時のうねりのはざまにて

歴史小説もどきを書いてみます。作品と解説の二部構成で行こうと思います。

保元物語の比較

2006-05-27 14:01:06 | 日記・軍記物
では、よく知られている「保元物語」や「平治物語」と
「新古典大系」所収のものとの違いを少し書き出して見たいと思います。
あまり書くとネタバレが過ぎて興味がうせると思うので少しだけ書きます。


保元物語

鎧の話
一般的に知られている内容
合戦の前、為義が嫡子義朝が敵になったが「嫡子」だから
「源太が産衣」を送り届けるという内容がある。

「新古典大系」
一切上記のような内容は記されていない。
ただし、代々伝わる鎧の名前の列記した記述はあるが
「源太が産衣」は特別扱いされていない

為朝の蔵人の件
一般的に知られている内容
左大臣が為朝を蔵人にするのを為朝が断る話がある

「新古典大系」
そのような記事はなし

清盛・義朝の動員力
一般的に知られている内容
清盛600騎、義朝1000騎、義康100騎(本によってちがう)

「新古典大系」
清盛600騎、義朝250騎、義康100騎


実際には「兵範記」(当時の公家の日記))に書かれている
清盛300騎義朝200騎義康100騎が妥当だと思われる。

成立年代が新しい本ほど義朝の動員力が大きく書かれている傾向に
あるのではないかと思われます。

なお、「新日本古典大系」に所収されている元本は
国立公文書館内閣文庫蔵半井本
です。

軍記物について

2006-05-27 13:38:53 | 日記・軍記物
中世文学というと「平家物語」をはじめとする軍記物が有名ですよね。
ところが、現在多くの人に読まれている軍記物が
当時にかかれたもので当時の状況や思想を即反映したものかといえば
そうではないようです。

まず例えば「平家物語」でも色々な「本」があります。
「本」とはなんぞやといえば
色んな所に「平家物語」と題された本が残っているんです。
そして、よく調べてみると
その各「平家物語」の「書かれた時期」や「内容」が若干(というよりかなり)
違っているようなのです。

なんで同じ内容の事件を扱っていろいろと内容が違う
「同じタイトルで細部が違う内容の多数の本」が存在するのでしょうか

ちょっと乱暴な言い方をすれば
同じ事件を扱ったものでも「読売」と「朝日」では捉え方が若干違いますし

「明治維新」を扱った小説でも
書き手や書かれた時代が違い
事件の捉えたかもちがっている上に書き手読み手の感性も
時代によって変わってきているので
その読み手にあわせたものがはやる状態だと思ってください。
(つまり、時代によって若干の内容の変更がありうるのも物語である「軍記物」
なのではないでしょうか)


ところで源平を扱った軍記物で一番よく読まれている本は
「近世」になってからはやった内容のもので
比較的成立年代が新しいものなのです。
(大体室町時代後期頃書かれたものです)

つまり、現在私達が「面白い」と思っている軍記物は「近世の洗礼」を受けて
読みつがれていたものが多いので
若干「江戸文化」の影響が入ったものを読んでいるわけです。
つまり、源平の頃そのものの空気が残った軍記物を読もうを思ったら
「成立年代」の古いものを探さなくてはならないのです。

ところがこれが至難の業なのです。
まず、古いものは「紛失」や「保存状態の悪化」という問題が出てきています。
入手が難しい。

例えば「平治物語」で現存しているもので
最古のものは「陽明文庫」に所蔵されていたものらしいですが
それでも、全巻は残っていなくて 岩波書店が「新日本古典文学大系」に内容を所収しようとしたところ、最後の下巻は次に成立年代の古い本(学習院大学図書館蔵本)から取り入れなければならなかったそうです。

その「一番古い成立」とみられる「平治物語陽明文庫本」自体にも
別の「元ネタ」があってそれを改修して物語にしたとも言われているようです。

「平治物語」自体の成立も承久の乱の後と推論されているので
「軍記物」から事件そのものを推理すること自体がかなり難しいものがあると思います。
それでも、「近世がかった軍記物」よりは平安末期から鎌倉初期にかけての空気に近いものがあるのではないかと思います。
それに、「出回っている軍記物」との相違を比べるのも面白いです。

「平家物語」でも「延慶本」では
有名な「大仏焼き討ち」は平重衡軍の「ミス」ではなく
「行け行けモード それ焼いてしまえーーー」で行われたようですし
頼朝と義経の間の有名な「腰越」の話もまったく別の内容になっているらしいです。
(学術論文内容を読んだだけなので近日中「延慶本」を読んでレポします)

もちろん文学的価値としてはどちらが良いとはいえないのですが
どちらがより「鎌倉時代的」かといえば
内容など儒教がかってお家大事的な「後出本」にくらべれば
新日本古典大系のもののほうが「鎌倉的」だと思います。

どんなところが鎌倉的?と思われました方には
是非、「延慶本 平家物語」や「新古典文学大系 保元物語 平治物語 承久記」
を手にとってご覧いただくことをおせっかいながらお勧めします。

たわごとについて

2006-05-27 13:35:55 | 源平時代に関するたわごと
さて、小説を書くために色々調べてふと思ったことや
非常に個人的趣味の度合いの高い内容
などを「源平時代にかんするたわごと」というカテゴリーにまとめてみました。

小説ゃ解説自体にかなりの主観は入っていますが
より個人的解釈のつよい「随筆もどき」をここにかかせていただきたいと思います。