Rosa Guitarra

ギタリスト榊原長紀のブログです

2009-07-31 | ギターの栄養


明日、箱庭という
アンプラグドのイベントに生まれて初めて出るのだが
そのためのリハを昨日やった



明日使うガットギター、というものを(他のギタリストさんは知らないけれど)僕はこう感じている

大体どんな楽器にも音量で負ける楽器


ピアノに負ける、バイオリンやチェロなんかに負ける、打楽器には負けまくる
サックスなんか話にならないフルートさえ大声に聞こえる
あの小さなマンドリンにさえ完敗するのだ

電気でいくら増幅しても関係無く負ける

それは、何と言ったら良いか...
「ガットギターは音が薄い」とでも言ったら良いだろか

なのにアンプラグドを受けてしまった...




このイベントの入場料は、はどこかの国に樹を植える基金になるそうだが
特別そこに賛同して受けたわけではない


ギターを持って旅してくだけの人生なのに
何かを避けて迂回するのが嫌だから受けただけなのだ



音量は大抵の楽器に負け続ける中
(大抵のヴォーカルにも負けるのだが)
僕のバンドのVo、矢野かおりのヴォーカルだけには負けない

とんとんの勝負なのだ

だから、多分、15年くらい一緒の音楽活動が続いているのだと思っている


音量で音楽を持って行かれたとき
ポツネンと取り残されるのは必ず僕のガットと矢野だからだ


僕の合奏体験した楽器奏者さんの大半は
僕と矢野かおりが1センチの中の1ミリと2ミリの間を
額に汗しまながら描いてるところに
1センチとか2センチとかの単位で、ガァ~ッと通って行く

一瞬で1ミリは吹き飛ばされる

相談しても彼等は最低単位が「センチ」だから
「1センチか0」かを行き来する

ちなみに「0」とは音楽になっていない、という意味

そして誤解なきよう、よく説明を付け加えておくが
そういう彼等は弱音楽器ではない彼等の楽器を駆使して
1センチ以上の表現では素晴らしいプレイをする


「1センチ以内」のことをやってる人間が
こんなに少ないとは当初は知らなかったから
自分たちがオカシイのか..まわりがあまりに乱暴者なのか..と
巨人の国に迷い込んでしまった逆ガリバー状態が続いて
冗談ではなくノイローゼになった


そこを越えて今がある(偉そうだけどね)

ザックリ言えば
大抵のミュージシャンには解ってもらえないというところからスタートしてる自分が居る

そこからスタートして、ミュージシャンにもオーディエンスにも
「どこまで解ってもらうか」っていうのが、
弱音楽器奏者の、いつもの僕の勝負所なのだ


明日は対バンがいる
どの対バンより、ウチ等は弱音楽器となるだろう


しかし、リハをやって
やはり「生」は心地良くて
いつもライブで使ってるエレガットでは絶対得られないものがあった


電気で増幅しても負けるガットという楽器を
どういう弾き方をすれば他の楽器と同じ土俵に立てるのか
どんなピックアップをつけ、どんなゲージのどんな弦を張ればベターか
さんざん研究してきた..

そして僕の中で、ガットでライブでやる場合
結局
電気を通して他の楽器と土俵を同じにするための
普通のガットではまず張らない弦やら弾き方やらを施した
「もうガットとは呼べない新種の楽器」とするしか無い
という結論に至った

そうして初めて、ピアノやら打楽器などと音でお話が出来る

でも純粋には僕はガット奏者としてではない
新種の楽器奏者として喋っているのだ

てんとう虫ではなく
てんとう虫だまし
みたいなものなのだ


たまには僕だって、てんとう虫として生きてみたい^^


音量の問題が解決するなら
ちゃんと、本物のガットを
そのままの響きで奏でる、7星てんとう虫として生きてみたい


ガットを生で聴ける場って
咳さえはばかられるようなクラシックのコンサートしかない

ラインで拾うよりナチュラルな音質を得られるとはいえ
ハウリングを起こしやすいマイクで拾ってライブをするのも
音量の小さいBossaみたいなジャンルでないと絶対無理なのだ

世界に名を轟かせている日本のクラシックのギタリストさんが
オーケストラをバックに自分の音が聞こえず
ダイナミクスを描けず
力んだ弾弦でペンペンに潰れた音を出してる気の毒な光景をテレビで目撃したこともある



明日は、レコーディングでしか使わないガットを使う

会場は電気もほぼ使わず、ロウソクの灯りだそうで

その微弱な瞬きの中で
ちゃんと二匹の7星てんとう虫が見えるといいんだが..







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