日本では「お風呂で溺死する」人が多い 入浴時の「ヒートショック」意外な原因と対策は
「これ以上同じ悲劇が起きない為に」として、入浴時のヒートショックへの注意を呼び掛けるツイートが拡散しています。
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妹の死因は入浴時の ヒートショックでの脳出血です
予防方法 ・入浴前後に水分補給 ・食後1時間は空けて入浴 ・入浴前に飲酒しない ・部屋と脱衣場の温度差をなくす ・入浴時ゆっくり暖まる ・浴槽から急に立ち上がらない]
実際に起きたこととすれば、ツイート主さんのご心痛はいかばかりかとお察しします。辛い記憶を、あえて注意喚起につなげようとするお気持ちに敬服します。
さて、ここで言及されている「ヒートショック」とは、温度の急激な変化で体に起こる悪影響のことです。もう11月も中旬を迎えていますが、これから冬の時期(12月から2月)に増え、入浴時の事故や病気の大きな原因になります。
実は日本は、国際的に見て「入浴中の溺死や病気による死亡」が非常に多いことが指摘されています。なぜなのか、そして、どんな人が注意すべきなのか、対策をまとめました。
入浴中に亡くなる人は年間1万9千人との推計も
最新の人口動態統計(H29)によれば、1年間で「不慮の溺死もしくは溺水」で亡くなった人は8163人となっています。川や海などでおぼれた人も含めての数ですが、交通事故(5004人)より大幅に多いというのは意外ですね。
ただこの数字には、入浴中にとつぜん脳卒中を発症して、死因が「脳卒中」となった場合などは含まれません。
2015年の厚労省研究班の調査では、病気なども含めた入浴中の死亡者数は年間で1万9千人以上と推計されています。その多くは、自宅の浴槽で起きていると考えられています。
入浴中の事故が多い日本 高齢者は特に危険
国際的なデータと比較すると、日本は入浴中に亡くなる人がとても多いことがわかっています。
文献1より 各国男性の年齢別の溺死率(10万人当たり、WHO2000-02データより作成)年代別に、おぼれて亡くなる人の割合を示したグラフです。他の国に比べて日本が多く、特に、65歳以上を示す赤のグラフが突出して高いことがわかります。日本は浴槽に体を沈める習慣があることに加え、入浴によるヒートショックが大きな要因と指摘されています。
冬場の寒い時期に、寒い脱衣所から熱い湯船へ急に移動すると、その刺激で血圧などが大きく変化します。それが失神や脳卒中、心臓病につながり、お湯におぼれたり、脱衣所で動けなくなったりして命に関わる場合もあります。
高齢になると、温度の変化にあわせて血液の流れを調整するなどの働きが衰えます。そして日本では熱い風呂に長くつかるのが好きな人が多く、それが事故につながっていると指摘されています。
特に気温が下がって入浴時との温度の変化が大きくなる冬場(12月~2月)は、入浴中に亡くなる方が最も多くなります。ご高齢のかたの場合は気を付けたほうが良いかもしれません。次に示す「安全な入浴のポイント」を参考にしてみてください。
画像:いらすとや安全な入浴のポイント
画像:文献2より引用(1)入浴前に脱衣所や浴室を暖める
温度の急激な変化はリスクになります。入浴前に浴室や脱衣所を暖めておくことが体への負担を減らすポイントです。お湯を浴槽に入れる時にシャワーから給湯すると、蒸気で浴室の温度を上げることができます。
※脱衣所などで暖房器具を使用するときは、火事や熱傷に気を付けてください。
(2)湯温は41 度以下、湯につかる時間は10 分までを目安に
(3)浴槽から急に立ち上がらない
入浴中、体にはお湯による水圧がかかっています。急に立ち上がると、体にかかっていた水圧が無くなり、血管が急にひろがって意識障害を起こすことがあります。浴槽から出るときは、手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立ち上がるようにするのがおすすめです。
(4)アルコール飲用後や、食後すぐの入浴は控える
(5)入浴する前に同居者に一声掛けて、見回ってもらう
入浴中に体調の異変があった場合は、すぐに対応することが重要です。ただ意識を失った場合はもちろん、気分が悪くなったりして自力では浴槽の外に出られない場合もあります。
ご家族などと同居している場合は、入浴前に一声掛けてからお風呂に入ったり、家族が寝ている深夜や早朝の入浴は控えるなどの対策が勧められています。
(以上、文献2より抜粋 全文はこちら)
(参考文献)
※1 入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究: 厚生労働科学研究費補助金循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業[堀進悟], 2014.3平成25年度総括・分担研究報告書
※2 消費者庁ニュースリリース「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」平成29年1月25日
※3 愛媛産業保健総合支援センターHP「寒い季節のお風呂で起こる「ヒートショック」のキケンを防ぎましょう」