
『死刑にいたる病』の櫛木理宇じゃないならこれは読まなかった。アニメもどきのカバーイラストには引いたけど、読み始めたら止まらない。この異常な「バディもの」に引き込まれてしまう。
市果26歳。派遣でコールセンターで働いている。居酒屋で一緒になった女が無造作に殺人するのを目撃。拉致され、自宅で連続殺人鬼である彼女と同居して、やがて一緒に逃亡することになる。居場所がないふたりがどうでもいい人間を殺して手持ちのお金だけを盗んでさすらう。
これは女同士の「友情もの」なのか? 市果は殺人幇助をするわけではない。だけど見ている。異常な殺人鬼と一緒にいるうちに彼女(実は男)に感情移入していく。彼女は市果と同じような境遇で生きて来た。だから自分が彼女だったかもしれないとまで思う。ふたりは共犯者になる。
二重人格の彼女の本体は男だが、男の彼は弱い。だから女の彼女が彼を守っている。市果は凶暴な彼女に心惹かれる。弱い彼には惹かれない。だけど徐々に彼が強くなり、彼女は消えていく。市果もまた、変わっていく。
終盤のまさかの展開には驚く。だけど、ここまでやるとかなり不快。これではイヤミスである。ただ、上手くお話は収まっていく。そして、市果という女の怖さに震える。