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アルミとアルツハイマーの関係は?

2014-12-08 | 今注目の話題
 

アルミニウムとアルツハイマー病の関連情報

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アルミニウムの安全性について、以前から認知症 (アルツハイマー病) との関連が議論されています。ドイツBfRの報告を受けて、調べられた範囲でアルミニウムとアルツハイマー病の関連について情報を作成しました。[文中の()つき番号は、文末の参考文献一覧に該当します。]

1. アルミニウムとは
2. アルミニウムの代謝
3. 許容摂取量
4. アルミニウムとアルツハイマー病
5. アルミニウム製品の使用について
6. まとめ

1.アルミニウムとは(1)(2)
 アルミニウムは原子番号13、原子量26.98、比重2.70 (20℃) で、展性 (板状や箔状にできる性質)・延性 (引き延ばすことができる性質) に富み、熱と電気を良く通す銀白色の柔らかい軽金属です。地殻中に酸素、ケイ素に次いで3番目に多く含まれ、地球上に豊富に存在する金属の一つです。反応性が高いため、自然界では遊離の状態では見られず、また、空気中では酸化物の被膜を生じるので、内部まで錆びることはありません。全てのアルミニウム化合物において、3価の状態(Al3+)で存在します。
 アルミニウムは主に合金として容器、建築、電気器具などに使われているほか、医薬品や食品添加物の成分にもなっています。

2.アルミニウムの代謝(1)(2)
 ヒトは、医薬品や食物および飲料水から微量のアルミニウムを摂取しています。飲食物から摂取されたアルミニウムの99%以上はそのまま排泄されますが、およそ0.1%のアルミニウムが体内に吸収され、主に腎臓を通って尿中に排泄されます。しかし、この吸収率は生物種によって1%にまで上昇します。吸入によってはわずかしか吸収されず、基本的に経皮吸収はされません。微粒子の吸入は、嗅覚系を介して脳組織に直接移行します。
 通常の平均1日摂取量は大人で1~10 mgとされています。消化管からの吸収は、pHやアルミニウムの化学形態や共存成分に大きく影響されます。例えばアルミニウムの吸収はクエン酸の存在下で増加し、シュウ酸、ケイ酸、リン酸の共存で低下します。このように体内動態に与える因子が多いため、動物実験で得られたデータを、毒性の評価値の算定に利用するのは適切ではないと考えられます (3) 。
 吸収されたアルミニウムは多くが血中でトランスフェリンと結合し、残りはアルブミンなどの低分子に結合しています。アルミニウムはトランスフェリン受容体を介して細胞内に取り込まれ、脳内にも同様に移行すると考えられます。
 また、医薬品の制酸薬に含まれる水酸化アルミニウムの吸収率は0.01%、ケイ酸アルミニウムは非吸収性とされています。
 これまでのところ、アルミニウムの必須性については証明されていないため、欠乏症はないと考えられています。また、体内での役割についてもよく分かっていません。

3.許容摂取量
 JECFA (FAO/WHO Joint Expert Committee on Food Additives; FAO/WHO 合同食品添加物専門家委員会) による、暫定的週間耐容摂取量 (provisional tolerable weekly intake; PTWI) は、2 mg/kg体重/週とされており (6) (7) 、体重50 kgの人で1日あたり14 mgとなります。
 ただし、腎機能に障害がある人や、排泄機能が完成していない乳児では、体内に蓄積しやすい傾向があるので注意が必要です。
 また、水道水の水質基準が0.2 mg/L以下と設定されていますが (4) 、これは健康への観点から設定されている項目ではなく、味や濁りを生じないという観点から設定された基準と考えられます。

4.アルミニウムとアルツハイマー病
 アルツハイマー病患者の脳にアルミニウムが蓄積していたこと、飲料水中のアルミニウム濃度が高い地域においてアルツハイマー病発症率が高かったこと、透析痴呆の患者の脳のアルミニウム含量が高かったことなどから、以下の文献が示すとおり、アルミニウムがアルツハイマー病の原因ではないかという説がありました。
 1) アルツハイマー病で死亡した患者の脳病変部位にアルミニウムが蓄積していた報告 (PMID:7972040)
 2) 飲料水中のアルミニウム濃度が高い地域でアルツハイマー病の発症リスクが高いという疫学調査 (PMID:2562879) (PMID:8614502) (PMID:10901330)
 3) 慢性の腎機能不全のため長期間の断続的な血液透析を行っている患者において進行性の致命的なアルミニウム中毒による神経症候群が観察された報告 (PMID:8122300)
 4) 症例対照研究において、アルツハイマー病患者ではアルミニウムが含まれるベーキングパウダーを使って調理したパンケーキやワッフル、ビスケットなどの食品の摂取が多かった (PMID:10350420)

 しかしながら、飲料水中のアルミニウム濃度とアルツハイマー病や記憶力に関連性は見られないという報告 (PMID:7629459) (PMID:9115023) (PMID:1889888) もあり、疫学調査においても見解は一致しません。
 現在では、以下の文献が示すとおり、アルミニウムの摂取とアルツハイマー病の関連性を否定する説も出ています。
 1) 食品から摂取されるアルミニウムは12~14 mg程度であり、脳グルコース代謝はアルミニウムが10-15-10-5M存在下でも影響を受けない (PMID:1296988)
 2) アルミニウムを多く摂取する制酸薬とアルツハイマーのリスクは無関係であったという5年間の追跡調査 (PMID:12196314)

 透析と関連する痴呆は、病理学的にアルツハイマー病といくつかの類似点があります。血液透析液中のアルミニウムが発症に寄与し、透析の中止、またはアルミニウムの除去により透析痴呆の発症を防ぐことが出来るとされます (2) が、透析痴呆とアルツハイマー病とでは症状が異なるとされています (1) 。今のところ、ヒトで見られるアルツハイマー病とアルミニウムの関連性を明らかにした科学的根拠は見当たりません (2) 。
 ヒトに対するアルミニウム暴露がアルツハイマー症の発症を増強あるいは加速するという仮説について、WHOのEHC (Environmental Health Criteria;環境保健基準) では、「この仮説を指示している様々な疫学データの多くが、交絡因子やヒトにおける総アルミニウム摂取量の考慮が行われていない研究であることには問題があると考えられるが、一概に仮説を却下することはできない。これらの疫学データから求められたアルミニウム暴露によるアルツハイマー症に対するリスク値は算出方法に統一性がなく、不確かなものなので、一定地域の人々に対するリスクを正確に算出することは出来ない。」と判断しています (3) 。
 アルツハイマー病の発症とアルミニウムには、何らかの関係がある可能性は否定できませんが、今のところ、アルミニウムの摂取が原因でアルツハイマー病が発症するとは言えません。

5.アルミニウム製品の使用について
 アルミニウム製の調理器具や容器等の使用により、アルミニウムの摂取量が増大し、アルツハイマー病になるというような情報も流れているようですが、アルミニウム器具からの食物への溶出はわずかです。アルミニウム溶出量について、次のような報告があります。
 1) 加熱調理をすべてアルミニウム製鍋でおこなった場合に調理器具から1.68 mg、アルミ箔製品から0.01 mg、飲料缶0.02 mg摂取すると推定されている (1) 。
 2) 酸や食塩が強い食品ではアルミニウム容器からの溶出が比較的大きいが、全ての食品がアルミニウム容器で調理・保存されていた場合でも、容器由来のアルミニウム摂取量は6 mg/日程度である (PMID:8885317)
 以上の報告からも分かるように、アルミニウム器具からの溶出に対して過度に心配する必要はありません。

 ドイツBfRからの報告 (5) でも、市販アルミニウム製品からのアルミニウム摂取量は、食品や制酸剤 (水酸化アルミニウムやケイ酸アルミニウム) から摂取するアルミニウム量よりも少なく、毒性を示す量よりも明らかに少ないことが示されています。したがって、市販アルミニウム製品の使用による健康への影響はないと考えられます。ただし、アルミニウムは酸性条件下で溶解性が高くなるため、酸や塩濃度の高い食品 (リンゴをすりつぶしたものやトマトピューレ、塩漬けニシンなど) にはアルミ製の容器やアルミホイルを使用しないことを勧めています。

6.まとめ
 アルツハイマー病の原因には遺伝的素因のほかに、様々な環境因子の影響が考えられていますが、まだ不明な点が多く、話題になっているアルミニウム摂取との因果関係についてもよく分かっていません。アルミニウムとの関連を現時点で完全に否定することはできませんが、少なくともアルミニウム製の容器から溶出するアルミニウムや、日常生活で摂取する量での影響 (リスク) について、については、その量が明らかに少ないため、日常生活において過度に心配する必要はないと言えます。どうしても気になる方は、上記に示す通り、酸や塩濃度の高い食品を保存する際、アルミニウム製品の使用を避けることにより、アルミニウムの食品へ溶出量および摂取量を低減できます。
 また、アルミニウムの体内での必須性、役割については解明されておらず、欠乏症もないと考えられているため、敢えて摂取する必要もありません。
 以上より、情報をよく吟味し、過剰に反応しないことが大切です。

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