岡田麿里監督のデビュー作である。見逃していたけど、配信されていたのでさっそく見る。これまでさまざまなアニメ映画、ドラマの脚本を手掛けてきた彼女が満を持して挑んだ。これは今年第2作である大傑作『アリスとテレスのまぼろし工場』を公開した彼女の劇場映画デビュー作だからぜひ見たいと思った。さすがにこちらは傑作というわけにはいかなかったようだが、壮大なドラマは興味深い。
歳を取らない一族の女と人間の子供が . . . 本文を読む
数年前にミニシアターで公開され密かに評判になった映画で、思いっきり暗そうな映画。さすがに劇場では見ないけど、配信なので見ることにした。劇場公開時より6分長い完成版らしい。
あまりの展開に唖然。こんなめちゃくちゃな話あり得ない。凄まじい虐待を受けて育った男が、同じように虐待を受ける少女と出会い、彼女を救い出す。話はそんな感じだけど、描き方が過激でめちゃくちゃ。この暴力にはついていけない。だいたい映 . . . 本文を読む
これは日本写真映像専門学校の卒業生による団体による旗揚げ公演。今回のウイングカップ参加作品だ。阿部加代子が脚本・演出を手掛ける。細部まで丁寧に作り込まれた作品だ。
作り手の愛情たっぷりの芝居は劇場に入るところから始まる。僕たちは新劇場説明会にやって来た観客という設定でエレベーター前から案内される。
前夜祭でのプレビューが素晴らしく、そのよく準備されたプレゼンに本編への期待が高まったけど、そんな . . . 本文を読む
また食を巡る小説か、と思ったら、なんとこれは葬儀屋の話。『キッチン常夜灯』に続いてこれも角川文庫から出た新刊。主人公の風花は両親を同時に事故で亡くした。まだ学生で大学を卒業するところ(就活をしていた)なのに、亡くなった父の会社を継いでメモリアルホール谷中の社長に就任する。
彼女の兄の景は母のやっていた海を望む古民家風カフェを継ぐ。本当なら兄が葬儀会社、妹がカフェを継ぐべきなのに、兄はカフェを取っ . . . 本文を読む
演出をエイチエムピーシアターカンパニーの笠井さんが手掛けるというので見に行くことにした。もちろんこれは何度となく舞台化されてきた大竹野正典の傑作戯曲作品だ。近大の学生たちが大竹野作品に挑むなんて、何だかそれだけでとても嬉しい。彼らにとっては全く未知の作家の世界を笠井さんの指導のもと作る。大竹野戯曲を体験することで、それを内在化することができるのか。そんなことも興味深い。これは上手く演じるだけでは成 . . . 本文を読む
ようやく『アンダードッグ』を見ることができた。2020年の劇場公開時は長いし、上映回数は少なく見に行けなかったからNetflix配信は有難い。前後編4時間36分を一気に見た。前編2時間11分だけでも堪能したけど、やはりその先は気になる。この後どういう展開になるのか、が。前編は森山未來と勝地涼の対決をクライマックスにした以上、後編のクライマックスは北村匠との対決になることは必定のことだが、そこに向け . . . 本文を読む
小路幸也は一体毎年何冊の本を出しているのだろうか。少なくとも今年だけで4作は新刊を読んでいる。たぶん。大好きな『東京バンドワゴン』は必ず毎年出るし、他にも「シリーズもの」も山盛りある。いずれも読みやすいし、読んだら幸せな気分にさせてくれるからついつい読んでしまう。
今回もいつも通りだ。築60年の古いマンション。マンションと言いつつも,二階建て。中庭があり、全部で10室。まるでパリのアパルトマンの . . . 本文を読む
暗くて重い映画だ。ここにはまるで救いがない。だけど、この話に引き込まれている。市子を探す旅が描かれる。主人公の青年と一緒に彼女に何があったのかを我々観客も目撃する。戸田彬弘監督は以前『名前』を見ている。あれも暗い映画だった。しかも作品傾向はよく似ている。だけど本作は前回よりずっと進化している。映画としての完成度は格段に高くなっている。あれも名前を偽って生きる男女(あれは父娘だけど)の話だった。今回 . . . 本文を読む
これはあの瑞々しい傑作『あの娘と自転車に乗って』を撮った(もちろん『馬を放つ』も『明かりを灯す人』も彼だ)アクタン・アリム・クバト監督作品だ。今回は脚本はもちろんのこと、なんと主演である父親役も兼ねた。しかも彼には全く科白はない。最初から最後まで一言も喋らない。ロシアに出稼ぎに行ったまま23年間帰らなかった男。そんな父がすべての記憶を失って、言葉もなくして戻ってきた。そんな男を息子一家は迎え入れる . . . 本文を読む
読みやすいし、心地よいからついつい読んでしまう飲食店関係の小説。もちろんそこには出来不出来はあるけど、ハズレは少ない。そしてこれも、とても気持ちのいい作品だった。『深夜食堂』のフレンチ版。夜の9時から朝の7時までが営業時間。人知れず、密かに知る人ぞ知る路地裏にある小さなお店。
そこの常連になる30代の女性はチェーン店のレストランの店長をしている。毎日深夜までの仕事でいつもクタクタにな . . . 本文を読む
芥川賞受賞(『この世の喜びを』)後の第1作らしい。タイトルがなんだか凄い。『共に明るい』って普通じゃない。あまりにストレートでなんなんだと思う。何が共に明るいんだか、それが気になる。さっそく読む。短編だから一瞬で読める。早朝のバスの中の話。新神戸から山の方に向かう。ほとんど話がない。ないままで終わる。だから唖然とする。
続けて次の『野鳥園』を読む。やはり同じパターンだった。ない。 . . . 本文を読む
こんな作品を原田マハが書く(描く)。6つの「黒い絵」の話は、彼らの心情と向き合う作品(絵)の間に横たわるエロス、裏切り、情熱、殺意を寄り添わせる。絵は作者の想いを伝えるだけでなく、魂の叫びをも伝える。それは悪夢の再現。もちろんすべての絵がそうなのではない。それはここに登場する黒い絵の話だ。
6つの短編はさまざまな心情を綴る。絵と向き合う人にしか見えない世界が広がる。最後はやはりゴッホか、と思う。 . . . 本文を読む
鈴木るりか、20歳の記念作品。花実の祖母の日記から母娘のルーツが明かされる。シリーズ第4作にして、完結編。(たぶん。いやこれはもしかしたらスピンオフかも。まだまだ続けるか?)これは新しい一歩を踏み出したのか、それともネタ切れか。検証したい。
僕は彼女にはもっと新しいことにチャレンジしてもらいたい。高校生の時に最高傑作『私を月に連れてって』を書いた若き天才作家である彼女が次の一歩をどう踏み出すのか . . . 本文を読む
これは2021年の作品らしいが、こんな映画が公開されていただなんて全く記憶にはない。東映配給の映画だし、それなりのキャストを揃えた映画なのに僕が知らないという事は関西圏では未公開だったのだろうか。内田英治監督、脚本作品である。公開されていたのならきっと見に行くはずだ。もし見に行けなかった(行かなかった)としても覚えていないはずはない。
不思議に思いつつも、少し期待して見た。しかもこれは18+作品 . . . 本文を読む
定時制高校に通う21歳。高校くらい卒業したいと思うけど、続かない。彼はまともに文章が読めないから、勉強が出来ない。バカだからこうなると思っていたがそうではなかった。ディスレクシアというらしい。これは病気なのだ。だが誰もそれに気づくことなく、彼自身は自分がバカだからだと思っていた。高校の担任はそれを教えてくれた。そして科学部を作りたいから、入らないかと誘ってくれた。「なんだよ、科学部って、」と思う。 . . . 本文を読む