Rosa Guitarra

ギタリスト榊原長紀のブログです

T

2017-02-16 | 「T」


自転車で目的地に向かってるうち
どこで川を渡るか解らなくなって
進むに連れて道路の右側に平行している土手はどんどん高くなってしまった

橋を見落とした自覚は無いのだが
もういい加減この辺りでとにかく渡らなければと
高さ5メートルほどにもなった土手を自転車に乗ったまま越えようとしたが
斜面が急で登れない

仕方なく自転車を降りて手押しで登ってみると
意外にも呆気なく簡単に登れた


土手の上に立ってみると川は見えず
草の生えた河川敷がまるでアフリカのサバンナのような広大さで
眼前に横たわっている

遥か彼方に小さな樹林が幾つも点在していて
きっとあの辺りに川は流れてるのだろうと思った

向こう側に降りる斜面はもっと急だったので
先に自転車だけ滑り落としてから自分も慎重に斜面を降りて行った

普通に草の生えた土だと思ってた斜面は実際降りてみると
マットレスのような材質で一足ごとに沈みこむので
歩き辛いがそれはかえって滑らずに降りることが出来た


降りる途中
斜面の中程に直径3メートル深さ1メートルほどの大きな穴が空いていて
その中に茶色の毛布のような物があり
それは少し動いてたので
巨大なウミウシのような生物なんだろうと思った

よく判らないものに関わらないに越したことは無いと
やりすごして下まで降りた


降りてみて初めて解ったことは
そこは何とかいう部族の自治区で治外法権だということだった

その何とかいう部族は首猟り族で
自治区に侵入して来る者は誰彼構わず問答無用で首を跳ね食ってしまう

一刻も早くこの自治区から出なければと自転車に股がり
左右どちらに行くか考える

右はさっきまで土手の向こうの道を来た方向
左を見ると草原は限りなく続いており
橋も無く自治区が延々続いてるのがわかる

気付けば右手遠方には河川敷の上を渡る橋らしき物が小さく見えた

あの橋を渡るはずだったのを見落としたんだな
とにかく一刻も早く右に戻るしかない

必死に自転車を漕ぎ出した
しかし間もなくその首猟り族に遭遇してしまう

4〜5人居た彼らは協力し合いながら
長さ2メートルくらいある竹を裂い棒を繋いで
長く伸ばしてるところだった

竹には白い布が巻いてあるものと何も巻いてないものがあり
1つだけ細いやつには赤青緑黄白の紐がカラフルに巻き付けられていた

渓流用の釣竿を太い方から細い方へ差して繋ぐように
彼らは長い丈の棒を繋いでいる
きっと何かを釣るための道具を組み立てているのだと思った

何かを釣る…
それは間違いなく
人間の首を狩る道具に違いないと思った

ただ何処かで昔聞いたことがある
道具が組上がるまでは彼らは至って温厚で社交的だという特性があると

やばい
あの巨大釣竿のような道具が組上がる前に
彼らの横をすり抜け自治区の外に出なければならない



道具を組み立てる彼らは前方、土手の斜面近くに居る
僕はなるべく土手から距離を取りながら進むが
彼らとの距離はどうしても近づいて来る

彼らの真横を通る前に本当に彼らがまだ温厚で社交的かを確かめるべく
こちらからにこやかに手を振りながら
「こんにちは〜」と言ってみた

彼らは全員 人懐っこい笑顔で
「こ〜ににちわ〜」みたいに応えた


まだ大丈夫みたいだ 急がねば

しかし自転車で真横を通り過ぎる時に
その道具は組上がってしまった

しまった間に合わなかったか、と焦った時
たまたまそこに
僕より彼らに近いところを違う部族の人間が2人通りかかっていたことに気付いた

首猟り族は全員で雄叫びを上げながら
何かの儀式のようにその巨大釣竿を上下に動かしながら
飛び跳ねるような踊りを始めた

首猟りの道具だと思っていたその長い棒は
儀式のための道具だったようだ

飛び跳ね踊りながら一人が腰に差していた刃渡り1メートル強の薙刀のようなものを抜き
後ろからたった一振りで通行人の首を跳ねてしまった

血も出ずポーンと数メートル首が飛んで行くのが見えた


やばいやばいやばい始まってしまった

彼らがあと一人を狩ってるうちに逃げなければとペダルに力を込め
こちらを襲って来ないか事の成り行きを確かめながら走り出した


連れが首を跳ねられたのを見たもう一人は猛然と逃げ出したが
その逃げる後ろから薙刀は振り下ろされる

動いていたから首には当たらずドカッという音を立て背中に食い込む
背中の幅の3分の1くらいが割れるがほとんど出血しない

逃げる者があまりの恐怖に
全身の血管が収縮し切っているから出血しないのだ

右肺は真っ二つに割けただろうが心臓は外れたのだろう
致命傷にはならなかったようで
速度は弱まったがまだ逃げようとしている

そこへ首筋を狙ってもう一打振り下ろされるが
逃げる方も必死に動くから首を跳ね飛ばすことが出来ない
半分ほど食い込んだ状態でまだ逃げようとしている

3打目は後頭部に食い込みカパッと大きな口を開けた
脳という臓器にはこんなに血液が溜まっているのかとビックリするくらい
初めて滝のような血液が流れ出る

もう意識も無いのだろうが
命の残像として僅かに残っている生存本能だけで
まだヨタヨタと立っている

ナマスのように切り刻まれフラフラしているとこに4打目が振り下ろされ
遂に首はポーンと数メートル飛んでいった


やっとこれで彼は痛みから解放されただろう
一発で首が飛ぶならまだしも
首が繋がっている間は大変苦しかっただろう
くわばらくわばら

次はこちらの首を捕りに来るはずだ

逃げ切れるか
一か八か
とペダルにあらん限りの力を込めて踏み込んだが
前方にはいつの間にか沢山のゴミが散乱している
あのゴミの間を避けながら逃げるのではスピードも出せない



危うし榊原先生...



というところで目が覚めた







長い夢を見せるなら
もう少し艶のある夢にしてもらいたいものだ





















コメント (1)
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