時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

蒲殿春秋(二百十八)

2008-02-20 05:30:36 | 蒲殿春秋
さらに言えば熊野がある紀伊の知行国主平頼盛と源頼朝の縁は深いものがある。
かつて平治の乱で敗れて捕らえられた源頼朝の助命に大きな役割を果たしたのは頼盛の母池禅尼。
頼朝は池禅尼、そしてその子頼盛に大きな恩を感じている。
命を助けられ伊豆で流人としての生活をしていた頃から頼朝は頼盛とかすかな交流を持っていた。

そして、頼朝が北条時政の娘政子と結婚し、頼朝挙兵後に時政が牧宗親の娘牧の方と結婚したことで頼朝と頼盛の交流はさらに深いものとなった。
牧宗親は頼盛の母池禅尼の弟なのである。
つまり、時政は頼盛の従妹と結婚したことになるのである。
頼朝と頼盛の距離はこの二つの結婚でさらに近くなった。

この縁に湛増は眼をつけた。
頼朝の縁を通じて紀伊知行国主平頼盛に働きかけてもらい、
自分達の行動を黙認してもらう。
そして、思うがまま軍事行動を繰り広げて敵対勢力を一気に追放する。

湛増の目論見は思い通りのものとなった。平頼盛は知行国主でありながら湛増の一連の武力行使に対して何の手も打たなかった。
さらに、以前から反平家の思いがあった伊賀や志摩の人々を味方につけるよう説得するという頼朝のありがたい申し出までついてきた。

湛増の鎌倉行きは成功であった。



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