化石のようなその老人の顔に深く刻まれた皺の
一番大きな割れ目の奥に埋まっている彼の瞳は
涙を湛えた象の目のように穏やかな表情に見えた
その瞳がチラッと僕を見た時
その瞳の奥深くに
肉食獣が獲物を狙う鋭い光が一瞬走った
僕が身震いする間もなくすぐにその光は消え
また化石の象に戻った
幻かと思う時
天と地を合わせたような大きな波動がやってきた
それは現実には
老人のかすれた静かな声だった
それは僕の耳には
こう言ってるように聞こえた
幸せを諦めてる人が苦しいのは
不幸せだからじゃなくて
幸せを諦めたくないという命の声に逆らっているからかも知れないね
と
狼の牙の
本当の意味を知っているかな?
そう言って老人は緩慢な笑顔を見せた