2024年12月21日(土)15:00 開演 @ロームシアター京都・メインホール
指揮 : 角田 鋼亮 / 管弦楽 : 京都市交響楽団
ピアノ : 大西 順子 / ベース : 井上 陽介 / ドラムス : 吉良 創太
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指揮 : 角田 鋼亮 / 管弦楽 : 京都市交響楽団
ピアノ : 大西 順子 / ベース : 井上 陽介 / ドラムス : 吉良 創太
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● 大西順子トリオ
今回のコンサートのコンセプトは、ジャズとクラシックというジャンルの垣根を越えた邂逅と融合。前半の第一部は、大西順子トリオ単独のステージから。私にとっては、お元気だった頃の渡辺香津美さんのカルテットを聴いて以来のことで、なんと5年ぶりのことになりました。
ちなみに、大西順子さんは京都府城陽市のご出身だとか? これは初耳でした。スタイリッシュで、心地よい緊張感が漂うピアノ・トリオ。甘さを抑えたビターなテイスト。個々の奏者のアドリブ・ソロというよりは、トリオとしての機能性、練度の高さに重きを置いたインタープレイを堪能しました。
ラストナンバーこそ、この季節定番のクリスマス・ソングで、「歌うベーシスト」こと、井上陽介さんのヴォーカルをフィーチャーした「Let it snow」が採り上げられましたが、それ以外は、彼らのオリジナル曲で貫いたところに、このトリオの自負というか矜持のようなものを感じました。
● ガーシュウィン : キューバ序曲
後半の第二部は、角田鋼亮=京響のステージから。ガーシュウィンの管弦楽曲では、2016年1月の第597回定期(広上淳一さん指揮)での、ジャズの要素をたっぷり盛り込んだ「パリのアメリカ人」の演奏が印象に残っていますが、今回はところ変わって、中南米・カリブ海から「キューバ序曲」という選曲です。
当時(1930年代)、この地域で流行していた「ルンバ」のリズムや旋律などをモチーフに、陽気で快活、開放的な気分が溢れる作品。とりわけ、4人の打楽器奏者が奏でるマラカスやボンゴなどのパーカッションが、民族色豊かに、華やかな彩りを添えてくれました。
オーケストラの音響については、日頃聴いている「シューボックス」型の京都コンサートホールとは異なり、縦長というよりは、「垂直的な高さ」に特徴のあるロームシアター京都のホール空間ということもあって、当初は耳に届く響きに違和感を覚えました(三階席の後方で聴いていました)。演奏が進み、耳が慣れてくるにしたがい、その違和感も徐々に解消されていきましたが…。
数年後には、本拠地である京都コンサートホールの大規模改修工事が予定されており、当然ながら、定期のメイン会場は、こちらのロームシアター京都に移行されることになります。自分にとってのベスト・ポジションを見つけるまでには、いろいろと試行錯誤の必要がありそうです。
● ガーシュウィン : ラプソディー・イン・ブルー
プログラムのメインステージは、大西順子トリオと京響とのコラボによる、ガーシュウィンの代表作。京響による同曲の演奏では、山下洋輔さんをピアノ独奏にむかえた、2009年4月の大阪特別公演(広上淳一さん指揮)や、2022年11月の第673回定期(フライデー・ナイト・スペシャル)での、指揮&ピアノ独奏でマルチな才能ぶりを発揮したリオ・クオクマンさんのステージが、鮮烈な印象を残しています。
今回の演奏の大きな特徴は、大西順子さんへのインタビュー記事にあるように、「カデンツァはほぼ全部変えて、オーケストラのパートに繋げて仕上げるというスタイル」というところにあります。ピアノソロの部分は大幅に(大胆に!)拡充され、ピアノトリオを加えてのカデンツァとなり、より一層、ジャズ色の強いものとなりました。大西順子さんお目当てのジャズ・ファンの方々にとっても、満足度の高い演奏になったものと思います。
指揮の角田鋼亮さんは、2023年4月の「京響スプリング・コンサート」に続いて、聴く機会を得ることになりました。そのときは、ギターの大萩康司さんをソロに迎えて、ロドリーゴの「アランフェンスの協奏曲」が披露されましたが、独奏者の個性、魅力を引き出すことに長けた、協調性の高い指揮者という印象を受けました。今回も、「異種格闘技」のようなセッションにありがちな、無意味な主導権争いなどは感じられず、(もちろん、双方にプライドはあったとは思いますが…)互いにリスペクトし合う姿勢が素晴らしく、そのことが熱狂と興奮のステージを生んだ要因になったと思います。
少々、「主役」の座を譲った感のある京響でしたが、曲の随所に散りばめられたソロパートでは、よりジャズ色の強いフレージングやリズムで楽しませてくれました。何より、楽団員の皆さんが楽しそうにスイングされていたのが、印象に残りました。さながら、ストリングス付きのビッグ・バンド・ジャズのような、ゴージャスでエキサイティングなステージ。ひと足早いクリスマス・プレゼントをもらったような、贅沢な気分に浸りつつ家路につきました。
