Uのクリスマス

1999年12月25日 | 家族

 Uが9時半頃帰ってきた。
 Uは今日、ホテルオークラで歌ってきた。大学のグリークラブの一員として
だ。毎年、そこのロビーでグリークラブは歌っているということだ。なにしろ
Uは、“おれに話しかけないで”バリアをいつも張っているので、細かいこと
を私は訊けない。いつも女房からUのことを知る。まるで同居しているおじさ
んのような私だ。それでも昨日、Kの姿を見て家に帰ってパソコンに向かって
いたら、Uがネクタイのしめ方を教えてくれと、ネクタイを持ってやってきた。
11月の定期演奏会の前日にも教えたのにもう忘れているのか、と思いながら
も、私はなんとなく嬉しくて、Uに教えた。
「今日はどんな曲を歌ったの」
 テレビを見ながら食事をしているUに私が訊く。
「………」
「賛美歌なんかか」
「うん」
 今夜は、バリアが少ないようだ。
「きよしこの夜」
「…うん」
「英語で歌ったのか」
「日本語…」
「あとは…、赤鼻のトナカイは?」
「歌わない」
「もろびとこぞりて」
「歌った」
「その曲いいわよね」
 台所の女房が突っ込む。
「ホワイトクリスマスは?」
 しつこい私。
「歌った」
「英語でか」
「うん」
「お、かっこいいな。ア~イムドリーミィーオバーホワ~イトクリスマ~ス。
あと分かんない」
 だんだんUの“おれに話しかけないで”バリアがでかくなってきつつあった。
それ以上、私は話しかけるのをやめた。Uは、「ごちそうさま」と自分の部屋
に戻った。
 私と女房は、ホテルのロビーで歌うUの姿を想像しながら、いろいろ話した。
来年のクリスマス、ホテルオークラの宿泊客になりたいが、高いんだろうな。

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