昨年台湾で史上最高の大ヒットを記録した『海角7号』をようやく見た。日本人の女の子と台湾人の男の子が60年の歳月を経て恋に陥るというスケールの大きなラブストーリーだ。(ちょっとこういう書き方には問題があるけど)
戦後すぐと現代という2つの時代を経て7通の手紙が届くまでのお話は軽やかなタッチで描かれる青春映画で、正直言ってたわいない映画に思える。なのにこの作品が台湾人の心を鷲摑みに . . . 本文を読む
三枝希望さんの作る作品は生まれた時から古典である。なんだか『今』の芝居ではない。それって貶してるのではない。この普遍性は時代を超越するというのだ。彼はいつも家族や夫婦を扱う。壊れていく家庭という構図の中で、人と人との関わりが描かれていく。親戚であろうとも通じ合わない。家族でも。
人間は所詮ひとりだ。だが、他人同士が寄り添い夫婦という絆を作る。そこに家庭が出来、家族は生まれる。そんな絆を信じな . . . 本文を読む
正直言ってかなり期待したぞ。だって、竹中直人監督作品だ。彼が初めてコメディーに挑んだ作品だ。しかも全体の輪郭はホラーだし。この上もなくバカバカしいはずだ。予告編を100回(推定)くらい見せられて(劇場に行くと、どこの劇場でも、必ずやっていた)さすがにうんざりだが、いくら考えてもこんなバカ映画が面白いはずがない、と思わせてくれる出来だ。
だから、わくわくした。だが、映画が始まり、どんどん話が進 . . . 本文を読む
1時間強の中編作品である。とてもよく出来ている。3話からなるオムニバス・スタイルで、5組の夫婦の秘密が描かれていくことになるのだが、そこには必要以上の説明はない。ほんの少しのエピソードの断片から彼らの関係が見え隠れする。それをそっと垣間見るだけだ。その先にあるものを描きはしない。1時間という長さではもともと不可能だ。そして、それがこの芝居の狙いでもある。
さらっとなぜるように見せる。そこにあ . . . 本文を読む
正直言ってこれは僕の見るべき芝居ではなかった。見る前からそんなことわかっていたけど、誘われたら断りきれないし、時間もちょうどあいていたから、ついつい好学のために、だなんて思い、劇場に足を運んでしまったのが間違いだった。一度くらい見てもいいかぁ、なんて甘い考えを抱いた僕が悪かった。
シリアス(とは素直には言い切れないが)なブレヒト劇『母 おふくろ』を作った往来の鈴木さんがリハビリを兼ねて、思い . . . 本文を読む
初めての恋愛劇らしい。戒田さんがこんなにもストレートなお芝居を作るなんて、驚きだ。彼らしくない。と、いうか彼がこんなにも素直に恋愛を語るだなんて一体どういう心境の変化だろうか。ゆっくり聞かせて貰いたい。
きっとどこかでいじわるなひねりがある、と思った。だいたいこんなに単純な話のままで2時間、本気で終わらせるはずがない、と思った。なのに、そんないらぬ期待をあざ笑うが如く、なんのひねりもなくその . . . 本文を読む
無事、満月を終えた後の第壱六夜公演は独立した作品の2本立。しかも別々のフライヤーを用意した本格的な別立て作品仕様。どちらも戒田さんの心意気がしっかり伝わる力作である。
僕が見た1本目がこの作品だ。こちらは昨年短編のひとり芝居として上演した「バラバのイエス」の物語を拡大リメイクヴァージョンとして再構築した新作。殿村ゆたかさんが主人公のバラバを演じる。すごい力演だが、あまりに力が入りすぎて少し見 . . . 本文を読む
ジョニー・トー監督のいつもの映画だ。彼の映画はどれを見ても同じだ。もちろん多作で多ジャンルをこなすから、けっこうあきれるようなものもあるが、この手のノワールものはもう定番。今回巷ではかなりの評判だったが、実際見てみると、ことさらこれを特別なものとして持ち上げるほどではない。いつもと同じようにただ凄いだけのことだ。
どんぱちのシーンがたくさんあるし、いつも通りスタイリッシュで、ため息が出るほど . . . 本文を読む
タナダ・ユキ監督が『百万円と苦虫女』に続いて撮った青春映画。こういう男の子の思春期ものって、今まで星の数ほど作られてきたが、女性監督が描いたものって初めてではないか? なんだかとても新鮮だった。これはただ「やりたい」盛りの男の子を主人公にした従来の青春コメディーとは一線を画する。
このテンションの低さはただ事ではない。それは女性監督だから冷めた視線を主人公たちに向けている、だなんていうことで . . . 本文を読む