キッチンからベランダへ出るサッシを開けて その際に横になる
伸ばした片腕を枕にして
頭のところで不思議な乱気流が生まれて
その風が顔をしきりに撫でてゆく
その風にカーテンが細かく動いて
枕にした腕も繰り返し撫でてく
床にたまっている埃が目に入る
…
何故 地面の近くに目線を置くと安心するのだろう
ここに蟻が歩いていたらもっと良いのに...
夕べ
後ろから女にそっと抱かれる夢を見た
現実に寝ているそのままの、夢の中の自分が 暖かく包まれるように抱かれて
左の頬に二回キスをされた
それが誰なのか静かに確かめようとした瞬間、空気中に溶け込むように女の気配は霧散した
今でもその暖かい感覚が残っている
夏の日の晴れた空の下に、遠くからいろんな音が聞こえてくる
しばらく身を任せる
自分の内なる声に耳を済まし
その声に忠実に生きることと
現実のギャップが
こうも沢山生まれるのは
どこか自分が歪だからだろうか
目を瞑って
この夏の暑さの中に ドロドロになって溶け込みたいと思ってみる
ホントは今、そんなこと願ってもいないくせに…
焼けたアスファルトに跳ね返って聞こえる金魚売りの声や
縁日の裸電球の心許ない灯りや
追っても辿り着けない逃げ水のことなんかを想像して…
目線を空に向けたら 3日前から干したままの洗濯物の向こうに
やけに白っぽい空が広がっていた