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第207回 当った予言、外れた予言

2017-03-10 | エッセイ

 人並みに、ネットとか、パソコン、タブレットなどのお世話になっていることもあって、デジタルの世界の先行きを、頭の体操のつもりで、たまに予想してみたりすることがあります。

 我ながら、大外れだったと思うのは、ネット書店の隆盛。2000年11月にamazonが日本でサービスを開始しました。当初は、新刊のみの扱いで、送料無料は、1500円以上買った場合のみ、という条件でした。「本なんて、書店で手に取って、見て、買うもんだろ。誰が送料払ってまで、ネットで注文するか?」というのが、当時の私の「予想」。


 その後、古書も扱うようになり、新刊の本などは、送料無料などと条件が変わったとはいえ、トホホの大ハズレを認めざるを得ない。古書が中心だが、都合良く利用しているのだから・・・

 4~5年前くらいからだろうか、電子書籍が、随分、話題になったことがある。かさばらない、安い、すぐ買える、などの利点に目がいって、「こりゃ、流行る」と思ったのだが、現状、思ったほど普及が進んでいない。漫画、実用書分野では、それなりに利用もあるようだけど、流行とはほど遠い。「今のところ」「日本では」との保留付きで、これも、ハズレのクチ。アメリカなどと比べて、コンテンツがまだまだ十分とは言えないこと、「本」という実体が持つ魅力・・・まっ、これからに期待しましょう。便利には違いないので・・・・

 「当った予言、外れた予言」(ジョン・マローン 文春文庫)という本があります。こちらです。

1858年から、1996年までの、いろんな分野での予想的なものも含めて、予言の当たり、外れを紹介しています。通信、情報などの分野について、いくつかご紹介しましょう。

<ファックス機の普及>
 かのジュール・ベルヌが、1863年に発表した「1960年のパリ」の中に、「写真的な電信装置は、手書きか活字かによらず、どんな文字や絵でも送信することができ、いまや2万4千キロ離れた相手とも信用状や契約書の署名することができる」と書いている。
 当時、写真と電信という新しい技術は、既に存在していたとはいえ、両者を結びつける発想は、卓抜。さすがベルヌ。

<電話機は誰も使いたがらないおもちゃ>
 電話で特許を取得したのは、アメリカのグラハム・ベル。まったくゼロからの発明ではなく、先人の技術開発があっての「発明」だが、その実用化、事業化には苦労している。
 義父の弁護士からは、「そんなものはただのおもちゃだ」と言われている。政治家へもアプローチしたが、当時のヘイズ大統領から「それは面白い発明だが、誰が使いたいと思うものか」との言葉を投げつけられている。
 スマホの普及で、「電話機」が、「ただのおもちゃ」と化している現状を、ある意味で言い当てているのかも。

<世界市場でのコンピュータ需要は5台>
 のちに、世界的コンピュータメーカーIBMの社長になるワトソンの、1948年の発言。お笑い草になるほどの大ハズレで、しかも、当事者の言葉ということで、折に触れ、引用される有名な「予言」。
 なにしろ、当時のコンピュータは、鉄道の貨車よりも大きく、1万8千本の真空管を使用し、計算のたび毎にスイッチのリセットが必要など、現在では考えられない代物ではあったが、それにしても・・

 ついでに言うと、1977年の世界未来学会の会議で、デジタル・イクイップメント(DEC)の創立者のオルセンは、「個人が自分の家庭にコンピュータを持つ理由はない」と発言している。
 当時は、大型コンピュータ全盛とはいえ、ずいぶん夢のない経営者である。

<札入れ(ウォレット)パソコン>
 1995年に、マイクロソフトのビル・ゲイツが、「ビル・ゲイツ 未来を語る」の中で、まさに、スマホの出現を「予言」している。オンラインでの情報収集、電子メール、ゲーム、スケジュール管理、画像管理などが、手のひらサイズのパソコンで、実現できるというわけだ。
 「予言」は見事に的中したが、さきに実現したのは、ライバルであるアップルのスティーブ・ジョブズだった、というのが、なんとも歴史の皮肉。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。