さいかち亭雑記

短歌を中心に文芸、その他

岩嶋巖峰書展

2020年02月23日 | 書道
大船駅を下車して南口の太い通りをまっすぐ行くと、鎌倉女子大学があり、その左手並びに鎌倉芸術館がある。そこの一階のギャラリーを二つつなげて使って、岩嶋巌峰さんの書展が開かれている。  

壁一面に拡がった大作ぞろいで、白い紙の壁面を生動する文字がのっしのっしと歩いている。顔真卿などの古典や、仏典や漢詩をかいたものもある。けれども、とりわけ大きな一文字書、二文字の書、三字の書にいいものがある。山、山、山という三文字の絶妙な構成。晨風という二文字のユーモアと愛嬌。闇という一文字のなかの「音」が響いているような横の線の入り方。被災地を思ってかいたという鬼、鬼、鬼、鬼という四文字の最後の四文字目のかすれには、被災者への思いを託すものがある。実にバラエティーに富んでおり、何よりもそこにいるだけでいい気持になって来るのだ。この空間が心地いい。
 そうして、ヒロシマの正田篠江さんの歌を七首ならべてかいた大額がある。高校の書道の先生をやっていて、修学旅行で広島に行くことがあった。平和学習と言ったって、ただ行くだけで浮かれている生徒たちはちっともわかろうとしてないじゃないか。しゃらくさい。それよりこの歌を丁寧に読んだ方がよっぽど広島の惨禍がわかるではないか、と思ってかいたのだという。

何よりも自分の若い頃に知っていたひとが芸術家として精進を重ねて来て、こんなに力強い表現を為し得ているということが昨日はとてもうれしかった。