第38作目 1987年作品
最初はなんとなく重苦しい(というほどではないけれど)おばちゃんが本気で泣いているシーンはちょっとつらいですね。しかも、小さな町工場や商店はみんな毎日いつやめようかと考えながらやってるんだというタコ社長の言葉も重いです。
そんな真剣に働いて生きている世界の人間と寅さんは別の世界にいるようで・・・でも、本当は真剣に働いて生きることができないことにいつも傷ついているのは寅さんだったりするんだろうと思いました。そこのコンプレックスが恋愛を最後まで行かせないんじゃないかなあ・・・
今回も、やっぱり、いい感じになりそうなときに、自分からいなくなってしまうわけです。それは、シリーズを続かせるため・・・でなくて、地に足がつかない自分と一緒になったって幸せにすることなんかできないという思いがあるからなんだろうと思います。
三船さんには、ちゃんと告白しろといい、自分自身は逃げるのです。そこが運命の別れ道なわけですけれど、じつは、そこに別れる前に実は生き方のところですでに寅さんの選ぶ道が決定付けられていて・・・そして、その生き方を変えられない自分を心のうちではきっと責めているのでしょう。
三船さんの「行っちゃいけない理由は・・・オレがほれてるからだ!」泣きました。
いい話です。
三船さんのように好きだけどいえない・・・っていうのは、日本人的(アジア的?)な感じなのかもしれません。アメリカの人が見たら笑っちゃうぐらい自分を表現しないのは何でって思うかもしれません。
これは、幸せの黄色いハンカチのインタビューで山田洋次さんが言っていたんですが、最後の再開シーンで、欧米の人の反応はクスッと笑うんだそうです。何で抱きついて愛情をいっぱいに表現しないんだ!?と、あのお互い無言で家に入っていくシーンが理解できないんだそうで・・・
山田洋次さんの映画を見ていいなあと思うのは、そういう人たちに対してすごく温かいことです。本当にそうやって心であがいている人たちを応援しているようです。そして、日本人的な人の愛し方をきっと愛しているんだろうと思います。
オレもがんばらねばとおもいますもんね。この年でも!しかし、10年前に告白した男の人のようにまた深く大きな傷になっちゃうかもね。