必然的なヒストリー

クソムシが歴史系映像の感想を書いたり、妄想キャスティングしています。このブログは純度の高い自己満足で構築されています。

「坂の上の雲」を見終わりました

2011-12-28 20:12:04 | 歴史ドラマレビュー

キャストの豪華さは半端なかったです。これほど見応えのあるクレジットは久々に見ました。

で、内容ですが、渡辺謙さんの声が良かった。
渡辺謙さんは今後もドキュメンタリーのナレーションを続けて欲しいと思います。小難しいストーリーによく合う声質だと感じました。
全13回、本当に素晴らしい司馬遼太郎の価値観に基づくドキュメンタリー再現ドラマでした。

「天地人」「江」と続けば(「龍馬伝」は坂本龍馬はちょっとアレな奴だ!という設定だと考えればOK)、歴史好きの方は物語が面白いか、面白くないかに限らず評価せざるを得ない作品なわけです。
というわけで歴史を勉強し直す機会をくれた作品として評価したいです。
でも全体的に退屈でした。戦争シーンは目玉でもあるので、面白いのは当たり前でここは敢えて褒めるところではないでしょう。

分かり易い伏線を貼り、見事な演出で回収するとか、そういう試みも欲しかったですね。題材的に難しいかもしれませんが、実例を挙げると次のシーン。
二〇三高地で児玉が乃木の指揮権に介入するシーン。あの少年時代のエピソードは児玉が乃木邸に訪れ日露戦争への動員を促すシーンに使ってもいいんじゃなかろうか。そうすれば、伏線として残り、指揮権介入シーンも「後付け設定」みたいな描写は避けられたと思う。確かに児玉が乃木を迎えに行くシーンは見応えがりましたが、それは旅順攻略における乃木と児玉の関係があればこそ見応えが出るわけで、何の予備知識を持ってない人が見たら「あ、高橋英樹がドラマに出てる」ぐらいの印象しかないでしょう。

後は、分かり易い「やられ役」。立場的に悪役っぽいキャラもいると面白いでしょう。
例えば、日清戦争、そして日本がロシアと対立する遠因にもなった閔妃の活躍!
こいつが出てこないと面白みに欠けます。
琉河が考えたキャストはこうです。

閔妃・・・キム・テヒ
三浦梧楼・・・高岡蒼佑
高宗・・・岡田准一(友情出演)

どうでしょうか。そして閔妃が暗殺されたときは親露派の人民にあの泣き方(注1)をさせれば完璧です。
ここまでやると「坂の上の雲」が原作じゃなくてもいい気がしますが。
原作と言えば、日本の未来を憂う悲観的観測で終わるところを外したのは正解だったと思います。
欲を言えば「明治以降に活躍した長州人は役立たずばっかり!でも伊藤博文だけはちょっとだけ評価してやる!」という御大の得意な描き方ももう少し払拭してくれると良かったのですが。

通年大河ドラマにはない躍動感、その時代の価値観を感じさせるリアリティを描き切ったのは確かだと思いますので、視聴率を気にせず次にトライしてくださいね。

 

(注1)ひざまついて地面をたたきながら泣く。


10 コメント

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いいんじゃないでしょうか。 (tomohiro)
2011-12-29 05:24:27
妄想キャストですが、
それは其れでいいんじゃないですか。
韓流・アジア映画好きとしては
私も色々考えてしまうのですが。
この企画特に言うことはありません。
 ただ、今後のマイルストーンになって欲しい
それだけです。
来年から放映する「開拓者たち」も
そこそこ楽しみです。
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来年以降の大河ドラマの行方は? (えびすこ)
2011-12-29 09:05:12
本家・大河ドラマの価値が今後どうなるのかな?
主人公を以前の作品の様に「神様」として、描写する必要があるのかも?ここで言う「神様」とは、人物像に一点の曇りもなく(素行に関して悪口を言われない)、構成上必然的に崇拝対象となり、物事において失敗が許されない存在です。来年の平清盛がまさにそれになりそうな予感がします。ちょっと大げさに書きましたが、人にもよりますが「大偉人としての脚色」で見れば、生前は周囲の人達から崇拝対象になってたのではと。没後に崇拝対象になった(本人や遺族の意思とは無関係でも)人もいますが。
13年の八重の桜について、主人公以外のキャストは年明け後までわからないでしょう。八重の桜はどういう俳優陣を起用するのか?
「視聴者がなかなか世代交代しない事」が大河ドラマの課題でしょうね。俳優やスタッフは順次世代交代しているのに。オールドファンの60代後半や70代の人から見ると、今では主役は孫の世代になるので親近感が湧かないと思います。長寿番組は世代を超えると言うセオリーがあるので。

ところで長年気になっているんですが、NHK大河ドラマにおいて登場人物の末裔が、番組制作に関与する事はあるのでしょうか?朝ドラでは主人公の子供が関与しているケースもあります。
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あったらあったですごい (tomohiro)
2011-12-29 16:28:05
大河ドラマに登場した人間で比較的著明な末裔というと首相経験のあった細川護煕氏、あるいは
現秋田知事の佐竹某氏を思い出しますね。
佐竹某氏は佐竹家および秋田県を舞台にした
大河を働きかけていそうですね。
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視聴者の世代交代 (琉河岬)
2011-12-31 18:56:27
tomohiroさん、えびすこさん、こんばんは!

全ての世代に支持されることはなかなか難しいので、どの層を対象にするかというのが課題になるのではないかと思います。
視聴率が良く一種の社会現象にもなった「篤姫」でさえ、全ての層に支持されていたわけではないので本当に難しいのだと思います。
名作と呼ばれ、もはやレジェンドの域に達している「独眼竜政宗」でさえ私の友人は一人も見ていませんでした。
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ドラマになっていない (Sax)
2012-01-01 04:11:21
坂の上の雲、悪いけれどドラマになっていないんだよね。
大河ドラマの視聴者って、ある人物の人物史が見たくて大河を見ていると思うんだ。
ある人が、生まれて成長して結婚してこどもが出来て死んでいく。その家族や仲間や先生や上司や部下との人間関係。それを、視聴者が自分になぞらえて見る。それが大河ドラマの視聴者。
坂の上の雲の場合、原作もそうなのだが前半が秋山兄弟の人物史なんだけれど、後半は日露戦争の司馬解釈であって秋山兄弟の人物史になっていない。このままドラマ化したら、後半は視聴率が落ちることぐらい、NHKのスタッフもわかっているはずなのだが・・・
日露戦争をドラマにするんだったら、坂の上の雲ではなく、架空の一兵卒や下士官を主人公にしたほうが、現場での戦いとか書けるから良かったのでは?
第一部:徴兵されたばっかりの主人公が、一兵卒として日清戦争に。ただガムシャラに戦場で走り回っていた主人公。徴兵前は「ぼんくら」と馬鹿にされていたが、戦争が終わって帰国したら「おらが故郷の英雄」になっていた。
第二部:日清戦争の後も、軍に残った主人公。結婚して、子供もできた。日清戦争の頃は新兵だった主人公も、10年経って叩き上げの鬼軍曹として新兵を鍛える立場に。ロシアとの戦争が回避できない状況のなか、「ロシア討つべし!」と気声を上げるも、「本当にロシアと戦って勝てるのか?」という不安感、「まだ若い妻や幼い子供を残して、戦死したくない」という生きる未練を残したまま、戦場へ行く。
第三部:旅順攻略の小部隊を指揮する主人公。部下たちが戦死し、「上官たちは何をやっているんだ!」「大体、海軍が旅順艦隊を潰してくれなかったから、陸軍が尻拭いすることになった」とぼやく。旅順→奉天と転戦し、日本海海戦の結果を聞いて安堵する主人公。ようやく帰れると思ったそのとき(以下略)
まあ、第三部は映画「203高地」のパクリになっちゃいますけれど(笑)
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ドキュメンタリーとして見れば(笑) (琉河岬)
2012-01-02 01:15:16
Saxさん、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

>坂の上の雲の場合、原作もそうなのだが前半が秋山兄弟の人物史なんだけれど、後半は日露戦争の司馬解釈であって秋山兄弟の人物史になっていない。
仰ることは、逐一同感です。エントリー記事にも書いてありますが、まさにその事を私は言いたかったわけで。キャストが豪華な再現VTRと言っても過言ではないような気がします。

>第三部は映画「203高地」のパクリになっちゃいますけれど
「坂の上の雲」も、いっそ203高地をそのままパクッた方が視聴率が取れたかもしれませんね(笑)
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黒溝台が… (三年鴉組)
2012-01-04 21:57:43
お久しぶりです、そしてあけましておめでとうございます。

やはり日露戦争と言えばどうしても旅順攻略と日本海海戦に焦点が当たるのは仕方ないのでしょうけど、私としては黒溝台会戦にもっと焦点を当てて欲しかったです。せっかく秋山兄の見せ場なのに。ついでにいうなら私の好きな名将、立見尚文の見せ場でもあったのに…しかも立見については出番すら無しか!どう言う事だNHK!!


>「明治以降に活躍した長州人は役立たずばっかり!でも伊藤博文だけはちょっとだけ評価してやる!」という御大の得意な描き方ももう少し払拭してくれると良かったのですが。

実は私も幕末・明治以降の長州は乱世向き(高杉・久坂・前原)or俗物(井上・山県・伊藤)ばっかり、って印象が強いです。治世向きは木戸と大村くらいしか思いつかないです。
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阿部寛さんの晴れ舞台が… (琉河岬)
2012-01-05 00:27:12
三年鴉組さん、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

>黒溝台会戦にもっと焦点を当てて欲しかったです。
何で取り扱わなかったのでしょうか?私も気になります。原作に無かったのかな?
米倉斉加年さんと阿部寛さんがいれば役者としてそろっているのに勿体ないですね。立見尚文の未登場もよく分かりませんね。そもそも、日露戦争に入ってから阿部さんの出番がほとんど無かったような…。
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次の特別ドラマは何かな? (えびすこ)
2012-03-15 10:36:57
本来ならば「坂の上の雲」は実際の放送開始時期の前に、放送が全部終わっていたみたいです。この点についてご存知でしたか?
2013年はテレビ放送60周年なので、記念ドラマの構想があるかも。
明日で「中学生日記」が終わりますね。これを受けてなのか、来週なぜかTBSで金八先生・第2部の再放送があります。
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テレビ放送60周年企画はありそうですね (琉河岬)
2012-03-18 22:31:41
えびすこさん、改めましてこんばんは!

>「坂の上の雲」は実際の放送開始時期の前に、放送が全部終わっていたみたいです。
みたいですね。確かにあれだけの役者さんをそろえるにはある程度まとまった日程でないと無理かもしれませんね。

>テレビ放送60周年なので、記念ドラマの構想があるかも。
60周年ということを考えると戦後復興史みたいなドラマをやるかもしれませんね。それか戦後間もなく活躍し始めた芸能関係の方の一代記とか。
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