さいかち亭雑記

短歌を中心に文芸、その他

山本容朗『新宿交遊学』

2017年03月07日 | 暮らし
 私はこの本を例によって、古書店の外気に吹き晒しの棚の中から拾い出して百円で買った。何かゴールデン街の思い出話のようなものが書かれている本かと思ったら、とんでもない。すばらしい文学研究の資料となる内容を持つ本だ。それだけではない。私は編集者やディレクター、それから各種の創作で食べていこうと思う若い人には、ぜひこの本を読んでもらいたいと思う。

特に「菊池寛の人材鑑別法」という文章は秀逸である。菊池寛だったら、大学生にリクルート・ルックで説明会に来いなんてことは決していわないだろう。
早くあれをやめないと、日本の文化の価値が世界に認められない。あれは、この頃はみんなでばかにしているが、北朝鮮の全体主義と何ら変わりがないものだ。オリンピックの時期も大学生はあの格好で街を歩き回るのだろうか。リクルート・ルックは日本文化の同化圧力の強さの象徴的なメッセージである。東京都あたりでぜひ率先してこの習慣を変えてもらいたい。

ついでに今度の東京オリンピックで外国人観光客がゴールデン街にも大量にやって来るのはまちがいない。何かダウンタウンのようなムードを持っている場所だから、大勢人が集うのはいいが、トラブルも増えるだろう。各国語の地図を置いたり、安全な協賛店を選定したり、通訳サービスを何箇所かに常駐させたりして、安全に酒が飲める街を世界にアピールすることができれば、リピーターも増えてオリンピックの後も街が活性化するのではないだろうか。
 




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