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第313回 前世の記憶−2

2019-04-05 | エッセイ

 だいぶ前になりますが、作家・高橋克彦の前世をめぐる「不思議なことがあるもんやなあ」話をご紹介しました(文末にリンクを貼っています)。

 前回、「生まれ変わり」(としか思われない)事例を、別の機会にご紹介する、としていましたので、そのお約束を、「パート2」として果たそうと思います。
 ネタ元は、「死後の生存の世界」(笠原敏雄編・著 叢文社)というこちらの本です。


 霊媒、ポルターガイスト、臨死体験など死後の世界(果たしてそういものがあるのか、ないのかも含めて)をめぐる様々な話題への「科学的」アプローチを紹介したアンソロジーです。
 その中に、輪廻転生(生まれ変わり)の研究者であるヴァージニア大学のイアン・スティーヴンスン教授が、インド国立精神衛生科学研究所のサトワント・バスリチャ氏と行った共同研究の成果が収録されています。綿密な調査に基づく、不思議で、説得力のある事例を2つご紹介します。

<事例-1>
 ビルマの少女「マ・ティン・アウン・ミヨ」のケースです。
 母親がミヨをみごもっている間、たびたび上半身が裸で半ズボン姿の日本兵が夢に登場してきて、「俺はお前の子供になって生まれるぞ」と告げます。
 ミヨには、姉が二人いましたが、彼女らが、スティーブンスン教授に語った話です。

 ミヨが4歳の時、父と散歩していたら、飛行機の爆音を聞いて、突然こわがって叫び出した。
姉が理由を尋ねると「撃たれるから」と答えたというのです。
 その頃からミヨはメランコリックな状態になり、「日本に帰りたい」と、さかんに口にするようになります。自分の前世が日本人であり、日本兵としてビルマに駐屯していたこと、北日本の出身で、妻と子供がいたこと、そして、兵隊に取られて、ミヨがうまれたナ・ツール村に駐屯していたことなどを語ります。
 ある日、炊事のために薪のそばに来た時、敵の機銃掃射を受けて死亡したが、その時の服装は、半ズボンに腹巻きだった、というのです。1942年に日本軍がビルマ侵略後すぐに、ナ・ツール村を占領したこと、そして、この村で、英米連合軍による爆撃と機銃掃射が、1945年に、日本軍が撤退するまで続けられたことは、歴史的事実で、ミヨが語る前世と符合します。

 更に、姉たちとスティーブンソン教授とのインタビューでは、ミヨはビルマ人の好むものは食べず、好んで男装すること、そして、小さい時、家族の者には理解できない言葉で独り言を言っていた(幼児語か日本語かは不明)などという事実も明かされます。
 「ミヨが自分の前世であるとする日本兵の身元に心当たりのある方はご一報いただきたい」と、教授は、同書の中で、情報提供を呼びかけています。その兵士の名前だけでも分かれば、研究が進むのになぁ、とちょっと歯がゆい思いです。

<事例-2>
 フランスの少年の例です。

 尻にあざを持って生まれた少年が、ある日、突然、前世で自分は銃に撃たれて死んだ、と言い出します。撃たれた場所や、撃った男たちを名指しで挙げたほか、そのうちひとりが、撃つ直前に「トランプでイカサマやりたがったな」と言ったと語ります。自分の名前はもちろん、親兄弟やガールフレンドの名前まで挙げます。
 また、フランス語とは別に、両親にはまったく理解できない言葉を話し、専門家の調査で、その言葉は、セイロン島(現スリランカ)のシンハリー語だと分かります。

 教授と、共同研究者が現地で聞き取りをした結果、名前の挙がった人物が、過去に実在していました。そして、数年前に、少年が語るとおりの事件があったことが分かります。
 さらに、検死に当った医者の記録から、犠牲者の体の弾痕は、少年のあざの位置と一致し、形状も同じだったというのです。

 「だから、前世はある」などと軽はずみな結論は教授も出していません。それは、科学者として、当然とるべき立場です。
 で、私はといえば、「偶然の一致を超えた不思議な「現象」があるもんやなぁ」との思いを相変わらず抱いています。

 前回の記事(第277回)へのリンクは<こちら>です。合わせてご覧いただければ嬉しいです。
 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。