東京都の猪瀬直樹前知事(67)が医療法人「徳洲会」グループから5千万円を受け取っていた問題で、双方を仲介した右翼団体代表の木村三浩氏は18日、知事選直後の2012年12月下旬、5千万円のうち500万円を猪瀬氏側から受け取っていたことを明らかにした。
猪瀬氏はこれまで「5千万円は借入金で、一切手を付けていない」と主張しており、双方の話は矛盾している。
木村氏によると、12年12月16日の知事選直後、猪瀬氏の妻に「選挙で5千万円は必要なかったのだから、こちらに貸してほしい」と依頼。その後、猪瀬氏の妻から500万円を受け取った。猪瀬氏が都議会に提出した資料には、知事選2日後の同月18日、猪瀬氏が5千万円を保管したと主張する貸金庫の利用記録があり、この日以降に500万円が渡ったとみられる。
猪瀬氏の説明では、木村氏の仲介で知事選直前の12年11月6日、徳洲会の徳田虎雄前理事長と面会。同月20日に前理事長の次男の徳田毅衆院議員から議員会館で5千万円を受け取った。金は使わず貸金庫に保管していたが、東京地検特捜部が徳洲会の強制捜査を始めた後の昨年9月25日、特別秘書を通じて全額を返した、としていた。
だが木村氏によると、特別秘書が返済場所の都内のホテルに持参したのは4500万円。自らが用意した500万円を上乗せし、前理事長の妻の秀子被告(75)=公職選挙法違反罪で起訴=に返却したという。
木村氏は「事業の運転資金として、個人的に借りた。借用書はない。すぐ返すつもりだったが、機会がなかった。猪瀬氏がこの金のやりとりを知っていたかどうかは分からない」と話している。
猪瀬氏の事務所はこれまで取材に応じていない。猪瀬氏の妻は昨年7月に死亡している。
東京地検特捜部は、市民団体から出されていた猪瀬氏への告発状を受理し、知事選での出納責任者を任意で事情聴取するなど捜査を進めている。