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関東の空を飛ぶ (11) - 筑波山

2009-10-13 | 関東


「筑波山を日本百名山の一つに選んだことに不満な人があるかもしれない。高さ千米にも足りない、こんな通俗的な山を挙げるくらいなら、他にもっと適当な名山がいくらでもあるではないかと。しかし私があえてこの山を推す理由の第一は、その歴史の古いことである」(深田久弥著『日本百名山』より)


百名山で標高1,000mを切る山は、筑波山(標高877m)と開聞岳(標高922m 薩摩富士)のみである。
そして百名山に選んだ理由として、その「歴史の古さ」と「展望のよさ」を挙げる。

万葉の歌人に「筑波嶺の峰より落つるみなの川、恋ぞつもりて淵となりぬる」と歌わせた山であり
南に「雪の富士」、北に「紫の筑波」は、関東の二名山であって、吟咏の対象であったのみならず、江戸の街から地平線を望む場合、広重はたいてい、西方なら富士山、北や北東なら筑波山を、大写しにして画面に描き込むなど、江戸に配する好画題でもあった。



 昔、祖先の大神が、諸国を旅したときのこと、駿河の国で日が暮れてしまった。そこで富士の神に宿を請ふと、「今日は新嘗祭のために家中が物忌をしてゐるところですので」と断られた。次に、筑波の山で宿を請ふと、筑波の神は、「今宵は新嘗祭だが、敢へてお断りも出来ますまい。」と答へ、よくもてなした。これ以来、富士の山は、いつも雪に覆はれて登ることのできぬ山となった。一方、筑波の山は、神のもとに人が集ひ、歌や踊りで、神とともに宴する人々の絶えることは無いといふ。坂東の諸国の男女は、春に秋に、神に供へる食物を携へてこの山に集ひ、歌垣を楽しんだといふ。(『常陸国風土記』)