部屋の灯りを消し窓を開けると
今夜も心地良いコオロギの鳴き声
しかし彼らは…なんでこんなに心に優しい音色なんだろう
今夜こそコオロギの音色に勝るとも劣らない音色を紡ぎ出すべく
愛器を抱えた
爪弾いてみたがやはり自分の音がうるさく感じるので
1音爪弾いて
音が消えるまで余韻を聴くことにした
複数の音程から生まれる音の揺らぎの波間に
コオロギの声が見え隠れして
もう気が遠くなりそうになる
ゆっくりゆっくり曲を弾き始める
コオロギの声の邪魔をしないように
止まりかけのオルゴールのように
ゆっくり
ゆっくり
ピアニシシモで
このままソロライブのセットリストを全部弾いてみよう
でも
どこかで爪弾きがフッと止まったら
僕はそのまま
化石になってしまうかもしれない