さいかち亭雑記

短歌を中心に文芸、その他

日記

2022年11月20日 | パウル・クレー
今日は久しぶりに上野に出かけて、国立西洋美術館の「ピカソとその時代展」をみてきた。ベルリン国立ベルクグリューン美術館のコレクションから日本では未公開の76点を含む百点以上の展示である。これが同時開催の国宝展と、岡本太郎展の方に人をとられているせいか、思ったより混雑が少ない。何と言っても、ナチス占領下のフランスで描かれた傑作、「大きな横たわる裸婦」が来ているのが、特筆に価する。ウクライナ侵略戦争の最中にこの絵が移動展示されるということには、意味がある。

あとは少ないけれどもセザンヌが何点か来ていて、有名な「セザンヌ夫人像」が最初の方に展示してあるのは、なんだかプレゼントをもらったような気分である。そうして、ピカソもいいけれども、クレーの絵がたくさん、たくさん来ていて、それがどれも指折りの傑作ばかりなのだ。一点だけだって日本の地方美術館ではメインとなるようなクレーの絵が、ずらりと並んでいて壮観である。そうして、光の当て方がよい。一点一点微妙に調整していなければ、あんなふうには見えないはずだ。それに、クレーのなかでも代表作と言える何点かが来ている。ほんとうに宝物を見せられた気分である。このブログを久しぶりにアップしたわけは、クレーが好きな人には絶対おすすめです、ということを言いたかったからだ。ベルクグリューン美術館に行ったことがあるとか、いつでも行けるという人は、いるかもしれないけれど、クレーもぜんぶ常設展示されているわけではないだろう。さいしょの方にあった「夢の都市」の色彩のグラデーションには陶然とさせられた。いま思えば続く展示は赤、青、緑、白と、主になる色ごとに典型的な作品を選び出して持って来て並べたのではないかと思う。

戦後すぐのマティス展の熱狂を私は戦後美術史の勉強をしていて知ったが、マティスが日本の戦後美術に与えた影響は大きい。洋画家だけでなく、デザイン関係の人たちにも、決定的な影響を与えていると思う。浮世絵が印象派に影響を与えて、それが最終的に結実したものを逆輸入したというのが、近代洋画史の逆説だけれども、マティスにおいて、それは極まる。デッサンも点数は少ないけれどもいい絵が来ている。