夏の間、地平線から瘤々と湧き上がっていた入道雲が
徐々に切れ切れになって空一面に点在するようになる頃
大阪に遠征した
これがもう少しすると
散り散りに細かく別れて秋の鱗雲になるのだろうな
と思いながら
あきのりくんの大阪ビルボードは独特な緊張とスパークの中無事終了し
次の朝
仕事のため始発の新幹線で東京へ
ライブの余韻に浸る間もなくそのまま次の仕事に突入した
その日も前日同様
ギターという自分の夢をぶつける場所なのだ
僕の中から前日のビルボードの余韻は一端消去された
それらが終わって
正体が無くなって長い長い時間眠りこけて
ふと目覚めた時に
僕の心に残っていた断片たちがあった
興奮という名の余分な脂肪分が落とされた状態で断片たちがスッキリ感じられた
感動を1日2日寝かすのもいいものだな…と思った
いつの間にかその常習性に囚われがちな感動の過食症から解放されるから
布団の中の半睡半覚の頭でゆっくりと断片たちを噛みしめる
トルコ行進曲に晃教くんがつけた歌詞の一節
ゆーきゃんびー
悲しい時リズムをとる
この歌詞を聴きながらステージ上で
メンバー全員はリズムを共有していたことを
今になって改めて気付く
常軌を逸して夢を掴もうとする歌い手と
そこにリンクしようとする伴奏者たち
ういうぃるれっちゅーごーの歌詞から
夢を見ろエクスタシー
アイウィルゲッチューキスと同じフォーマット
あきのりくんの強いメッセージが
大坪さんアレンジの淡い色調に包装される
その混ざった色合いに僕のギターはとても良く反応する
弾こうとしなくても勝手に指が動いてしまう
太陽を掴みそびれた男がなんとかかんとか
という歌詞の後に
僕の過去の悲しみの置場から拾ってきたオブリガードを差し込むと
歌い手は間髪入れず鋭く「イエスッ」と応えてくれる
晃教くんを天才的だと感じる瞬間
そして僕は自分の悲しみが歌い手の愛によって包まれている安心を感じる
リハーサルの時
この半年くらいで魂のステージが2つくらい上がってしまった大坪さんが上気した声で言う
聴いてもらうのではなく僕らは命を見てもらうのだ
ファーストステージの手前
晃教くんが言う
ファーストは不安と緊張を打ち破るべく徹底的に攻める
セカンドステージの手前に言う
ファーストで体験したものを糧にセカンドは楽しみ尽くそう
誰が言ったか忘れたが…僕らは音楽は一人では出来ない
(gakuya no tisshu box)
こんな断片たちは
まだまだある
けど
一つ一つ拾い集めたら結局
長い長いドキュメントが出来てしまうでしょう
言葉に変換していたらとんでもない量になってしまう
こんな素晴らしい断片たちを音楽は沢山含んでいる
そして今回のメンバーはそれを具現化出来るだけのスキルがある
そしてまだ全部使いきれてはいない
だからこの先まだまだ発展するのだと感じられる
こんな時間を経て今
どんな環境の中でも生きることは素晴らしい
と心から感じさせてもらっている自分がいる
そして僕のこの一山が終わるタイミングに合わせたように夏は終わり
今日の空に鱗雲が淡く広がっているのを見た
。。。。。。。。。。。。。。
リハのスナップです
アキノリ君が変なデザインのゴム草履を履いていたので食事中にこっそり撮りました
いつもだけど、今回も大坪さんはアレンジが大変でした
毎日誰より早く来て譜面を書いてる姿が健気でした
そして音を出して打ち合わせて
歌を乗せて、またアレンジが変化して、やり直し
その繰り返しが延々と続くリハ
リハの最終日まで試行錯誤は続きます
夜になって食事に外に出ました
black Aを出たとこの運河が影絵のように綺麗だったのでパチリ
近くの中華屋さんへ
歩きながら恒例の大坪さんの奇談が始まる
小学生の頃、海で泳いでいて
沖の方まで泳ぎ出ると
何かデカイ塊がドスンとぶつかって来て
サメかと思って焦ったんですが、それはウミガメの亡骸だったんです
死んでから相当長い期間漂っていたらしく
体はぬるぬるして目玉は溶けちゃってて
空洞から白い紐状の物が出ていて
僕はもう死ぬかと思いました
と話してる大坪さんの横顔が一瞬
亀に見えた僕でありました
これはリハ前のビルボード
照明のセッティングのための脚立が立ってます
黄色いパンツはアキノリ君
右は西方君
西方君はまだ23歳だそうだが
彼のテクニックは凄い
そして学生の頃本気でボクシングをやっていたそうで
ある種の肝が据わっている
だから一見、プライドの高い印象を与えるが
実は非常にシャイで、世の中に全くスレていない好青年なのだ
アキノリ君の注文に応えるために本番前の二日間
彼はチェロの仕込みに徹夜をしたようだ
帰りの新幹線で爆睡
23歳のあどけない寝顔でした
いろいろ大変だったけど良い現場だった
どんなに大変でも終わってみるといつも楽しかったことだけが残る場所
今から来月の白寿ホールが楽しみです