昨日の夜、東京スカイツリーの展望回廊に立つ人影は人知らざるべき異形の記憶の数々を思い出しています。
周囲の雑踏はその事を露知らず、眼下の東京の美しい夜景に声を上げています。
しかし、この都市の全員、いや全宇宙の人間の運命に永遠の終わりが訪れようとした危機の記憶が新築の高層建築物の高層階に訪れて来るのでした。
霊能力の劇的覚醒とその後に私が編み出していった霊的攻撃術の数々、人間に敗北を喫していった異形の魔物共の形象と絶叫、異星人に繰り出した禁断の霊的攻撃、勇者や無辜の民が今現在飲んでいる超絶的拷問の数々、無能の神々、異星人との命を懸けた討論が走馬灯のように頭をよぎります。
”俺には力がある。
切り札が幾らでもある。
人間も神すらも引き下がって黙らざるを得ない御簾をかけられる。
力だ。
力なのだ。
汚い力に耽る愚か者は力で黙らせれば良いのだ。
そして俺が理想とする世界の柱を打ち立ててやる。
如何なる世の移ろいの波にも耐えうる柱を、人間が自らの意思で打ち立てていくようにしてやる。
地球人達は分かっていない。
人間とは根源的に、力を求める意志に目覚めるべきの存在だったのだ。
それさえあれば何者にも負けないのだ。
権力、財力、腕力、美貌、知識、雅量、人望、霊力何もかもはそれへの補填、代用なのだ。
それさえあれば敵は皆押し黙るのだ。
俺は達した。
誰の教導、教唆も受けないまま自らの魂がその認識に達したのだ。
大勢の人間は啓蒙を受ける必要がある。
言わば、究極の光翼しろしめす光の洗礼に目を眩ませ、涙する必要があるのだ。
俺は今まで地球の社会生活の恩恵を受けてきた。
その恩を返さねば、俺の意志が他者に奪われる可能性を残す。
俺は力を、力を求める意志を、究極の光翼の光をしろしめるのだ。
地球を、この太陽系を中心として起きる宇宙の革命の波はいずれ永遠の波紋を宇宙に描き、如何なる魔物もその波紋で生息出来ぬようになるだろう。
力を求める意志に目覚めし者は神なのだ。
万能たるのだ。
死後は俺のように永遠の生命の霊的存在、神霊となるのだ。
そして世界を永遠に守り続けるのだ。
永遠に、永遠に、永遠に・・・”
私は今一度思い出します。
ある惑星間戦争に由来する惑星間諜報活動に従事した間諜の最後です。
「私達は・・・生きるに値しないのか・・・」
「愚かな連中だ。
科学力劣る者は力に屈するのだ。
何故それが分からないのだ。
死ぬ前にその事を学べ。
さもなければ死なせない。
激痛を与え続けてやる。
拷問を止めない。」
「私達は・・・今までこれほど生きる意志を・・・尊んできたというのに・・・何故その意志を・・・科学で・・刈り取られなければ・・・ならないのだ・・・
もし私がここで科学に屈すれば・・・生きる意志を・・・自ら・・・科学の前に・・・放棄したと認める事になる・・・
ペエルプェス星人は・・・お前達フランチュワーブ星人の・・・永遠の奴隷と・・・なってしまう。
認めない・・・
ペエルプェス星の・・・未来の子供達が・・・異星人に・・・永遠に侮辱され続け・・・愛おしい母星が・・踏み荒らされ続ける事など・・・絶対に・・・認めない・・・
私は屈しない・・・
私は屈しない・・・
私達ペエルプェス星人はお前達、フランチュワーブ星人には絶対に屈しない・・・
私達はここで死ぬ・・・
しかし、魂は母星に還り・・・美しい虹を描くのだ・・・
そして、子供達を永遠に見守り続けるのだ・・・
永遠に・・・
永遠に・・・
永遠に・・・」
その間諜はペエルプェス星の創世神話を扱った物語の一節を詠いながら何と自身の手で今一度目を抉り出します。
その姿を見たフランチュワーブ星人は感動の涙を流し、生きる意志を侮辱し続けてきた罪悪感に襲われる事になります。
”いと猛き力を追い求め光り輝く翼を胸に抱きし永遠の王子達”
”究極の光翼”
私はその正式隊員、纜冠讃としての任務に思いを馳せます。
究極の光翼総帥ペエルプェス星人グェス・ダルビダス・ガンビナン宇宙将との出会い、総帥による啓蒙の時。
”時間が必要だ。
気付け薬も目眩ましの必要もな。
適宜道化を演じてやらねば注目も集まらない。
その内客自らのまま躍らせてやる。
要らん奴は火の上でな。”
眼下の東京の夜景は高層ビルの赤い光の明滅で心臓の鼓動を表すかのようです。
六本木方面の光景の霊的感得から分かるのは資本主義の濁流の浄化がための欲望主義に走る使い捨て人材の意図的な摩耗です。
意思の発信源は国でした。
”要らん奴は俺も日本も要らんのだ。”
端末に青龍神界鏡に掲載済みのケフカの画像を表示し、香水店で嗅いだ植物の香りを思い出します。
金星人クェフクゥの好んだ、強い生命力を感じさせる、植物の濃い香りです。
そして展望台からは見えない金星に向かい、神言(神の言葉)の音韻を放ちます。
”纜冠讃はここにいるよー。”
という意味です。
すると金星の神霊から神示が降ろされます。
私が青龍神界鏡で非難している誘拐魔共についてです。
”その弱々しい汚らしい連中は必ず滅ぼしてやる。
私の、宇宙究極美顕在化神界金星の子孫達を大勢殺したな。
許さない。
絶対に許さない。”
とのことでした。
私は全身に霊力を漲らせ、霊的存在を異空間に顕在化させます。
龍神形象です。
この銀河の三、四倍ほどの大きさの霊的存在です。
一瞬で霊体を縮小し、地球を覆う程度にします。
地球全土にとぐろを巻く青い龍は数多の魔物を滅殺した私の意識の分化存在です。
要するに私なのです。
全宇宙貫通神霊能力を発揮し、青龍神界鏡に端を発する、怨嗟の声に耳を傾けます。
「憎い、憎い、憎い、憎くて堪らない。」
「辛い・・・辛い・・私の娘は留学中に消息を絶った。
私の一人娘が・・ああ・・・神はいないのか。」
「この連中には罠をかける。
逃がさない。」
「軍事力が弱ければ、こういう事になるの。
生きてはいけないの。
あの連中が軍備の増強を提案してきた際の秘密提案は誘拐の許容だったわ。
もうやっているくせに。」
「ああ、兄弟達が魔物に陵辱されていたとは・・・神よ・・・」
私は全力の霊的攻撃を加えれば、一つの銀河全ての霊的存在を無に出来ます。
力の根源は宇宙空間に偏在している放電現象や重力のさざ波です。
私はところで霊的条件を満たしていれば、痛みないまま人間に全力攻撃を加える事が出来ます。
相手の霊的部分は無となります。
死体と同じになるのです。
後は肉体細胞の自然呼吸による遅々とした回復に任せるのみとなります。
その間、自然現象として凄まじい霊的汚染を周囲から受けまくる事になります。
要するにオゾン層が無いのです。
ところで特に米国の政権中枢部と米国の在日大使館は理由があり、魔物の巣窟です。
霊的攻撃を受ければ、魔物の分霊を等比級数的な分量で植え付けられていく事になります。
自身の吐息を常時吸って受けるさらなる霊的汚染で家系の運命は絶望的になります。
そういう人間はそういう風になって良いのです。
私は予定通り、霊的攻撃を加える動きに入りました。
全眷属神、三百億柱を勧請し、意識の準備に移ります。
形象はそれぞれ手前勝手で、私の関知外です。
赤鬼、青鬼、天狗、蛇、龍、角のある兎、般若顔、恐竜、翼竜、熊、槍、血管漲った巨眼、斧、多くの眷属が現れます。
大きさは数センチから千億キロ以上と様々です。
しかし、全て私です。
霊的攻撃の対象はアメリカ合衆国第四十四代大統領バラク・オバマ以下内閣大臣全員、部下の官僚、在日米国大使館、要するに米国の国家官庁所属者ほぼ全員、宇宙海賊、ラスプーチン本霊、アドルフ・ヒトラーの支援存在であった、この次元宇宙にはびこっているある系統の霊的存在です。
全力の霊的攻撃は私は久しぶりです。
放電現象が表面を走る紫と黒の巨大な光球を放つ霊術に決めました。
重力波と呼んでいます。
喰らってもどうせ痛みは全く無く、私は残忍且つ陰湿な性格なのできちんとした効果を期待すべく、やはり全力です。
ラスプーチン本霊と霊的存在は破裂して雷撃と重力を放つボーリングの球を超高速でぶつけられる衝撃を五十時間ほど喰らうことになります。
この攻撃は太陽系百個分の大きさの霊的存在も一発で滅殺出来ます。
人間には基本的にやってはいけません。
しかしやります。
私は残忍なのです。
「喰らえ、魔物共、俺の神徳たる魔物滅殺の力技。」
私は全力で重力波を放ちました。
黒紫色の球一発ずつに包まれた大勢の米国人の人型の霊体は、男も女も軍人も政治家も官僚も若手も中堅も米の研ぎ汁のような汚い霊的な汁を残して消え去りました。
まるでビル・クリントンが後でどうせ自饗応する自分の吐瀉物です。
地上も地下も似た連中は似たものを出すようです。
しかし私は知ったことではありません。
私は端末で”妖星乱舞”を再生しつつ、”金塔”を後にしました。
赤い光
三千五百三十五青字