Rosa Guitarra

ギタリスト榊原長紀のブログです

筆と音の軌跡

2019-02-28 | ギターの栄養

油絵とか水彩とかの絵画、ではなく
書道、としての「筆」の運びに
ずっと以前から心を惹かれている


昨日BGMライブで
数時間に渡ってずっと私の演奏を聴いてくださった方が
いらっしゃいます

曲間に顔を上げると目が合い
心を開いた和やかな表情で微笑んでらっしゃいます


終演後にお店の方に尋ねると
そのお客様は絵を描かれるのだと教えてくださいまして
店内の壁にもその方の絵画が沢山掛かってありました 


その絵はちょっと独特な風合いで
お店の方に伺ったところによると
その方は書道家として大変な腕前をお持ちなのだそうです


油絵や水彩によく見かけるような絵画の筆運びではなく 
「書」の筆運びで絵を描かれてるから
独特の雰囲気だったのだな
と独り合点して絵を少し眺めますと 

筆圧の強弱、筆勢の速遅
色彩の濃淡や
掠れとか、擦れとか
滲みとかが
一瞬で目に飛び込んでくる

おこがましいですが
これは自分の演奏と同じ手法だと一瞬で感じるわけです

 


 

この世界の森羅万象を写し取り

かたや白いキャンバスの中に収め
かたや音という空気の波にして空間に放つ


所詮、人には森羅万象を完全に写し取ることなど出来ないが
せめて自身が森羅万象の中の一欠片であると感じ入りながら
弦を爪弾き筆を走らせる

そうするうちに
 目に見えているものとは全く違う風景が
この世界に産み落とされる

それは音楽であったり
絵であったりしながら
目に見えている現実の風景の形より
もっとずっと真実に近い形となる





自分が奏でるという行為を借りて
森羅万象を写し取ろうと試みる時
一瞬一瞬のその場の波動に自分の魂が揺さぶられながら
悠久の時の中で2度と同じものは無い
唯一無二の作品を産み落とすことになります

先日弾いたムーンリバーと今日弾いたムーンリバーは
五線譜に書いてある通りに弾いても全く違うものになってしまう

きっと昨日、私の音を数時間
聴き入ってくださったこの絵描きさんも
ご自身の筆運びの時にもきっと
私の演奏と同じように
瞬間にたった一度しか産み落とせない線を
この四角い枠の中に収められたのだと思い当たりながら
絵を眺めると
絵の向こう側に無限の世界が垣間見えて来るのでした
 

 


私より年上であられるその方の絵について
ウンチクなど述べる事など憚られ
昨日帰宅後の後記ではやり過ごそうと思いましたが 

こんな素敵なことを書き残さないではいられなかったので...

 

 





過去の独奏ライブでお客様の中におられた
何かの有名な賞を取ったというイタリア人の若い画家さんから

「貴方の演奏は自分が絵を描いている時の精神の波長に近い」

というようなことを言われた事があります
 


絵、...というより
「筆運び」と言った方がしっくりきますが

その筆運びと、自分の演奏方法は
リンクしているものがあるのだろうと思います

 

 

ライブハウスやホールなど演奏専門の場所より
美術館のような
鎮まった気配の中に
明らかなる生命力の宿っているような場所で


人の鎮まった心を一切乱さない
限りなく透明に近い音で
薄墨の滲むような美を音で描いてみたい 


独奏の旅を続けて行くうち
いずれそういった場との縁も繋がることを祈りつつ
 


 
















 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2019/2/27//ひばりカフェさん... | トップ | 実演中 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。