Rosa Guitarra

ギタリスト榊原長紀のブログです

「今日の午後 ある事のあと」

2009-02-20 | ギターの栄養
錬金術士の力を借りずとも元から居り
精子の尖端に股がり、受精と同時に卵子に飛び移り
その一大イベントのあとは脳内に蟄居し、小手先ひとつで日々に作用をもたらす

ホムンクルスの悪戯の前では、なんと人間の意志力の卑小なことよ


DNAの指令の何%かと、かろうじて会話が出来る人間の脳
この会話が、生物最大のレクリエーションである
言い換えるなら「感覚と論理の会話」「身体と心のバランスとり」とか言われてるものと
同じともいえるのだろう

その邪魔?をする悪戯者
もしくは奢り高ぶった脳への啓示かもしれない
そのどちらなのか僕等はわからない

そのどちらなのかすら、僕等はわからない





悔いから目を背けず
悔いの痛みに熱くなることもなく
その場しのぎの笑いに、虚しい浪費をすることなく過ごすうち
「下に降りてゆく」
「沈んでゆく」


近い...

僕には聞こえる
ホムンクルスの微かな息づかいが


胃が、食道が、粟立っていることにも心地良く感じるようコントロールする
ホムンに遭遇する手前には、幾層にも邪魔が仕掛けてある
ここまで... 息づかいが感じられるほど近くまで来たのに
一気に引き戻されたくはない


深く暗い穴を、そっと覗き込む
それは僕の心の入り口

フワリと宙に浮いたあとは、微弱な引力に引っぱられるように
ゆっくりと垂直下降する

穴の壁面には「それぞれの事情」という名の棚が無数に突出している
自分と縁を持った生物達の生きる、それぞれの宇宙の端がこの棚なのだ


降りてくるまで解らなかった...
だって、穴という入り口に遭遇出来ることも稀なうえに
穴の中は暗いし、棚があることは知識では知っていても
肉眼で直視は出来なかったんだもの

今日の午後、ある事のために流した「血」の理由を知るためにここに来た
何度懲りても繰り返す理由を知りたくて、ここまで降りて来た

ホムンは居た

棚の裏側に
胎児のように小さな身体を丸めて
そして全てを知ってる悪賢そうな瞳を、暗闇から静かにこちらに向けていた



これらの全てを記憶しようという意志が働いた途端
重力は消え、僕の意識は浮き上がり始める

「こんなに少しの時間しか会えないのか...  今は まだ...」

またこの場所に来ることを自分に誓って、浮き上がることを甘んじて受ける
(ホムンには誓わない、何故ならまだ同胞という確信がない)


そして今、ここで書いている


この記事は、フィクションではない




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