すぎちょびれ すぎかきすらの はっぱふみふみ」なんてのがありました。分かるようで分からない文句を、短歌の形に落とし込むだけで、なんとなく心地いい・・・ひょっとしたら、このリズムは、日本人のDNAに刷り込まれてるのかな、とも思ったりもします。

 さて、そんな「短歌」の中から、100首を厳選し、コメントというか、ツッコミを入れているのが、「せきしろ」氏です。見開きの右に「短歌」、左にコメントという構成で、手軽に、気軽に楽しめる本に仕上がっています。私なりのコメントを添えて、更に厳選した「作品」をお目にかけます。(★印が短歌です)

★アルメニア、アゼルバイジャン、ウクライナ、中央アジア、およびシベリア
★柔道部・バレーボール部・卓球部・ハンドボール部・吹奏楽部
★新宿区西新宿と大阪市北区梅田と名古屋市中区

 いろいろ羅列する時、自然と短歌のリズムに嵌(はま)ってしまう事ってあるみたいです。最初のは、「モロカン派」と呼ばれるロシア農奴の運動に携わった人々が追放された地名、次は、一宮市立北部中学校の部活名、そして、その次は、JTBエンターテイメントアカデミーの所在地。
 北部中学校の皆さんも、JTBエンターの関係者も、とんだことで注目を浴びて、困惑してるんじゃないでしょうか。

★事故にあう心配の無い安全な場所で行う必要がある
 この種の作業っていろいろあると思うんですけど、なんと、これは「雪だるま」。「雪だるま」なんて、作る歳でもないですけど、気をつけます!

★国内にある日本の無修正アダルトビデオ販売サイト
 「ジャポルノ」という項目から。「アダルトビデオ」って、七文字なんですね。都々逸だったら使えるかも。

★念仏で救済される喜びに衣服もはだけ激しく踊り
 「盆踊り」の項目から。きっと、昔は激しかったんでしょうねぇ~。「はだけ」なんて雅(みやび)な日本語を使って、短歌を作ってみませんか?

★ギタリスト二人のうちのどちらかがリードギターの役割となる
 項目は「リードギター」。親しくしているギタリストがいます。すごいテクニックの持ち主なんですが、控えめな性格なので、いつもサポートの方にまわっています。ちょっと歯がゆいです。

★授業時の集中力も低下させ、発育上も好ましくない
 なんのことかと思ったら「宿題」。私らの小さい時から、もっといろんなところで、声高に言ってくれれば良かったのに(それは無理?)。

★コンコース横にはりそな銀行の現金自動預け払い機
 「阪神競馬場」の場内の説明ですが、「現金自動預け払い機」が、七・七って、今、気がつきました。

★さまざまな難癖をつけ買い取りを渋るところが大半である
 「内職商法」から。くれぐれもご注意ください。

★クチナシで染めた黄色にベニバナの赤をわずかに重ね染めした
 最後は、いかにも「短歌らしい作品」です。「梔子色(くちなしいろ)」の一節ですが、「重ね染め」なんて、使ってみたい言葉ですねぇ。

 いかがでしたか?連句の会の皆様、句会の皆様、ご参考になりましたでしょうか。コンピュータに負けない作品を期待しています。

 それでは、次回をお楽しみに。

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