Rosa Guitarra

ギタリスト榊原長紀のブログです

テストミックス4

2016-01-25 | 榊原長紀 「キミと僕」


今日はライブ本番で
出かける手前にPCメールにテストミックス4が届いていることに気付いた

もう本番モードになっていたので
出かける前に聴くか聴くまいかちょっと迷ったが
結局2曲ほど聴いた


クリアなのに耳と心に優しい音に仕上がっていた



耳に優しい音質にしようとすると丸い音になる

丸い音は隠りがちに聴こえてしまうことにもなる

隠りがちな丸い音質は神経を逆撫でするものは少ないが
演奏に盛り込んだ想いもぼんやり奥まってしまう


テストミックス4は
その両方が魔法のようにクリアされていた
もう半年以上前に録音時に演奏に盛り込んだ想いが
浮き出て聴こえるようになっていた

自分はこんなに沢山の表情をこの曲達に盛り込んだったっけ?


想いがはっきり感じられるということは
曲から受け取る情報量が増えるわけだから曲が長く感じられるし
聴いたという満足度が上がる


クリアさと
そして良い意味での曖昧さや揺らぎのようなものの
両方が見事に調和されていた


自分が録音したものと
良い意味で違うものにさえ感じた


エンジニアさんによって完璧に化学反応を起こして頂けたことを覚った


2曲聴いただけで十分にも思ったが
やはり帰宅したら全曲じっくり聴いて
OKのお返事はゆっくりしよう
と思いながら出かけた




。。。



ライブの会場に今日も早く着いて
最寄りのコインパに停めて考えていた


制作中のこのアルバムに収録された曲がそれぞれ生まれた瞬間というのは
人智を越えた本当に一瞬の閃きの中でしかない


その閃いたイメージの断片を
最終的には不特定多数のリスナーが繰り返し聴いても耐え得るまでの表現力が作品に備わるまで
演奏家としての練習を重ねながら
同時に練習するほど失ってゆくファーストインスピレーションのピュアな部分を取り戻さんとする葛藤を経て
更には自分の専門外を司る他のプロの方達の力をお借りすることになる


価値観も生きるスタンスも違う他人同士なのだから
プロのノウハウを以て
格好良さげな専門用語を駆使しても
実のところお互いのことは何も理解し合えないのが事の本質だ


そんな何とも心許ないコミニュケーションを経て最後にはプレス業者への依託になる

せっかく良い風合いになっていたジャケットの色見が味気無い風合いになってしまってしまわないか
プレスによって音質が変わってしまってないか…等々
尽きぬ心配と障害をクリアしたものがやっとリスナーの手に届くことになる


クリアしたもの
と書いてしまったが
本当は
幾つもクリア出来なかった要素を残したものがリスナーの手に渡るのだ


他人の手が挟まるほど
自分から発せられた純度は落ちてゆく


価値観もスタンスも違う他人に
自分の価値観を押し付けることは無意味なことだしそもそも不可能だ

ならば最後に残された出来得ることがあるとすれば
他人同士それぞれが持っている力を最大限合わせて化学反応を起こさせ
僕が独りだけで作り上げた仕上がりより
何割も何倍も輝きを放つ仕上がりを目指すしかない

それが得られないなら
他者と関わる意味は無い
独りの範疇だけで作品制作をすれば良いのだ



人は無意識の内に一瞬の閃きという情動によって突き動かされながら人生を歩いてゆく

人生の中で躓くことが多々あるだろうが
その99,9%は
閃きに依るものではなく閃き以後の他者との関わりの中で生じている


閃きとは自らの内なる声であり
狭義の常識などによって見失ってしまった自分らしさを取り戻す答えが
そこには内在されている


繰り返しになってしまうが
見失うのは閃きの瞬間ではなく
その後の作業である他者との関わりの中なのだと思う

それが生きることの難しさそのものだとも言え
見失えば心が弱り
閃きすら無くなってしまう


弱った心は
情動に身を任せ我が儘に生きることで少しずつ取り戻せるのかもしれない

我が儘な行動は
表面的な人間関係の摩擦にも繋がるが
表面的な人間関係なら失っても生きる本質に於てどうということもない

むしろ自分にとって本当に必要ではない人間関係はフルイにかけられるだけだろう


独りを生きる強さを得るためには
沢山愛情を受けることだ
そして沢山の愛を受けたければ
まず自分から愛すことだ

小さなもので良いから自分の持っている心の財産をなるべく使って
小さくて良いから善行を施すことだろう

道端のゴミに気付いたら拾ってゴミ箱に捨てるようなちょっとしたことで良いのだ


結局そういう積み重ねが人間関係を健全に進める力に繋がってくる



他者と良き化学反応を起こすには
無垢になるしかない

良き化学反応から最も遠い距離にあるのは銭勘定に基づいた関わりだろう

次に遠いのは
煩い他者との関わりを避け
自分独りで完結させることだろう


自分独りで純度を増すことの充足も在るが必ず
煩わしい他者との関わりが恋しくなるだろう


棺桶に入る時に
何故もっと全力で他者と関わらなかったか
と後悔が過るだろう


…と

こんな理屈が今日は湯水のように湧いて来る


このまま語らせれば宇宙の果てのことまで語るかもしれない


だから
アルバム制作の終わりが近づいていると感じるのだ

真理をアルバムに宿すことが出来そうだからだ




こんな感じの中
今日は南青山で半クローズのライブのサポート

僕の心は
ライブの事に在って無いが如く

とはいえ
深い根っこの部分では
しっかり在り過ぎるほどに在る


そこにしっかり愛は在る

早く到着し
最寄りのコインパに停め気持ち良い青空の下
このメモをしたためている










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